
アドビは、蘭アムステルダムで開催される「IBC 2026」に先立って、映像編集ソフト「Adobe Premiere Pro」の大規模アップデートを発表した。
今回のアップデートでは、タイムライン上から直接、映像や音声を生成できる「生成メディアツール」が製品版に加わる。さらに、音声素材を分離して編集するAI機能や、カラー調整、編集画面の使い勝手なども強化する。
35年使われてきたPremiere ProにAIによる生成・編集機能を追加
「Adobe Premiere Pro」は、テレビ番組をはじめとする映像制作やポストプロダクションの現場で35年にわたって使われてきた映像編集ソフトだ。2026年には、米国テレビ芸術科学アカデミーから「テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞」に選出されるなど、映像制作を支えるソフトとして長く評価されている。
映像制作の現場ではAIの利用が広がっている。アドビの最新レポートによると、クリエイターの10人に9人近くが、表現方法を広げたりビジネスを拡大したりするためにクリエイティブAIツールを利用しているという。
ただし、AIに制作を任せきりにしたいクリエイターばかりではない。最終的にどのような映像や音に仕上げるかは、自分自身で決めたいと考える人も多い。そこで、今回のアップデートではAIを使って作業を速くしながら、最終的な表現はクリエイター自身が決められる編集環境を目指している。
その中心となるのが、製品版に搭載される「生成メディアツール」だ。Premiere Proのタイムライン上でプロンプトを入力し、編集に必要な映像や音声をその場で生成できる。利用できるAIモデルはAdobe Fireflyだけでなく、Google Veo、Kling、Runway、Lumaといったパートナー各社のAIモデルも選択でき、目的に応じてモデルを使い分けられる。
「ビデオを生成」では、編集プロジェクト内の特定のフレームをサンプリング画像として指定できる。映像の途中で素材が足りなくなった場合などに、その前後の映像とつながるような動画を生成し、タイムラインへ配置できる。
音声については「サウンドエフェクトを生成」を搭載。テキストで内容を指示して音響素材を作れるほか、マイクに向かって自分の声を吹き込み、そのリズムやタイミング、音量の強弱を参考にしてサウンドエフェクトを生成することも可能だ。
ベータ版では、映像に合わせて音を作る機能も用意する。「サウンドスケープを生成」は、最大15秒の映像素材を分析し、映像の内容に合った音を4トラックのレイヤーとして自動生成する。細かな音を調整する際の土台として使える機能で、映像に合わせた音響編集を始めやすくする。
「音楽を生成」では、プロジェクトの内容に合わせてテンポやループを設定し、オリジナルの音楽を作成できる。作成した音源は同期権を気にせず商用利用できるという。
音声の分離やカラー補正を強化、クラウド素材も直接編集
音声編集では、パブリックベータ版として新しいAIオーディオツール群を提供する。
「オーディオを強化」は、1つのクリップに含まれる「セリフ」「リバーブ」「音楽」「効果音」をAIが判別し、それぞれを個別のレイヤーに分けて編集できる機能だ。使用制限のある音楽だけを削除したり、セリフだけを強調したりと、素材の内容に応じた調整がしやすくなる。
「クロストークを分離」では、2人の発言が重なった音声を自動的に別々のトラックへ分けられる。収録中にマイクへ触れてしまった際に発生するタッチノイズを取り出し、削除するといった使い方にも対応する。
会話と音楽の音量バランスを自動で整える「自動ダッキング」は、処理の精度を高めた。キーフレームを手作業で設定する手間を減らし、会話に合わせてBGMの音量を調整できる。
クリップの再生速度を変更するアルゴリズムについても刷新した。速度を変えた際の音のピッチや自然な音色を保ちながら、より広い範囲で音声の長さを調整できる。
そして、カラー調整ではベータ版の「カラーモード」を強化。「自動カラー補正」を使えば、露出や色温度をワンクリックで調整できる。1つのクリップだけでなく、シーケンス全体を対象にした補正にも対応する。
「スタイルモジュール」には「ビネット」と「ミッドトーン」を追加した。映像に映画のような質感を加えられるほか、マスクを使った調整も行いやすくなっている。
編集画面では、プロパティパネルとエフェクトパネルを再設計した。必要な設定を見つけやすくし、編集作業中に各種項目へアクセスしやすくしている。
素材管理では、Frame.ioが提供するストレージサービスをすべてのアカウントで利用できるようになる。クラウド上に保存した高解像度の素材をローカルへダウンロードする必要がなく、タイムラインへ直接読み込んで編集できる。
(画像提供:Adobe)
