
Appleは、5月12日から14日にかけて東京ビッグサイトで開催された日本最大級の教育分野展示会「第17回 EDIX(教育総合展)東京」に出展し、教育現場でのMacやiPad活用を体験できるセッション「The Lab」を開催した。
「The Lab」は、東京ビッグサイト東8ホールのAppleブース内で実施された。会場には木製テーブルやディスプレイが整然と並び、Appleストアを思わせる空間が広がっていた。なお、Appleが「EDIX東京」へブースを出展するのは今回が初めてだという。
ブース内では、ARを使った理科学習、授業管理アプリ、生成AIを活用した教材制作、AIによる校務支援など、教育現場を想定した複数のデモを展開。参加者が「理科教師」や「大学教職員」といった役割になりきりながら体験できる構成になっていた。
今回、実際に各セッションを体験する機会を得たので、その内容をレポートしたい。
授業・教材制作・校務支援まで。教育現場を想定したデモを展開
「The Lab」の各セッションでは、授業準備や教材制作、成績評価など、教育者が日常的な業務の中でiPadやMacをどう使えるのかが紹介された。
理科教育をテーマにしたセッションでは、iPad向けARアプリ「Foxar」を使い、「月の満ち欠けと軌道」を立体的に学ぶデモが実施。iPadで周囲を読み取ると、目の前に地球と月の3Dモデルが表示される。参加者はiPadを持って歩き回りながら、さまざまな角度から位置関係を確認できた。
アプリでは、「昼側」や「三日月(上弦)」といった表示を切り替えることで、太陽光がどこから当たり、月がどのように見えるのかを視覚的に理解できる。教科書だけではイメージしづらい内容も直感的に理解できるため、紙の教材とは違った学びやすさがあった。
別のセッションでは、「植物細胞」を題材に、授業の進行や課題管理を支援する機能が紹介された。使用されたのは、「クラスルーム」と「Goodnotes」。
クラスルームアプリでは、「計画」機能を利用して、生徒のiPadやMacBookへWebページやアプリをまとめて配布。授業開始時の準備を減らし、スムーズに進行できる様子が紹介された。
Goodnotesでは、生徒がApple PencilやMacBookでの文字入力を使ってデジタルワークシートに書き込みを行う。教師側は、生徒全員の進捗をリアルタイムで確認でき、その場でコメントを返すことも可能だ。
教育向け機能として、AIによる自動採点や、似た回答をまとめる機能も紹介された。採点や確認作業を減らし、教師が生徒とのやり取りに時間を使いやすくする狙いがあるという。
大学向けのセッションでは、MacとiPadを使ったクリエイティブ制作のデモも行われた。使用されたのは、「Keynote」と「Pixelmator Pro」。
参加者は、人文科学部を紹介するプレゼン資料やSNS向けポスターを作成。Keynoteでは、著作権処理済みの高画質画像を検索できる機能に加え、オンデバイスの生成AIを使った画像編集も紹介された。
Pixelmator Proでは、テンプレートを使いながらポスターを制作。画像を差し替えるとAIが自動でフィルターを調整するなど、デザイン作業を補助する機能も体験することができた。また、iPadで制作したグラフィックを、そのままMacのKeynoteへ取り込めるなど、デバイス間の連携の良さも強調されていた。
校務支援をテーマにしたセッションでは、「Craft」を利用したAI活用デモが行われた。
学期末の成績評価を想定し、生徒の学習データや観察記録など複数のファイルをAIへ読み込ませた状態で、「学習報告書の下書きを作成して」と指示すると、AIが内容を整理し、強みや課題をまとめたレポートを数秒で生成していた。
ここで強調されていたのが、「オンデバイスAI」による処理だ。Appleシリコンの性能を活用することで、生徒の情報をクラウドへ送らず、デバイス上でAI処理を完結できる。自治体によっては、個人情報を外部クラウドへアップロードできないケースもあるが、ローカル処理であればルールに配慮しながらAIを活用できる。
Appleが示した「学ぶ人が主役」の教育環境
今回の「The Lab」のデモを体験してみて、Apple製品の個別の機能紹介というより、「教育現場でどんな学びを作れるか」を体験できる内容だったと感じた。
ARを使った天体学習では、抽象的な概念を立体的な体験へ変えることで、生徒が自分で動きながら理解を深められる構成になっていた。実際に体験してみると、教科書だけでは把握しづらい月の位置関係も直感的につかみやすく、学習への興味を引き出す狙いが伝わってきた。
クラスルームアプリによる授業進行の支援や、AIによる課題の把握・採点補助などは、教師の事務的な負担を減らし、生徒との対話やフォローに時間を使いやすくすることを意識した内容だった。
iPadとMacの連携についても、単に便利さを見せるだけではなく、思いついたアイデアをそのまま制作へつなげやすいことが重視されているように見えた。iPadで作成した素材をすぐMacへ移し、そのままプレゼンやポスター制作へ進められる流れからも、学びと表現を切り離さない考え方が感じられた。
Appleが目指しているのは、「効率化された教育」だけではなく、テクノロジーを使って、生徒たちの好奇心を引き出し、教師が生徒と向き合う時間を増やし、学んだ内容を自分の言葉や表現で形にしやすくすることだ。
今回の「The Lab」では、そうした考え方をただ説明で終わらせるのではなく、実際の体験を通じて伝えようとしていた点が印象に残った。
