
米インテルは現地時間2026年5月28日、携帯型ゲーミングPC(ハンドヘルドPC)向けに専用設計されたプロセッサー「Intel Arc Gシリーズ」を発表した。
ラインアップは、12基のXeコアを搭載する上位モデル「Intel Arc G3 Extreme」と、10基構成の「Intel Arc G3」の2モデルで、2026年6月からパートナー各社の製品として順次出荷が開始される。
Intel Arc Gシリーズ登場「18A」プロセス採用の携帯型ゲームPC向けSoC
Intelはこれまで、モバイル向けCoreプロセッサーを携帯型ゲームPCに供給してきたが、携帯型デバイス特有の電力制限と放熱条件の厳しさに十分最適化できていない面があり、市場ではAMD製SoCが主流となる構図が続いていた。
今回のArc Gシリーズは、この構図を覆すべく、携帯型ゲーミングPC専用にゼロから再設計されたSoCとして投入される。その基盤となるのが、「Core Ultra シリーズ3」に相当する「Panther Lake」アーキテクチャと、最新の製造プロセス「Intel 18A」だ。IntelはCPU・GPU・AIを統合した単一プラットフォームとして設計し、携帯デバイスにおける性能と電力効率の最適解を追求している。
- Pコア:2基(高負荷時の応答性担当)
- Eコア:8基(マルチスレッド処理担当)
- LP Eコア:4基(バックグラウンド処理・低消費電力処理)
チップ内部は14コア構成で、Pコア2基、Eコア8基、LP Eコア4基を組み合わせるハイブリッド構成。
LP Eコアは低負荷処理やバックグラウンド動作を担当し、システム全体の消費電力を抑える役割を持つ。処理の性質に応じてコアを振り分けることで、ゲームプレイ中でも電力効率を維持することが可能だ。
動作電力(TDP)は、G3 Extremeが8〜35W、G3が8〜30Wに設定されており、バッテリー駆動と高性能動作の両立を狙った設計に。携帯型デバイスとしては非常に広いレンジでの制御が可能となっている。
- G3 Extreme:12基のXeコア(Intel Arc B390)
- G3:10基のXeコア(Intel Arc B370)
GPUは新世代の「Xe3」アーキテクチャを採用する。上位モデルのG3 Extremeには12基のXeコアを持つ「Intel Arc B390」、標準モデルのG3には10基Xeコアの「Intel Arc B370」を統合。DirectX 12 Ultimateに完全対応し、リアルタイムレイトレーシング機能も統合される。
AI処理はNPUが担当し、単体で最大46 TOPSの性能を持つ。さらにCPU・GPU・NPUを統合したプラットフォーム全体では、G3 Extremeで最大113 TOPS、G3で90 TOPSという高いAI演算能力を実現する。
メモリは最大96GBのLPDDR5xに対応し、帯域幅は8533 MT/sと高速で、大容量ゲームやAI処理を見据えた設計となっている。
「XeSS 3」と電力管理機能が支える携帯ゲーム体験

グラフィックス体験の中核となるのが「XeSS 3」だ。以下の3技術で構成される。
低解像度映像を高品質に引き上げる「XeSS Super Resolution(XeSS-SR)」、AIが生成したフレームを補完して滑らかさを高める「XeSS Multi-Frame Generation(XeSS-MFG)」、入力遅延を抑える「Xe Low Latency(XeLL)」だ。これらは各Xeコアに統合されたAIエンジン「XMX AIエンジン」により処理され、GPU負荷を抑えながら高品質な映像生成を可能にする。
Intelは描画性能だけでなく、従来PCゲームで問題となっていた体験面の改善にも踏み込んでいる。
また、ゲームの起動やプレイ環境を快適にするために用意されたソフトウェア機能「Intel Precompiled Shaders」が一部ゲームタイトルで利用できる。
そのひとつが「Intel Precompiled Shaders」だ。これはクラウド上で最適化済みのシェーダーファイルを事前配信する仕組みで、ゲーム起動時のシェーダーコンパイルによる待ち時間や、プレイ中のスタッター(カクつき)を軽減する。
通常、PCゲームを動かす際には、グラフィックスの描画命令である「シェーダー」を各ユーザーの実行環境に合わせてコンパイルする必要がある。この作業がゲーム起動時のロード中に行われるため、プレイヤーは長い待ち時間を強いられたり、プレイ中にバックグラウンドでコンパイル処理が走ることで画面がカクつく「スタッター」が発生したりすることが課題となっていた。
この機能を利用することで、クラウド上の最適化済みファイルを直接活用できるため、ゲームのロード時間が短縮され、プレイ中のカクつきも抑えられる。特にリソースに制限がある携帯型ゲーミングPCにおいて、スムーズなゲーム体験を実現するための重要な技術といえるだろう。
「Intel Arc G」には、電力制御機能「Endurance Gaming」が用意される。モードは3つ、「パフォーマンス」「バランス」「バッテリー」。高性能優先から省電力優先まで切り替え可能で、状況に応じて消費電力と処理性能を調整する。8W〜35Wという限られた電力枠の中で、プレイスタイルに応じた動作を実現する仕組みだ。
- パフォーマンス: チップの処理能力を優先的に引き出し、高い描画性能を必要とする場面に適する。
- バランス: 快適なゲーム体験と省電力性の両立を図る、標準的な設定。
- バッテリー: 電力消費を最小限に抑え、バッテリーでの駆動時間を最大限に延ばすことを目的としている。
また、一部環境では「Xboxモード」も搭載され、Windows 11をコントローラー操作に最適化したUIで利用できるなど、携帯ゲーム機としての操作性も強化されている。
通信機能はWi-Fi 7 R2およびBluetooth 6に対応。さらにThunderbolt 4を2ポート統合し、最大40Gbpsの高速データ転送を実現する。Thunderbolt Shareにも対応しており、PC間でのゲームライブラリ転送なども高速に行える。
採用製品としては、Acer「Predator Atlas 8」、MSI「Claw 8 EX AI+」、One-Netbook Technology「OneXPlayer 3」がすでに発表されている。各製品の詳細は2026年6月2日から台北で開催される「Computex 2026」で明らかにされる見通しだ。



