iPhone 16e レビュー|日常使いに適した 「e」 モデルが登場した意味を実機を触りながら考えてみた

「iPhone 16」 シリーズの新たな家族として、「iPhone 16e」 が生まれた。これまでの廉価モデル 「iPhone SE」 を廃止し、代わりに登場したこの 「e」 モデルは、フラグシップのラインアップのなかでもボトムに位置する製品だ。

エントリーモデルと表現するのが定番ではあるが、性能自体は 「iPhone 16」 から少しだけ抑えられている程度であるため、価格的にも 「プレミアムエントリー」 と表現するのが最もしっくり来るかもしれない。

Appleは、なぜ『e』を作ったのだろうか。そして、この『e』モデルの魅力はどこにあるのだろうか。今回、発売前より先行的に 「iPhone 16e」 を試用させてもらったが、じっくりと使っていくうちのその狙いが見えてきた。

本稿では、「iPhone 16e」 のレビューをお届けしていきたい。なお、先んじて書くと同モデルは、今春から新生活を迎える方たちにピッタリなデバイスだと思えたので、進学や就職を控えている方はぜひ同モデルを検討してみていただきたい。

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iPhone 16eの本体デザインをチェック

左:iPhone 16e/右:iPhone SE (第3世代)

「iPhone 16e」 を詳しく見ていく前に、まず本モデルの立ち位置について簡単に紹介しておこうと思う。

iPhone 16eは、「iPhone SE (第3世代)」 「iPhone 14」 シリーズを置き換えるかたちで登場した、「iPhone 16」 シリーズのエントリーモデル。6.1インチの画面を搭載し、A18チップとAppleが設計した初のセルラーモデム 「Apple C1」 を搭載しており、Apple Intelligenceにも対応する。

エントリーモデルということで、リアカメラをシングルカメラにしてカメラ性能を抑えたほか、Dynamic IslandやMagSafeといった機能は削減しているものの、その分安く購入できるのが特徴だ。参考として、iPhone 16との差額は2.5万円だ。

それでは、iPhone 16eのデザインをチェックしていこう。

まずはおもて面から。iPhone 16eはホームボタンのないフルスクリーンデザインになっていて、画面には6.1インチのSuper Retina XDRディスプレイ (有機ELディスプレイ) を搭載。リフレッシュレートは60Hzで、ディスプレイをカバーする前面ガラスにはCeramic Shieldを採用した。

液晶ではなく有機ELを搭載したことで、エントリーモデルながらキレイな映像を楽しむことができるのがiPhone 16eの魅力のひとつ。ただし、画面輝度はiPhone 16が最大1,000ニトなのに対し、iPhone 16eは最大800ニトとすこし低くなっているため、直射日光が当たる屋外などでは 「ちょっと暗いな」 と感じることもあった。

画面上部には、インカメラやFace ID用センサーなどを避けるようにノッチが設けられている。ノッチはゲームや動画などでiPhoneを横向きに使うときに気になるという声も聞くが、とはいえDynamic Islandでも全く気にならないわけではないので、Dynamic Islandもノッチもさほど大きな違いはないかなと個人的には感じている。

画面のエッジ部分は完全フラットになっていて、ガラスフィルムの貼り付け時に端が浮いてしまうことはない。貼る位置が微妙にズレて日が経つにつれてガラスフィルムの端が浮いてきてしまい、結局貼り替えへ……ということにはならないはずだ。

筐体には、iPhone 16と同様にアルミニウムが使われており、背面にはスルスルと手触りが良いガラスを採用。iPhone 16も同じような手触りだったと思うが、どこかしっとりとした磨りガラスのような感触が個人的にはプレミアム感を感じて、とても気に入っている。

純正のシリコーンケースは本体と同じホワイトで合わせてもよし、カラフルな別のカラーにしてもよし

カラーラインアップは、ホワイトとブラックの2色展開。かつてのiPhoneの定番カラーということで、すこし懐かしさも感じられた。

本体サイズは高さ146.7 × 幅71.5 × 厚さ7.8mm、重量は167g。画面サイズは一緒であるにも関わらず、iPhone 16よりもわずかに小さく&薄くなっている。

特に驚いたのが重量。普段iPhone 16よりもさらに重いiPhone 16 Proを使っている筆者は、手に持った瞬間に思わず 「え、軽っ!」 と声に出てしまった。それでいて背面のガラスのおかげか安っぽさは感じないため、サイズ・重量・手触りのすべてのバランスが取れたデバイスと言えるだろう。

側面のボタン類は、左側に音量ボタンとアクションボタン、右側にサイドボタンが搭載。アクションボタンは従来のミュートスイッチの代わりに搭載されたボタンで、よく使う機能をショートカットとして登録しておける。消音モードのオン・オフはもちろん、フラッシュライトやShazamボイスレコーダーなどの起動を割り当てることも可能だ。

iPhone 16/16 Proに搭載されていたカメラコントロールは非搭載だが、ロック画面右下のカメラアイコンの長押しでクイック起動は代用できる上に、そもそも本格的にスマートフォンで写真を撮影したい人はシングルカメラのiPhone 16eではなく、iPhone 16/16 Proを選ぶとは思うため、iPhone 16eを使うユーザーはおそらく無くてもほぼ問題ないと思われる。

SIMスロットは引き続き搭載されているため、物理的なSIMカードを使う人も安心。海外では未だに物理SIMが便利なこともあるため、SIMスロットのおかげで助かる場面も多いはず。

もちろんeSIMにも対応するため、物理SIM+eSIMでデュアルSIMで使うことも可能。また、デュアルeSIMでの運用も可能だ。

底面にはUSB-Cコネクタが搭載。MacやiPadと同じUSB-Cケーブルを使いまわせるため、持ち運ぶ荷物を最小限にできて便利。なお、データの転送速度は最大480Mb/sであるため、USB規格としては 「USB 2.0」 相当ということになる。

Beats製品とのペアリングも簡単

防塵・防水性能は、iPhone 16/16 Proと同様にIP68相当に準拠。最大水深6メートルで最大30分間耐えられるとしている。キッチンやお風呂周りでの使用はもちろんのこと、プールサイドやビーチに持っていき写真を撮る、といったことも安心してできるハズだ。

同梱物は、USB-C to Cケーブル (1m) のみで、環境負荷軽減のため充電アダプタやAppleロゴのステッカーは同梱されなくなっている。もし充電アダプタが必要なら、Apple公式サイトやAmazonなどで別途購入していただきたい。

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内蔵SoCはiPhone 16と同じ 「A18」。その性能はどれほどか

(画像:Apple)

iPhone 16eの最大の魅力は、エントリーモデルでありながらもAppleの最新世代のSoC 「A18」 を搭載していることにある。

CPUのコア構成は、iPhone 16と同様に高性能コア×2+高効率コア×4の合計6コア。GPUのコア構成は、iPhone 16のA18チップが5コアだったのに対して、iPhone 16eは1コア少ない4コアとなっているが、わずか1コアの違いということもありパフォーマンス的には大きな差はない。

CPU性能

A18のコア数を見る限り、CPU性能はiPhone 16とほぼ同じになるはず。実際に 「Geekbench 6」 でベンチマークスコアを計測してみた。

Geekbench 6搭載SoCCPUコア構成シングルコアスコアマルチコアスコア
iPhone 16 ProA18 Pro・高性能コアx2
・高効率コアx4
33197983
iPhone 16A18・高性能コアx2
・高効率コアx4
32377775
iPhone 16eA18高性能コアx2
高効率コアx4
32357885
iPhone 15 ProA17 Pro・高性能コアx2
・高効率コアx4
28266840

上記が計測結果。シングルコアスコアが3235、マルチコアスコアが7885。CPUのコア構成が変わらないことから、iPhone 16とiPhone 16eのスコアはほぼ変わらないという結果になった。

実際に使用してみても動作のモタツキはほとんど感じられなかった。ブラウジングやメール、ソーシャルメディアの投稿など、日常的な操作においてストレスを感じることはほとんどないだろう。

AnTuTu v10.0.8搭載SoCCPUコア構成総合スコアCPUスコア
iPhone 16 ProA18 Pro・高性能コアx2
・高効率コアx4
1773657431885
iPhone 16A18・高性能コアx2
・高効率コアx4
1693776430964
iPhone 16eA18高性能コアx2
高効率コアx4
1339261353178
iPhone 15 ProA17 Pro・高性能コアx2
・高効率コアx4
1552231384889

AnTuTuベンチマークのスコアは、総合スコアが133万点台、CPUスコアが35万点台。同じSoC、同じCPUコア数のiPhone 16に比べて少しスコアがやや低めとなったものの、iOSデバイスで一般的にベンチマークスコアの指標となるGeekbench 6では大きな性能差がなかったことから、実際の使用感に影響を及ぼすレベルではないとは思う。

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GPU性能

iPhone 16eのパフォーマンス面においてユーザーが気にしている部分は、おそらくiPhone 16のA18チップに比べてGPUコア数がひとつ少ないことだろう。Geekbench 6で、ベンチマークスコアを計測してみた。

Geekbench 6搭載SoCGPUコア構成Metalスコア
iPhone 16 ProA18 Pro6コア32955
iPhone 16 PlusA185コア28043
iPhone 16eA184コア24025
iPhone 15 ProA17 Pro6コア28281

結果は上記表のとおりで、iPhone 16eのMetalスコアは24025。GPUコアが1コア多いiPhone 16と比べて、約14%低いという結果に。

AnTuTu v10.0.8搭載SoCGPUコア構成総合スコアGPUスコア
iPhone 16 ProA18 Pro6コア1773657722761
iPhone 16A185コア1693776686302
iPhone 16eA184コア1339261431965
iPhone 15 ProA17 Pro6コア1552231597545

AnTuTuベンチマークの結果も確認。GPUスコアは431965で、iPhone 16に比べて37%低いという結果になった。コア数が少ないことから納得の結果ではあるのだが、それでは実際の動作はどうだろうか。

試しに、筆者がよくプレイしているゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』をiPhone 16eでプレイしてみた。画質設定をすべて最も高い項目にしてプレイしてみたところ、高いグラフィックスが求められるタイトルであるにも関わらず、動作は快適でそのままデイリーミッションを完了させることができた。

ただし、iPhone 16eにおいてはフレームレートは最大60fpsとなるため、体験としてはiPhone 16 Proのほうが上となる。もしより120fpsの滑らかな映像で『ゼンレスゾーンゼロ』をプレイしたい場合には、iPhone 16 ProあるいはiPhone 16 Pro Maxを選ぶべきだろう。

NPU性能

iPhone 16eは、AI機能 「Apple Intelligence」 に対応しており、作文ツールで文章を校正してもらったり、ジェン文字でオリジナルの絵文字を作ることができる。iPhone 16eはApple Intelligenceが利用できるもっとも安いiPhoneということで、同機能に期待している人もいるはずだ。

AI性能に関わるNeural Engineのコア数は、他のiPhone 16シリーズと同じ16コアだが、AI性能はCPU・GPU性能にも一部依存する。どれほどの違いがあるのか、Geekbench AIでベンチマークスコアを計測してみた。

Geekbench AISoCNeural Engine コア数/TOPSCPUGPUNPU
iPhone 16 ProA18 Pro16コア/35TOPSSPS:4478
HPS:7720
QS:6151
SPS:5775
HPS:6748
QS:6081
SPS:4593
HPS:33141
QS:45101
iPhone 16A1816コア/35TOPSSPS:4252
HPS:7350
QS:5881
SPS:4098
HPS:4254
QS:4124
SPS:4314
HPS:32143
QS:44590
iPhone 16eA1816コアSPS:3876
HPS:6603
QS:5396
SPS:3608
HPS:3973
QS:3706
SPS:3972
HPS:32420
QS:43835
iPhone 15 ProA17 Pro16コア/35TOPSSPS:3960
HPS:6872
QS:5627
SPS:5000
HPS:5927
QS:5253
SPS:3913
HPS:24426
QS:34086
SPS:Single Precision Score
(単精度スコア)
FP32 (32ビット浮動小数点) 演算の性能を示す。高い数値精度が求められるタスクで使用される。たとえば画像処理など。
HPS:Half Precision Score
(半精度スコア)
FP16 (16ビット浮動小数点) 演算の性能を示す。単精度よりも数値精度は低いものの、計算速度が速くメモリ使用量も少ないため、音声認識や顔認識などのリアルタイムアプリケーションなどで使用される。
QS:Quantized Score
(量子化スコア)
INT8 (8ビット整数) 演算の性能を示す。数値精度を若干犠牲にする代わりに、計算速度と効率を大幅に向上させるため、エッジデバイスやモバイルデバイスでのAI推論に適する。

計測の結果、NPUスコアはSPSがわずかに低いくらいでほとんど同じくらいのスコアになったものの、CPU・GPUスコアはiPhone 16に比べて10%前後低いという結果になった。

わずか10%程度の違いなら処理速度の違いは気にするほどではないとは思うが、念のため英語環境にして作文ツールやジェン文字などの機能を試してみたところ、極端に処理が遅いと感じることはほとんどなかった。

また、個人的に便利だと感じているAI機能として、画像のなかに不要な人物や物が写り込んでしまったときに、これらを自然なかたちで削除する 「クリーンアップ」 があるが、これもiPhone 16eとiPhone 16 Proで処理速度に大きな違いはなかったように思う。そのため、AppleのAI機能を使ってみたい、日常的に活用したいという人にもiPhone 16eはオススメのデバイスと言えるだろう。

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カメラ性能:広角カメラだけのシンプル構成だが「これで十分」とも思えるクオリティ

iPhone 16eのリアカメラは、広角カメラのみで構成されたシングルカメラとなっている。画素数は4,800万画素で、光学2倍相当のクロップズーム撮影にも対応しているため、Appleはこのカメラを 「ツーインワンのカメラシステム」 として紹介している。1台のカメラで広角と望遠の両方をこなせる設計だ。

このシングルカメラは、iPhone 16や16 Proのメインカメラに相当する性能を備えている。そのため、1〜2倍のズームレンジでの撮影においては、上位モデルにも引けを取らないほど美しい写真が撮影可能だ。

ここからは、筆者が実際に撮影した写真を交えながら、その実力を紹介していく。

撮影した写真を改めて見返してみたところ、まずそのキレイさに驚いた。4,800万画素の広角カメラで撮影した写真は細部まで鮮明で、何気なくiPhone 16eを取り出して撮影した一枚でも、光学式手ブレ補正の効果により、シャープでクリアな仕上がりになっている。色味もナチュラルで、日常のワンシーンをそのままの風景として残すことができる。

夜景もキレイに撮影することが可能だ。上記写真は、日没付近の時間帯に日本橋付近で撮影した写真だが、寒色系の街灯の光と、暖色系の照明の光の色味を両方正しく記録することができ、東京の夕方時のエモい写真を撮影することができた。

ただし、センサーサイズがiPhone 16やiPhone 16 Proに比べて小さいこともあり、暗所の撮影や滑らかなグラデーションがある景色ではディティールが失われている箇所も見受けられ、撮影した写真をあとから拡大したり、2倍ズームで撮影したりすると、特に暗所部分にはブロックノイズが発生していた場所も。望遠で撮影しない分にはあまり気にならなかったが、夜景などキレイに撮影したいというニーズがあるようなら、ぜひ上位のiPhone 16 Proを選ぶべきだろうと感じた。

以下、筆者が撮影してきた写真をさらに並べておくので参考にしていただきたい。

日々の健康管理や、ソーシャルメディア用の映え写真として、その日食べたグルメを撮影する機会は多いだろう。しかし、通常の1倍レンジで撮影すると、レストランの照明の影響で自分の手の影が料理にかかってしまうことはないだろうか。

そんなときに便利なのが、光学2倍相当のクロップズームだ。iPhone 16eを手元で構えたまま、擬似的に被写体へ寄って撮影できるため、料理に影を落とすことなく美しく撮影できる。

また、iPhone 16eにはマクロ撮影機能こそ搭載されていないものの、実はiPhone 16 Proよりも物理的に被写体に寄って撮影することが可能だ。iPhone 16eの広角カメラは最短約10cmまで接近して撮影できるのに対し、iPhone 16 Proは最短約18cmからピントを合わせられる仕様になっている。

iPhone 16e・広角カメラ:4800万画素 / F値1.6光学ズーム:1倍、2倍
デジタルズーム:最大10倍
マクロ撮影:非対応
iPhone 16・広角カメラ:4800万画素 / F値1.6
・超広角カメラ:1200万画素 / F値2.2
超広角撮影:0.5倍
光学ズーム:1倍、2倍
デジタルズーム:最大10倍
マクロ撮影:通常画質
iPhone 16 Pro・広角カメラ:4800万画素 / F値1.78
・超広角カメラ:4800万画素 / F値2.2
・望遠カメラ:1200万画素 / F値2.8
超広角:0.5倍
光学ズーム:1倍、2倍、5倍
デジタルズーム:最大25倍
マクロ撮影:高画質

iPhone 16やiPhone 16 Proは超広角カメラを使ったマクロ撮影に対応しており、特にiPhone 16 Proは4,800万画素による撮影が可能なため、マクロ撮影においてはやはり上位モデルのほうが優位であることには変わりはない。

とはいえ、iPhone 16eでも十分に被写体へ寄ることができるため、QRコードの読み取りや、ドキュメントの文字をクローズアップして撮影する用途には問題なく対応できる。プロレベルのマクロ撮影機能が必要ないようであれば、この点はあまり気にしなくても良いかもしれない。

USB-C:他デバイスと共有できるUSB-Cを搭載、充電スピードは最大25W前後

本体底部に搭載されている充電・通信用コネクタは、他のiPhone 16シリーズと同様にUSB-Cを採用した。MacやiPadなど、USB-C対応のデバイスと充電ケーブルを共有できるため、USB-Cで周辺機器を統一している人にとっては嬉しい仕様だ。

技術仕様を確認すると、データ通信速度は最大480Mb/sとのことなので、おそらくUSB 2.0相当ということに。iPhone 16も同じくUSB 2.0であることから、もっと高速なデータ転送を望む場合はiPhone 16 Pro/16 Pro Max (最大10Gb/s、USB 3.2 Gen 2相当) を選ぶ必要がある。

ただし、そもそも高速データ転送を使う場面というと、RAW画像や映像といったサイズの大きなデータを転送するときくらいしか思いつかないことから、iPhone 16 Proレベルのカメラ性能を求める人でない限りは意識しなくても良い部分ではないかとは思う。

それよりも注意が必要なのは、iPhone 16eのUSB-Cポートは映像出力ができないという点だ。ARグラスなど映像出力を必要とする特定のデバイスと共に使うことを想定している場合には、上位モデルを購入する必要がある。

8.63V × 2.98A = 25.72W

ちなみに、ワットチェッカーを使って充電速度を計測してみたところ、30W出力のUSB充電器に繋いだら25Wほどで充電できていた。この状態でバッテリー残量がゼロの状態から充電してみたところ、約30分で50%までバッテリー残量を回復することができた。

昨今はノートPC並みの高出力で高速充電できるスマートフォンも登場しているが、高速充電を繰り返すとバッテリーに負荷をかけてしまうこともあるため、これくらいの出力で充電するのが利便性とバッテリー寿命の両方でちょうど良いバランスと言えるのかもしれない。

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MagSafe:非対応だがサードパーティ製ケースを使って擬似的にMagSafeを再現する手も

磁気シートを載せてみた様子。MagSafeは非搭載

今回のiPhone 16eについて多くのユーザーから指摘があったのが、MagSafeが搭載されていないことだ。

MagSafeは、上位のiPhone 16/16 Proの背面に搭載されているマグネット機構を利用したワイヤレス充電システムのこと。このマグネットの磁力によって、iPhoneをワイヤレス充電器に固定して充電できる。また、「ファインウーブンウォレット」 などのMagSafe対応アクセサリーを固定できるのも魅力のひとつ。

筆者は車に乗ることがあるため、車のエアコン送風口に設置したMagSafe対応カーマウントにiPhoneをくっつけるのにも重宝している。

このMagSafeがiPhone 16eに搭載されていないことがわかり、SNSでは大きな話題に。地元で暮らしている筆者の兄弟もiPhone 16eへの買い替えを検討していたというが、MagSafeカーマウントが使えないという理由から、現在はiPhone 16への買い替えを検討していると話していた。

iPhone 16 ProをMagSafeカーマウントで取り付けている様子

MagSafeを求めるユーザーの大多数は、マグネット充電よりも磁力を利用したアクセサリー利用を重要視している人が多い印象。ただし、MagSafeと同じくらいの磁力を持ったマグネットリングを配置したサードパーティ製ケースを使えば、MagSafeに近い感覚で各種アクセサリーを使うことはできることから、本体にMagSafeがあるかどうかはあまり大きな問題にはならなさそうだと筆者は感じている。

サードパーティケースに不安を感じるという人は、もう少し費用を上乗せしてiPhone 15もしくはiPhone 16を購入すればMagSafeを手に入れること自体はできる。むしろMagSafeにそれほど魅力を感じているのなら、その分費用を上乗せするというのは納得できる理由になり得るのではないだろうか。

MagSafe充電器はくっつかないがワイヤレス充電は可能

なお、iPhone 16eはMagSafe充電には対応しないものの、最大7.5Wのワイヤレス充電には対応する。Qi規格に対応したワイヤレス充電器があれば、本体を充電器の上にポンと乗せるだけで気軽に充電が可能だ。

通信:新開発のC1チップを搭載した初めてのiPhone

iPhone 16eは、Appleがデザインした初のセルラーモデム 「C1」 を搭載している。Appleいわく、同セルラーモデムを搭載したことにより、高速かつ信頼できる5G通信を実現するほか、消費電力の効率化によりバッテリー駆動時間の長時間化にも役立っているという。

以前に、Macの内蔵プロセッサをインテルのものから自社開発の 「M1」 チップに変えたことで、バッテリー駆動時間を大幅に伸ばしたことがあったが、あのセルラーモデム版といえばイメージしやすいだろうか。

このセルラーモデムについて 「問題なく通信できるのか不安……」 というコメントを読者からいただいたので、ドコモ・au・ソフトバンクの回線を使って東京23区内での通信品質をチェックしてみた。

通信が弱くなりがちな場所というと、混雑している駅や電車内などがよく挙げられるが、今回の検証時にはどのキャリアも特に問題なく通信できていた。

左:iPhone 16e/右:iPhone 16 Pro

とある平日の23時半頃に、渋谷駅付近でドコモ回線を使ってスピードテストをしてみたところ、エリアの条件や回線の混雑の影響か5G通信を掴むことはできなかったが、それでも111Mbpsで通信することができた。

iPhone 16 Proで同じく計測してみたところ、ほぼ同じくらいの結果になったことから、この時間帯・この場所ではiPhone 16eもiPhone 16 Proも同じくらいのスピードで通信できたと言えるだろう。

iPhone 16eを使って都内やその近郊で通信テストを繰り返してみたが、筆者としては特に通信面で困ったことはなかった。初めての部品が乗っていると聞くと不安になる人もいるとは思うが、C1チップについては 「今のところ問題ナシ」 というのが筆者の結論だ。

あとは、海外ではどう影響するのかが個人的に気になるところ。今月に海外取材に行く機会があることからその際にチェックできたら……と考えていたものの、試用期間の関係でそれは難しそうなのでそれはまたの機会にということにしておこうと思う。

なおこれは完全に筆者の考えではあるが、同チップが今後上位モデルに搭載されるようになれば、上位モデルもバッテリー駆動時間が伸びる可能性があるということに。今年後半に発売されるであろう新フラグシップモデルの搭載にも期待したい。

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バッテリー駆動時間:6.1インチ型iPhoneで過去最長の駆動時間を実現

iPhone 16eは、6.1インチのiPhoneとしては史上最長のバッテリー駆動時間を実現しているという。実際のバッテリー駆動時間はどれくらいなのか、画面輝度50%の状態でiPhoneの画面をつけっぱなしにして、YouTubeで動画を再生し続けてみた。

経過時間iPhone 16eiPhone 16 Pro (参考)iPhone 15 Pro (参考)
0時間100%100%100%
1時間100%98%98%
2時間94%92%91%
3時間88%86%85%
4時間81%80%78%
5時間75%73%69%
6時間68%65%60%
7時間62%59%53%
8時間56%52%46%
9時間50%45%37%
10時間43%39%30%
11時間37%32%23%
12時間31%24%15%
13時間25%17%8%
14時間19%10%0%
15時間13%3%
(15時間半に0%)
16時間7%
17時間0%

検証の結果、個人的にすこし驚きだったのが、バッテリーテストを開始してから1時間経過してもまだバッテリー残量100%を維持し続けていたこと。その後、1時間に約6%ずつバッテリー残量が減っていき、最終的に17時間くらい再生できることが確認できた。

参考として、iPhone 16 Proよりも駆動時間は短いはずだが、筆者のテストではむしろiPhone 16eのほうが駆動時間が伸びていた。iPhone 15 Proは14時間、iPhone 16 Proは15時間半だったことから、それらと比較したら優れた結果だったと言える。

もちろん、バックグラウンドで動作するアプリや通知の影響によりバッテリー駆動時間は大きく変動する。参考として、先日バッテリーが100%の状態のiPhone 16eを朝8時半頃に持ち出し、日中の取材や仕事を経て、その後の飲み会を終えて帰宅した22時頃には、約10%のバッテリーが残っていたことを確認できた。Safariでの調べものやSNSのチェック、メールの確認といった一般的な使い方であれば、1日を通してバッテリー切れを心配する必要はなさそうだ。

まとめ:16 Proではなく、16でもなく、16eという選択肢

失われた 「SE」 の代わりに、新たに登場した 「iPhone 16e」 。今回レビューするにあたり、筆者は丸1日を通して普段通りの使い方を試してみた。

取材先での使用、ソーシャルメディアの更新、メール作成、ゲームプレイなど、いつものルーティンをこなしたうえでの率直な感想は、「想像以上に快適なのでは?」 というものだった。

もちろん、iPhone 16 Proを普段使用している筆者にとっては、カメラの性能などで違いを感じる部分もある。しかし、それでもなお、日常のタスクをこなす上でストレスを感じることはほとんどなく、むしろ驚くほどスムーズに使えた。

正直なところ、低価格あるいは高機能に振り切ったモデルではない製品を紹介する際には、予想以上に筆が乗らないこともある。特徴を端的に伝えるのが難しかったりするからだ。iPhone 16eもそのような製品かも……と危惧していたが、実際に使用してみるとその不安はすぐに払拭された。

では、AppleがiPhone 16eを投入した意図とは何なのか。そのターゲット層を考えることで、その狙いがより明確になるだろう。

左:iPhone 16 Pro/右:iPhone 16e

今回のレビューに先立ち、AppleにiPhone 16eの 「e」 の意味について尋ねる機会があった。どうやら 「SE」 の 「スペシャルエディション」 のように特定の意味を持つものではなく、「essential (本質的な)」 「everybody (すべての人のための)」 「everyday (日常的な)」 といった複数の意味が込められているとのことだった。つまり、名称自体には明確な定義はないものの、日常使いに適したモデルであることが示唆されていた。

iPhone 16eを 「iPhone SE 4」 として発売するのではなく、「iPhone 16」 シリーズの一員としたことには意味がある。「新たな選択肢を提供する」 という、Appleの戦略の一環だ。

たとえば、MagSafeを必要とするユーザーがいる一方で、有線充電で十分だと考えるユーザーもいる。また、出張が多いユーザーにとっては、MagSafeよりも有線充電やバッテリー持続時間の方が重要な場合もある。そうしたニーズに応えるのがiPhone 16eだ。

単なる廉価モデルではなく、iPhone 16シリーズの中でバランスの取れた選択肢、いわゆるプレミアムエントリーモデルという位置付けだ。

左:iPhone 16e/右:iPhone SE (第3世代)

iPhone SEのような低価格モデルも維持するべきだったという意見もあるかもしれないが、一方でAppleのラインナップを無秩序に増やすべきではないという考え方もある。また、ホームボタンを搭載したiPhone SEの筐体では、Apple Intelligenceを含む最新のAppleの標準機能を活用しづらくなっていた。そのため、ある程度の筐体統一が必要だったのだろう。

Appleが目指したのは、機能や価格に極端に偏らせるのではなく、日常使いに最適なバランスを持つ製品を提供すること。その結果、10万円以下の価格帯でAppleのコア機能をしっかり体験できる新しいエントリーモデルが誕生した。

そして、Appleのコア機能を10万円以下の価格帯でも利用できるようにすることで、より広範なユーザーに、iPhoneのハイエンドモデルあるいはAppleのエコシステムへの入口を提供する。それこそが、iPhone 16eの存在意義であり、実質的にはiPhone SEの後継としての役割も果たしてくれるだろう。

もし、MagSafeが必須であったり、シングルカメラでは物足りないと感じたりするなら、iPhone 16や16 Proといった上位モデルを検討すると良い。iPhone 16シリーズには、さまざまな選択肢が用意されているのだから。

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