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iPadとMacBookで「考える力」を育てるーーApple認定校・聖徳学園の授業現場を見学してきた

Appleは近年、iPadやMac、Apple Pencilを活用した教育分野への取り組みを世界各地で広げている。その一環として展開しているのが、「Apple Distinguished School」だ。

これは、Apple製品を活用しながら、教育における革新性や優れた学習環境を実践している学校をAppleが公式に認定する制度のこと。世界各地の教育機関が選出されており、日本国内でも先進的なICT教育に取り組む学校が認定を受けている。

東京都武蔵野市にある聖徳学園高等学校(以下、聖徳学園)も、その1校だ。

2027年に創立100周年を迎える同校では、iPadやMacBookを活用した学びが日常の風景として根付いている。STEAM教育とグローバル教育を軸に据えながら、生徒たちは動画制作やプログラミング、探究学習に取り組み、自分のアイデアを積極的に社会へ発信している。

今回、実際に授業や校内の取り組みを取材。「知識を覚えること」を中心とした従来型の学習とは異なる、創造性や主体性を重視した教育の姿を垣間見ることができた。

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Apple認定校として進める教育改革。「受験のため」から「社会へ発信する学び」へ

聖徳学園は1927年に創立された伝統校だ。聖徳太子の教えを礎にしながら、近年はICT教育や探究学習にも力を入れている。

これまでの学校教育では、知識を覚え、正解を導くことが重視される場面が多かった。一方、聖徳学園では、学んだことを自分の中へ蓄積するだけではなく、それを他者や社会のためにどう活用するかを重視しているという。

背景にあるのは、社会構造の変化だ。AIの普及によって、知識へアクセスすること自体の価値は相対的に下がりつつある。そのなかで同校は、「正解のない問い」に対して、自分なりに考え、試行錯誤しながら行動できる力を育てようとしている。

校長の峯岸渉氏は、「習っていないからできない」「知識がないからできない」と立ち止まるのではなく、まず挑戦してみる姿勢が重要だと語る。そのため同校では、自分のため・受験のために知識を詰め込む学習から、アウトプットを通して他者や社会へ価値を返していく学びへの転換を進めているという。

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iPadとMacBookが自然に溶け込む授業風景。iPadが支える「主体的」な学び

同校のICT活用は、かなり早い時期から始まっている。2011年には電子黒板を導入し、2015年には全生徒向けにiPadとApple Pencilを導入した。現在では、iPadは特別なICT機器ではなく、ノートや筆記用具と並ぶ日常的な学習ツールとして定着している。

今回の取材では、普段の授業風景を見学することができた。

理科の「化学基礎」の授業では、生徒たちはiPad上に配布されたデジタル教材へApple Pencilで書き込みながら学習を進めていた。

聖徳学園は中高一貫校であり、この授業には中学校から内部進学をしてずっとiPadを使い続けてきた生徒たちが多かったことから、どの生徒もかなり手慣れた様子でiPadとApple Pencilを使いこなしていた様子だった。

国語の「古典」の授業でも、iPadは自然に授業へ組み込まれており、生徒たちは活用表を書き込みながら、音読や現代語訳を進めていく。動詞の活用や文法についての解説が一段落し、ある程度のまとめが完成すると、先生からiPadのカメラを使って板書の撮影を促す場面もあった。

学校側によると、この古典クラスの生徒たちはiPadを使い始めてまだ約1カ月ほどだという。紙のノートを併用する生徒も一部いたものの、多くの生徒はデジタル教材を違和感なく使いこなしていた。

デジタル教材の活用は、教員側にも変化をもたらしている。カラー資料や動画教材を即座に共有できるため、実験映像や図解を交えながら説明しやすくなったという。言葉だけでは伝わりにくい内容も視覚的に共有できることで、生徒の理解につなげやすくなったと話していた。

今回の取材では、データサイエンス(DS)コースの授業も見学できた。

このコースは、日本初となる「教育課程特例」の認定を受けたプログラムでもある。従来の教科学習に加え、データ活用やプログラミング、映像制作などを組み合わせながら学びを深めていく。

化学や国語の授業ではiPadやApple Pencilが使われていたが、DSコースではMacBookも活用されている。2年生は主にMacBook Airを、1年生はMacBook Neoを使っているとのことだった。

取材当日に行われていたのは、「聖徳学園100周年」をテーマにした15秒ショートフィルム制作の発表授業だ。

AIと人間の思考の関係性や、グローバル性をテーマにした映像作品が次々と発表され、生徒たちは自分たちの制作意図をプレゼンしながら、互いの作品について意見を交わしていた。

授業中には、映像を大型ディスプレイへ出力した際に表示が不安定になる場面もあった。しかし、生徒たちは慌てる様子を見せず、「MacBook側なら問題なく見られるのでこちらを見てください」とその場で呼びかけ、クラスメイトを見やすい位置へ誘導しながらプレゼンを続行していた。

別のチームは、映像の内容を説明する際、言葉だけでは伝わりにくいと判断したのか、「ホワイトボードを使おう」と教室後方へ向かい、自らホワイトボードを持ち出して図を書きながら解説していた。

短時間の見学ではあったものの、DSコースの授業では、生徒たちが状況に応じて自分たちで考え、必要な行動を即座に選択していく姿が強く印象に残った。

映像・音楽・アプリ開発に挑む高校生たち

授業見学の後に実施されたQ&Aセッションでは、生徒たちが学校外でも制作活動や探究にApple製品を活用している様子が語られた。

ある生徒は、小学生の頃からGarageBandで楽曲制作を続けているといい、実際に制作した楽曲の一部も聞かせてもらった。別の生徒は、KeynoteやProcreateを使いながらアニメーションやイラスト制作に取り組んでいるという。

動画研究部の部室内

動画研究部の活動も活発だ。パナソニック主催の映像コンテスト「KWN」でグランプリを受賞した実績もあり、生徒たちは企画から撮影、編集まで自分たちで手がけている。

なかには、XcodeとSwiftを用いてSNSアプリのプロトタイプ開発を進める生徒もいた。自己承認欲求を過度に刺激する現在のSNS構造に問題意識を持ち、新しいコミュニケーションの形を模索しているという。

Q&Aに参加した生徒たちは、「何を作りたいか」を自分の言葉で次々と語っていたのも印象的だった。

音楽、映像、イラスト、アプリ開発と分野はそれぞれ異なるものの、どの生徒もテクノロジーを「課題をこなすための道具」としてではなく、「自分のアイデアや興味を形にするための手段」として使っていた。

ICT活用は、生徒だけに限った話ではない。Q&Aセッションでは、教員たちからも現場での具体的な活用方法について話を聞くことができた。

理科では、カラー資料や動画をそのまま共有できることが大きいという。たとえば「溶液が濁る」といった現象も、文章だけではなく動画で見せることで、生徒が理解しやすくなると話していた。

体育では、iPadの「遅延再生カメラ」アプリを利用している。バスケットボールのシュートやダンスの動きを数秒遅れで表示し、生徒自身がフォームを確認できるようにしているという。教員が言葉で説明するだけではなく、自分の身体の動きを客観的に見ることで、改善につながりやすくなるそうだ。

先生も授業でiPadを活用

課題提出では、紙のノートを回収する代わりに、ノートを撮影して提出させる運用も取り入れている。教員側はデータ上で効率的に添削できるほか、生徒自身もあとから学習内容を振り返りやすいという。

教員用デバイスについても、WindowsだけでなくMacBookを選択できる環境が整えられている。実際には、iPhoneやiPadとの連携のしやすさからMacBookを選ぶ教員も多いそうだ。

デバイス間でシームレスにコピー&ペーストできる機能や、各種アプリとの親和性は、教材作成や校務の効率化にも役立っているという。

学校全体に根付く「まずやってみる」文化。主体性を引き出すICT環境

今回の取材で印象的だったのは、iPadやMacBookが特別なICT機器として扱われていなかったことだ。

生徒たちはノートを開くような感覚でiPadを使い、Apple Pencilでメモを書き込み、必要に応じてMacBookで映像制作やプレゼンを行っていた。授業中にトラブルが起きても、自分たちで対応方法を考えながら、その場で柔軟に動いていく。

そこには、「デバイスを使わせてもらっている」という空気はほとんどなかった。

教員側もまた、デジタル化そのものを目的にはしていない。重要視されていたのは端末を導入することではなく、生徒たちがより深く考え、表現し、挑戦できる環境をどう作るかだった。

今回の取材を通して見えてきたのは、テクノロジーが教育現場へ追加されているのではなく、すでに学習環境の一部として自然に組み込まれている姿だった。

聖徳学園の教室には、自分の考えを形にしながら、周囲と対話し、試行錯誤を続ける生徒たちの姿があった。そこには、これからの時代に求められる学びのヒントが詰まっていた。