NVIDIA「RTX Spark」が示したAI PCの未来。AIエージェントからゲームまで、GTC Taipeiで見た新たなコンピューティング体験

NVIDIAは、COMPUTEX TAIPEI 2026の会期に合わせて台湾・台北で開催した「NVIDIA GTC Taipei 2026」において、Windows PC向けの新たなスーパーチップ「NVIDIA RTX Spark」を発表した。

「NVIDIA RTX Spark」は、AIエージェント、クリエイティブ制作、ゲームまでを1台のWindows PCで扱えるようにする新しいスーパーチップだ。Blackwell RTX GPUとGrace CPUを統合し、最大1PFLOPのFP4 AI性能と最大128GBのユニファイドメモリを備えることで、これまでクラウドや高性能ワークステーションが前提になりがちだった高度なAIワークロードを、ローカル環境で実行しやすくする。

大容量メモリを備えたことで、大規模言語モデルや音声処理、画像生成など複数のAIモデルを同時に動作させることも可能になる。AIエージェントが常時動作しながらユーザーを支援する、新しいPC環境を見据えたプラットフォームと言えるだろう。

COMPUTEXと連動して開催された「NVIDIA GTC Taipei 2026」のプレス向けイベント会場では、「RTX Spark」を活用したさまざまなデモが披露された。これらのデモでは、「RTX Spark」そのものの性能をアピールするというよりも、「大規模AIモデルをローカルで常時動かせるようになるとPC体験はどう変わるのか」を具体的に示す展示が目立っていた。

本稿では、会場で体験することができた主なデモを紹介したい。

(提供:NVIDIA)

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AIは「質問する相手」から「仕事を任せる相手」へ

GTC Taipeiでは、開発者向け、クリエイター向けを問わず、AIエージェントがユーザーの代わりに作業を進める活用例が数多く示されていた。

開発者向けデモで目を引いたのが、AIエージェント「Hermes Agent」だ。デモでは、友人たちと運営するバドミントンコートの予約サービスで「ユーザーが予約できない」という障害が発生したという想定のもと、Hermesが問題解決に取り組んでいた。

HermesはSlackやメール、GitHubなど複数の情報源から状況を把握し、予約障害を優先度の高い課題として認識。修正を指示すると、ローカルで動作する「Qwen 35B」モデルがソースコードを解析し、数秒で修正パッチを生成した。

さらに「QAパスを実行して」と指示すると、Hermesはブラウザを自動操作しながら実際の予約フローをテストし、修正内容が正しく機能するかどうかまで確認していた。

デモでは音声による対話も行われた。ユーザーが話しかけると、音声認識から推論、音声合成までをローカル環境で処理。さらにスマートフォンからDiscord経由で指示を送り、外出先からエージェントへ作業を依頼する様子も紹介された。

同様の取り組みは、クリエイター向けの展示でも見ることができた。

会場では、パーソナルエージェント「OpenClaw」がPhotoshopでの制作作業を支援するデモが行われていた。キャラクターのラフスケッチと、鳥の羽などの素材画像を読み込むと、OpenClawが複数のAIモデルを利用しながら色や質感を付与していく。

興味深かったのは、OpenClawがイラスト制作の次の工程まで見据えていることだ。生成したキャラクターをもとに3D化を提案し、その作業に必要なWebツールまで自動で立ち上げていた。

さらに「LTX 2.3」を利用した動画生成も披露された。キャラクターが丸太の上でバランスを取る短い映像を生成するデモでは、エージェントがユーザーの意図を解釈しながらプロンプトやパラメータを組み立て、映像生成まで進めていた。

現在のOpenClawはAPI経由でPhotoshopと連携しているが、Adobeは「RTX Spark」に合わせて、エージェントとの連携を前提とした「agent-ready」版Photoshopを提供する予定だという。

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大容量メモリはクリエイティブ制作も変える

「RTX Spark」は、AIエージェントだけでなく、クリエイティブ制作向けのデモでも活用されていた。

Adobe Premiere Proの展示では、TensorRTによる最適化を利用した「シーン編集検出」が披露された。同機能は動画の中でカットが切り替わる箇所を自動検出するというもので、担当者によると処理速度は従来比で約2倍に向上しているという。

また、4K/60fps・4:2:2 10bit映像を3ストリーム同時に再生するマルチカメラ編集も実演されており、高解像度の映像素材を扱う環境でもスムーズに動作していた。

大容量メモリの効果は、映像編集だけではない。Unreal Engineのデモでは、約70GBに及ぶ都市全体のシーンを読み込んだ状態で自由に移動する様子を見ることができた。

大規模な3Dシーンでは、アセットの読み込みやメモリ不足によるデータの入れ替えが発生しやすい。ところがデモ環境では、広大な都市空間を高速で移動しても表示の乱れや大きなカクつきはほとんど見られず、巨大なシーンを扱う制作環境を想定した展示となっていた。

Blenderでは、AIを活用して3DCGの作業画面を高品質に表示する「DLSS レイ再構成」を活用したビューポート表示も紹介された。比較デモでは、カメラ移動時に発生しやすいノイズやちらつきが抑えられ、より安定した表示を確認することができた。

Windowsもゲームも「AI PC」前提へ

会場では、「RTX Spark」がAI開発やクリエイティブ制作だけのための製品ではないことも示されていた。

Microsoftの展示では、「RTX Spark」向けに最適化されたWindows 11環境が紹介。デモでは新たな「インテリジェント・ターミナル」が披露され、GitHub CopilotなどのAIエージェントをターミナルから直接利用する様子を見ることができた。

また、ユニファイドメモリを活用し、1,200億パラメータ級の大規模モデルをローカル環境で動作させる取り組みも紹介されていた。

印象的だったのは、AIが特定のアプリケーションの中だけで使われる存在ではなく、OSの機能として組み込まれ始めていることだ。会場で繰り返し語られていた「常駐するAI」という考え方は、Windowsの進化にも反映されつつあるように感じられた。

『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』をプレイ
『プラグマタ』が快適に動作する様子も確認できた

一方、会場ではAI関連の展示だけでなく、ゲーム技術に関するデモも行われていた。DLSS 4.5 レイ再構成の第2世代に関する展示に加え、『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』や『プラグマタ』を利用したゲームデモも実施されていた。

なお、DLSS 4.5 レイ再構成の第2世代は2026年8月にRTX Spark向けおよび全RTX GPU向けに提供される予定となっている。

DLSS 4.5 レイ再構成のデモ。DLSS 4ではレーザーの残像が残ってしまっているが、DLSS 4.5では綺麗に残像が無くなっている

AI PCを支えるハードウェア設計

AIエージェントが常時動作し、クリエイティブ制作やゲームも並行して行う環境では、ピーク性能だけでなく持続性能や静音性も重要になる。

会場では、「RTX Spark」を搭載するMicrosoftの「Surface Laptop Ultra」の内部構造が公開。AI PC時代を見据えた設計思想が紹介された。

会場で目を引いたのは、大型のデュアルファンを採用した冷却システムだ。スモークを使ったデモでは吸気から排熱までの流れが視覚的に示されており、高負荷時でも安定した性能を維持するための工夫が説明されていた。

担当者によれば、重要なのは単純な冷却性能だけではないという。AIモデルを長時間動作させる環境では、ファンノイズによって集中が妨げられないことも重視して設計しているとのことだった。

ASUS ProArt P14
ASUS ProArt P14
Lenovo Yoga Pro 9n
MSI Prestige N16 Flip AI+
MSI Prestige N16 Flip AI+
HP OmniBook X 14

会場ではMicrosoft以外のメーカーによる「RTX Spark」搭載モデルも展示されていた。ASUSやLenovo、MSI、HPのブースには実機が並び、各社が独自の製品として「RTX Spark」の採用を進めていることがうかがえた。

RTX Sparkが目指すのは「AIが常駐するPC」

GTC Taipeiで見えてきたのは、AIを利用するための新しい機能というよりも、AIが常に動作することを前提にしたPC環境の姿だった。

会場では、AIエージェントが業務を支援し、クリエイター向けツールが制作工程の一部を担い、WindowsもAIとの連携を深めていた。どの展示にも共通していたのは、大規模言語モデルや音声処理、画像生成など複数のAIモデルがバックグラウンドで動作しながら、ユーザーの作業を支援していることだ。

Hermesのデモでは、AIが障害の原因調査からコード修正、動作確認までを自律的に進めていた。OpenClawも、イラスト制作から3D化、動画生成まで複数のツールやAIモデルを横断しながら作業を補助していた。Premiere ProやUnreal Engineの展示からは、これまで高性能なワークステーションやクラウド環境が必要だった処理をローカル環境で扱える可能性も感じられた。

また、MicrosoftによるWindowsのデモや各社の実機展示からは、AIをアプリの中だけで利用するのではなく、OSやハードウェアの設計段階から組み込もうとする流れも見えてきた。AIが必要なときだけ呼び出す存在から、常にユーザーのそばで動き続ける存在へと変わりつつあることを印象付ける内容だった。

GTC TaipeiでNVIDIAが示していたのは、AI性能そのものの競争ではなく、AIが日常的に動作するPCをどう実現するかというビジョンであり、「RTX Spark」は、その新しいPC体験を支える土台として登場したプラットフォームと言えそうだ。

NVIDIA取材
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