
Appleは4月2日、新学期キャンペーンの一環として、旅するクリエイター・KEIさんを講師に迎えたToday at Apple ワークショップ「フリーボードで、KEIと広げる無限の世界」をApple 丸の内で開催した。
ワークショップの前半では、KEIさんのこれまでの歩みや、旅を通じて培われた人生観について深く掘り下げるトークセッションが実施。そして後半には、iPadとApple Pencil、そしてホワイトボードアプリの「フリーボード」を活用し、自身のアイデアや目標を可視化する「ビジョンボード」の制作体験が行われた。
旅するクリエイター・KEIさんのこれまでの歩み。世界一周の旅で得た人生観

登壇したKEIさんは、大学4年時に世界一周の旅へ出て以来、これまでに62カ国を巡ってきたクリエイターだ。
もともとはプロを目指すアルペンスキーヤーとして活動し、東京都優勝や世界大会出場といった実績を持つ。しかし大学4年時、「グローバルに活躍できる自分になりたい」という思いと、社会人になると長期の旅が難しくなるという危機感から、世界一周へと踏み出した。なお、イベント当日(4月2日)は、彼が旅に出てからちょうど10年の節目にあたる日でもあった。
この世界一周の旅で、KEIさんは1年(365日)をかけて33カ国を訪れた。予算は120万円で、月で割ると1ヶ月あたり10万円、1日3,000円という限られた予算の中でやりくりをしていた。
言語の壁については、現地語の「こんにちは」「ありがとう」「おいしい」の3つの言葉を覚えると相手に喜んでもらえることが多かったと語り、これだけで現地で会った人の家に泊めてもらったこともあったという。

KEIさんは、リゾートホテルに泊まり、送迎や食事が用意されているような旅行を「ホリデー(休暇)」と呼び、それに対して自らすべてを切り拓く旅を「アドベンチャー(冒険)」と明確に区別している。
ホリデーが用意された環境の中で癒やしや体験を楽しむものであるのに対し、アドベンチャーでは「どこに泊まるか、何を食べるか、どちらに進むか」といったすべてを自ら決断しなければならない。そうした選択の積み重ねこそが、旅という物語を前に進める原動力になるという。
こうした “アドベンチャーとしての旅” を続ける中で、人生に必要な3つの力が循環していくとKEIさんは語る。ひとつは、限られた予算や条件の中で進む道を選び取る「決断力」。次に、決めたことを実際に行動へ移す「行動力」。そして、その結果として得られる成功や失敗の積み重ねである「経験値」だ。経験が増えることで判断の精度が高まり、次の決断へとつながっていく。

彼が人生の軸として掲げているのが、「心のコンパスの向こうへ」という言葉だ。ここでいう “心のコンパス” とは、理屈ではなく、自分の内側から湧き上がる好奇心やワクワクする感覚を指針にすることを意味する。KEIさんはこれを、「自分の少し先に、何か面白いものがあるんじゃないかと感じる方向へ進むこと」だと表現する。その感覚に従って一歩を踏み出すことで、想像していなかった景色や出来事に出会うことができる。
旅の中では、進む道や過ごし方をすべて自分で選び続けることになる。その都度の決断と行動、そして積み重なっていく経験が、次の選択の精度を高めていく。そうした循環の中で、自分なりの進むべき方向が輪郭を持ちはじめ、やがて人生を自分の足で歩いていく力へとつながっていくとKEIさんは語った。


KEIさんのアドバイスのもと、「フリーボード」で夢や目標を視覚化

ワークショップでは、iPadとApple Pencil、そして「フリーボード」アプリを駆使して、参加者が自身の夢や目標を視覚化する「デジタル・ビジョンボード」の制作が行われた。

まずは、自分自身の写真やApple Intelligence(Image Playground)で生成したAI画像をキャンバス中央に配置するところからスタート。そのうえで、自分にとって大切なものや心が動くキーワードを4つ書き出し、思考の起点をつくる。

続いて、それぞれのキーワードから連想ゲームのように発想を広げていく。たとえば「フィットネス」→「ランニング」→「朝活」といった具合だ。アイデアは枝分かれしながら、写真や図形、カラーなどを組み合わせて視覚的に整理され、1枚のボードとして形になっていく。
参加者は、Apple Pencilのスクイーズ操作や手書き文字の自動補正、図形をきれいに整える機能などを活用しながら、自分の思考や将来像を具体的に可視化していった。KEIさんは「フリーボードはキャンバスが無限に広がる。ノートのような制約がなく、思考をそのまま外に出していけるのが魅力」と語り、その自由度の高さを強調した。





イベント終盤には、完成したビジョンボードをもとに、参加者が行きたい場所をKEIさんがつなぎ合わせ、即興で作った「世界一周ルート」を披露するセッションも実施。個々のアイデアがひとつのストーリーとして立ち上がる演出に、会場は大きな盛り上がりを見せた。
ワークショップの最後に、KEIさんは「AIで何でも生成できる時代だからこそ、自分が本当にやりたいことは自分の中からしか出てこない」と強調した。かつてスケッチブックに描いた夢(ピラミッドの前でラクダに乗るなど)をひとつひとつ現実にしてきたKEIさんの言葉は、参加者に重みを持って響いたはずだ。
「リスクを取らなければ良いものは作れない」元スキー競技者ならではのKEIさんのストイックな素顔

イベント終了後の囲み取材では、KEIさんのライフスタイルや制作への向き合い方について、さらに踏み込んだ話が語られた。
KEIさんは現在、映像制作のためにMacBook ProやiPhone 17 Pro、ドローンといった機材を携え、世界各地を巡っている。アフリカのような過酷な環境でも総額100万円近い機材を持ち歩く理由については、「リスクを取らなければ良いものは作れない」と語る。その言葉からは、スキーヤーとして挑戦を重ねてきた経験が色濃くうかがえる。
また、日々の生活においても自己管理を徹底している。毎朝5kmのランニングを欠かさず行い、さらに妻が就寝している深夜には3時間の制作時間を確保するなど、限られた時間の中でも創作に向き合い続けているという。
囲み取材後には個別にも話を聞く機会を得た。そこでは、これまでの歩みや価値観について、よりパーソナルなエピソードが語られた。
中でも印象的だったのは、アルペンスキーヤーとしての経歴だ。東京都大会優勝や北海道選手権での入賞、ジュニアオリンピックやチルドレンの世界大会への出場など、国内外で実績を重ねてきたトップレベルの選手だったという。さらに、全国で勝つために強豪が集まる北海道の高校へ単身進学するなど、厳しい競争環境に身を置いてきた。
しかし、10歳上の姉が同種目でアジアチャンピオンとして世界で戦う姿を目の当たりにし、「このレベルに到達しなければスキーで生きていくことはできない」と実感。大学4年時に競技から退く決断を下した背景には、そうした現実的な判断があったという。
海外での安全対策も徹底している。荷物を小分けにする、セキュリティバッグを活用する、といった基本に加え、「日が暮れたら外出しない」というルールを妻と共有。さらに、AirTagなどのデジタルツールも積極的に取り入れながらリスク管理を行っている。
KEIさんはAirTagを3つ使用しており、SSDや預け荷物に入れるほか、海外のマラソン大会に出場する妻のポケットに忍ばせ、現在地を把握しながら撮影のタイミングに備えるというユニークな使い方もしている。
学生へのメッセージとしては、自身の経験に基づいた率直な言葉が印象に残った。大学4年でクリエイティブ活動を始めたことについて「もっと早く始めておけばよかった」と振り返り、Apple製品のようなツールは早い段階から使い始めるほど恩恵が大きいと語る。「大学は単に単位を取る場所ではない」とし、日常の中で映像や写真といったアウトプットを積み重ねることが、将来の自分を支える力になると強調した。
KEIさんが語るクリエイティブの哲学

今回のワークショップでは、iPadとフリーボードを活用したビジョンボードの制作を軸に、発想を広げるための手法と、それを支えるデジタルツールの使い方が結びつき、参加者それぞれが自分なりの未来像を描き出していた。
あわせて、K氏のこれまでの経験や言葉からは、すべてを自ら決めて進む「アドベンチャー」としての生き方や、決断と行動、経験の積み重ねによって前に進んでいくという考え方を学ぶことができた。リスクを取る姿勢や、AI時代においても自分の意思を軸に据える重要性など、これからの時代を見据えたヒントも多く含まれていたように思う。
こうした体験を通じて、参加者にとって大学生活や日々の学びの捉え方も少し変わるきっかけになったはずだ。デジタルツールを使いこなすこと自体が目的ではなく、それをどう活かして自分の可能性を広げていくか。その視点を得られた点に、今回のワークショップの価値があったと言えそうだ。






