
Figma Japanは7月22日、東京・丸の内のオフィス拡張にあわせて報道関係者向け説明会を開催した。説明会では、日本市場での事業拡大の状況に加え、AI時代のプロダクト開発の考え方、最新機能、導入企業の事例などが紹介された。
日本市場は世界トップ5に成長、企業導入も急拡大

冒頭では、Figma Japan カントリーマネージャーの川延浩彰氏が日本市場の現状を説明した。
Figmaは2022年に日本市場へ本格参入したが、この数年で利用企業は大きく拡大。現在、日本はFigmaにとって世界トップ5に入る重要市場となっており、進出当時はトップ10圏外だったことを考えると大きな成長を遂げたという。
企業への導入も進み、現在では日経225採用企業のおよそ3分の2がFigmaを利用している。2022年時点では導入率は10%未満だった。
コミュニティ活動も活発だ。ユーザーコミュニティ「Friends of Figma」は札幌から沖縄まで20以上の支部を展開し、アクティブメンバーは3,000人以上。世界でも有数の規模に成長している。
企業向けでは、日本の製造業などのニーズに対応するアドバイザリーサービスや、セキュリティ機能を強化する「Governance+」の提供も進めている。また、小中高校への無償提供など教育分野への取り組みも紹介された。

新たな東京オフィスは、日本市場での事業拡大にあわせて採用活動を強化する拠点としても位置付けられている。
川延氏は、日本市場が世界トップ5に入る規模へ成長したことで、今後もその勢いを維持・拡大するには国内チームの強化が欠かせないと説明。東京・丸の内へのオフィス移転・拡張を機に、日本での採用活動をこれまで以上に加速させる考えを示した。
新オフィスは採用拠点としての役割に加え、ユーザーコミュニティやパートナー企業との交流を深める場としても活用する。事業拡大に合わせて組織体制も強化し、日本市場への投資をさらに進めていく方針だ。
AI時代のプロダクト開発は「人の意思」が競争力になる

続いて、Figma CPOを務める山下祐樹氏が、AI時代のプロダクト開発について講演した。




山下氏は、AIの普及によって新たな課題が生まれていると指摘する。1つ目は「新しいサイロ化(ローカルヒルクライミング)」だ。AIとの対話を個人単位で深めるほど、それぞれが異なる方向へ最適化を進め、チーム全体として共通の目標を見失いやすくなるという。
もう1つが「静かなる明け渡し」。AIが提示する平均的で無難な答えを受け入れることが当たり前になると、製品の個性や独自性が失われ、人間が考え抜く姿勢そのものが弱まる恐れがある。AIを活用する時代だからこそ、「これで十分か」ではなく、「予想を超えられているか」を基準にする文化が重要になると語った。

この考え方は、製品開発にも反映されているという。Figma デザイナーアドボケートの谷拓樹氏は、AIを作業の自動化だけでなく、クリエイティブの幅を広げるための存在として位置付ける新機能を紹介した。新たに追加された「コードレイヤー」では、デザインキャンバス上でコードをネイティブなレイヤーとして扱えるようになり、デザインと実装をこれまで以上に行き来しやすくなる。

そのほか、専門知識がなくても視覚効果を加えられる「シェーダー」、アニメーションを直感的に設定できる「モーション」、オブジェクトを立体的に表現できる「3D変形」なども追加された。
新製品「Figma Weave」も紹介された。ノードベースでAIの処理を組み合わせ、画像生成や背景変更などのワークフローを構築できる製品で、作成したフローはチーム内で共有して利用できる。

AIエージェントについても、キャンバス上で一緒に作業する「チームメイト」として設計しているという。AIがどのような手順で作業したのかも確認できるため、ブラックボックス化を避けられるとしている。
三井住友カードではFigmaを「意思決定の場」として活用

説明会では、三井住友カード CEOデザインオフィスの前川美穂氏も登壇し、同社での取り組みを紹介した。前川氏は、Figmaはデザイン制作だけのツールではなく、プロダクトマネージャーやエンジニア、経営層までが参加し、意思決定を行うための場になっていると説明した。
AIについても、仕事を丸ごと任せる存在ではなく、考えを広げるためのパートナーとして利用しているという。最終的な判断や責任は人間が担うべきだとの考えを示した。
また、金融サービスでは機能だけで競争する時代ではなく、利用者から信頼されることが重要だと指摘。その信頼を形にすることがデザインの役割であり、経営に直結する機能になっているという。
デザインシステムについても、コンポーネントを管理する仕組みにとどまらず、ブランドの考え方や意思決定の基準を組織全体で共有する役割を担っていると述べた。
あわせて公開された「2026年AIレポート」では、日本を含む10カ国・地域のプロダクト開発者を対象に実施した調査結果も公表された。日本の回答者の79%が「AIは個人の生産性に大きな影響を与えた」と回答し、この割合は米国の64%を上回った。
一方で、AIによってチームの協働のあり方が大きく変わったと答えた日本の回答者は45%にとどまり、個人の生産性向上に比べて組織全体への浸透は道半ばであることもうかがえる。Figmaは今回の説明会を通じて、AIによる効率化だけでなく、人とチームが協働しながら新しい価値を生み出すための環境づくりを重視する姿勢を打ち出した。



