ASUS 創業者ジョニー・シー会長が7年ぶり来日。「All in AI」戦略を掲げ、日本法人市場へ本格攻勢

ASUS JAPANは6月17日、法人向け事業戦略発表会「ASUS Summit 2026」を開催した。

会場にはASUS共同創業者兼会長のジョニー・シー氏が登壇。AIを軸としたグローバル戦略と、日本市場における事業方針を説明したほか、法人向けフラッグシップノートPC「ASUS ExpertBook Ultra」やAIサーバー、法人向けソリューションなどを発表した。

ASUSはこれまで教育市場や官公庁市場で存在感を高めてきたが、今後は民間企業向け市場の拡大に注力する方針だ。AI、品質、サポートを軸に、日本市場でのさらなる成長を目指す。

本稿では、ジョニー・シー会長が語った「All in AI」戦略や日本市場へのコミットメント、そして法人市場拡大に向けた取り組みを中心にレポートしたい。

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ジョニー・シー会長が日本市場への思いと「All in AI」を語る

約7年ぶりに来日したASUS共同創業者兼会長のジョニー・シー氏は、基調講演のなかで、日本市場への強い思いとAI時代に向けた同社のビジョンを語った。

シー氏は、日本を世界第3位の経済規模を持つ重要な戦略市場のひとつと位置付ける。新型コロナウイルス流行以降、海外出張の機会が限られるなか、久々の海外訪問先として日本を選んだことにも触れ、「日本の顧客やパートナーとの関係は非常に特別なものだ」と述べた。

講演では、ASUSを代表するノートPCブランド「Zenbook」の名称が、日本の「禅」の思想から着想を得たものであることも紹介した。天板に施された同心円デザインについても、日本庭園の枯山水からインスピレーションを受けたものだと説明し、日本文化が同社の製品開発に与えてきた影響について語った。

さらに、35年以上にわたりASUSを支えてきた日本のユーザーや販売パートナーへ感謝を表明し、日本市場との関係を今後も深めていく姿勢を示した。

その上でシー氏は、世界がAIによる大きな転換期を迎えているとの認識を示し、ASUSが推進する「All in AI」戦略について説明した。AIを生産性向上やイノベーション創出、将来的なビジネス成長を支える基盤技術と位置付け、PCだけでなくサーバーやIoTを含む幅広い領域でAI技術への投資を進めているという。

法人向け事業では「AI」「品質」「信頼」の3つを柱として掲げた。高度なAI処理性能に加え、安定した品質と長期的な信頼関係を構築できるパートナーであることが、これからのビジネス市場では欠かせないとの考えを示した。

シー氏は講演の締めくくりで、日本のDXやAI活用を支援するため、パートナー企業との連携をさらに強化していく方針を表明。「日本のプロフェッショナルや企業に最も選ばれるブランドを目指す」と語り、日本での事業拡大に向けた継続的な投資を約束した。

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教育市場で23.5%まで拡大、次は民間企業市場へ

続いて登壇したASUS JAPAN代表取締役社長のアルヴィン・チェン氏は、日本市場における同社の成長実績と今後の事業戦略について説明した。

チェン氏は、長年にわたり限られたベンダーが高いシェアを占めてきた商用PC市場について、「AIの普及や働き方の変化によって、企業が求める価値は変わりつつある」と指摘。「市場には新しい選択肢が必要だ」と語った。

ASUSは2024年、コンシューマー向けノートPC市場で売上・販売台数ともに世界第2位を獲得したほか、日本ではマザーボード市場で21年連続シェア1位を維持している。2024年6月にCopilot+ PCを投入して以降は、国内AI PC市場でもトップシェアを獲得しているという。

教育市場では2021年に3.7%だったシェアを23.5%まで拡大し、ブランド別2位に浮上。官公庁市場でもシェア12%を獲得し、ブランド別3位となった。

チェン氏は、こうした成果について「偶然ではない」と語る。消費者向け市場から教育、官公庁へと事業を広げてきた経験を生かし、今後はSMBから大企業まで民間企業市場の開拓を本格化する考えだ。

チェン氏は、成長を支える基盤として品質とサポート体制にも言及した。ASUSでは日本市場向け製品に対し、海外工場での品質検査に加えて国内でも追加検品を実施している。日本へ到着した製品を一台ずつ開封し、外観確認や通電試験を行った上で出荷しているという。

この徹底した品質管理体制の結果、導入後30日間における初期不良率はいずれの例でも0.04〜0.2%以下に収まっていることが示された。なお、これは今回の基調講演ではなくCOMPUTEXの会場において、筆者が直接アルビン・チェン氏に簡易インタビューをさせてもらった際に聞いた話だが、ASUSのPCの販売が好調を維持しているひとつの要因としてこの低い初期不良率があるとのことだった。

また、ASUSは2021年から法人向け365日対応コールセンターを運営しているが、企業のIT環境においてダウンタイムを最小限に抑えるため、迅速な対応体制の整備を進めてきた。チェン氏は「私たちが目指しているのは、単に製品を販売することではない」とし、「品質において最も信頼されるブランド、そして顧客から最も信頼されるパートナーになることが目標だ」と述べた。

こうした姿勢の背景にはASUS創業以来の企業文化があると説明した。創業メンバーや経営陣の多くがエンジニア出身であり、短期的な利益よりも優れた製品づくりを優先する文化が根付いているという。

チェン氏は「まず良い製品を作る。その結果として長期的な成功につながるという考え方が、ASUSのDNAだ」と語った。これは創業者であるジョニー・シー会長の言う「Extreme Engineering(究極のエンジニアリング)」という言葉に通じる部分と言えるだろう。

100kgの荷重や1Lの放水にも耐えた「ExpertBook Ultra」

今回発表された「ASUS ExpertBook Ultra」は、最新のIntel Core Ultraプロセッサーを搭載する法人向けフラッグシップノートPCだ。重量約990g、厚さ10.9mmの薄型軽量ボディに、3K OLEDディスプレイやAI処理向けNPUを搭載する。

本誌ですでにレビュー記事を掲出しているため詳細はそちらをご覧いただきたいが、発表会のなかでもその堅牢性を示すためのデモンストレーションも行われた。

会場のデモスペースでは来場者自身が筐体の上に乗って圧力テストを体験

まず実施されたのは、100kgの荷重をかける圧力テストだ。閉じた状態のExpertBook Ultraの上へプレートを1枚ずつ積み重ねていき、最終的に100kgの負荷をかけた状態で製品を検証。本体を開くとPCは問題なく起動し続けており、会場からは驚きの声が上がった。

筐体表面にはASUS独自の「セラルミナム」コーティングを採用しており、デモ後には目立った傷が見られないことも紹介された。

続いて行われたのが防滴性能をアピールする放水テストだ。キーボード上へ500mlのペットボトル2本分、合計1Lの水を直接注ぎ込むという過酷な条件で実施された。

大量の水が本体を伝って流れ落ちるなかでも、ExpertBook Ultraは動作を継続。デモ終了後も正常に動く様子が確認され、会場から拍手が送られた。

さらに担当者が両手で筐体をひねるねじれテストも披露。日常的な持ち運びや満員電車での圧迫などを想定した高い剛性をアピールした。

会場ではあわせて「プロジェクト・エベレスト」と名付けられた耐久試験の映像も公開された。気象観測気球を利用して製品を高高度まで打ち上げ、マイナス42.5度の低温環境や低気圧環境下での動作を検証したという。

ASUSは、こうしたデモを通じて、薄型軽量モバイルノートでありながら、過酷なビジネス環境でも安心して利用できる信頼性を訴求した。

導入から運用まで支える法人向けサービスも展開

ASUSはハードウェアの提供だけでなく、企業への導入や運用を支援するサービスの拡充も進めている。

販売パートナー向けには「ASUS Partner Alliance」を展開。案件登録や製品検索、在庫確認、保証状況の確認などを一元的に行える環境を提供する。また、大量導入時の初期設定作業を効率化するゼロタッチ登録や、企業ごとの環境を事前に構築できるイメージメーカーも用意。端末展開時の運用負荷軽減を支援する。

さらに、パートナー企業が自ら修理対応を行えるよう、交換用パーツの提供や診断ツールの展開も進めている。機器の停止時間を抑え、企業のIT運用を支援する狙いだ。

教育市場や官公庁市場で事業を拡大してきたASUSは、ExpertBook UltraをはじめとするAI PCに加え、導入から運用までを支援するサービス群を強化することで、民間企業市場の開拓を加速させる考えだ。

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