7月18日、ソフトバンクは都内で法人向けイベント 「SoftBank World 2019」 を開催。同イベントの基調講演で孫正義社長が登壇、SoftBankの投資ファンドが投資している会社や、日本のAIビジネスの現状などについて語った。
AIビジネスに特化したユニコーン企業に投資
まず孫社長が今回の基調講演で語ったのは、SoftBankが出資する投資ファンド 「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」 が出資している会社について。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドはAIビジネスに特化したユニコーン企業に対して投資している。さらにそれらのビジネス群が十分にシナジーを生み出せる会社であることを重要視している。
同ファンドの全体の出資額は10兆円超。その一部にはOYO Hotels&HomesやGrabなどが含まれている。今回の基調講演ではこれらの会社のCEOたちが登壇し、それぞれの会社のビジョンや事業内容を紹介した。
Grabは東南アジアのフードデリバリー・配車サービス最大手。Uberと似たサービスを提供しているが、そのほかにもAIを活用した様々な取り組みを行っている。例えば金融事業、個人の信用力をスコアリングし、お金の貸し出しなども行う。
また、フードデリバリーサービスではクーポンを配布したり、自転車のシェアリングサービスなども提供する。これらすべてのサービスがGrabアプリの中ですべて完結する。
Grabは特定のサービスだけを提供するのではなく、生活に直結したサービスを多数提供している。
これらのサービスを成り立たせるためにGrabは4PB(ペタバイト)のデータを保有しているという。日々生まれるデータ量は30TB(テラバイト)。ユーザーが購入したもの、利用したクーポン、個人の信用情報などの情報の蓄積で生まれたもので、すべて 「AI」 によって分析されておりそれらを最も良い形で提供できるよう最適化を図っているという。
SoftBankはこのほかにも、インドのスマホ決済最大手Paytmや格安ホテル運営会社OYOなどを紹介したが、同社が投資するのはこのようなAIビジネスを積極的に取り入れた会社が多い。同社の孫正義社長は、人類の進化はAIによって加速していくと考えている。
日本のAI分野に危機感 「日本は完全なる後進国に」
孫正義社長は日本のAI分野において強い危機感を持っている。世界では優良なAI起業家が誕生している中で、日本ではそういった会社が生まれてこないからだ。
孫社長は、「日本はこの前まで技術でもっとも進んだ国であったものの、たった数年間で革新が進んだAI分野で完全なる途上国になってしまった」 と話す。孫社長は日本が嫌いなわけではなく、むしろ大好きだとした上で、今の日本の現状は良くないものであると指摘した。
SoftBankのファンドが日本の会社に投資していないのも、日本には世界でNo.1レベルのユニコーン企業がなく投資したくでもできないからであるという。もちろん、日本の会社は完全なる手遅れではないが、今着手しなければ(本当に)手遅れになるとイベントに参加した人たちに警鐘を鳴らした。
孫社長曰く、成長の鍵は 「AIシフト」 。AIの得意分野は過去のデータを用いた推論と、それを活用したソリューションの提示。交通渋滞や人間の行動予測などあらゆる分野に活用が期待されており、今後30年間で世界のデータ量は100万倍に拡大するという。
孫社長は日本の会社はまだまだAI技術を中途半端に取り扱っていると指摘したが、実際、日本企業にはSoftBankのファンドグループが投資したくなるようなビッグデータを活用した新しいビジネスを創造することが強く求められている。
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