
メルセデス・ベンツ日本は6月11日、フラッグシップサルーン「Sクラス」の大規模改良モデルを発表し、予約受注を開始した。価格は「S 450 d 4MATIC」が1,598万円、「S 580 4MATIC long」が2,365万円。S 450 d 4MATICは9月以降に納車を開始し、S 580 4MATIC longも同時期に正式発売される予定だ。
今回の改良では車両全体の50%以上にあたる約2,700点の部品を新規開発または再設計。1886年の自動車誕生から140年という節目に合わせ、Sクラス史上でも最大規模のアップデートが実施された。
自社開発OS「MB.OS」を初搭載 クルマ全体を統合するデジタル基盤へ

新型Sクラスは、日本市場向けモデルとして初めてメルセデス・ベンツ独自のオペレーションシステム「MB.OS」を採用した。
MB.OSは、インフォテインメント、車両制御、運転支援、ドライビング性能などを1つのプラットフォーム上で統合管理するシステムだ。高速イーサネットで接続された高性能コンピューター群によって構成され、車両内のセンサーや制御ユニットへアクセスする。開発責任者のフランク・ヴンドラック氏は、MB.OSを「クルマの神経系」と表現した。

メルセデス・ベンツ・インテリジェントクラウドと常時接続することで、OTA(Over-The-Air)による継続的な機能更新にも対応する。販売店へ持ち込むことなくソフトウェアアップデートを受けられ、購入後も機能や性能の向上が続く仕組みとなっている。
インフォテインメントシステムには第4世代のMBUXを採用した。標準装備となる「MBUXスーパースクリーン」は14.4インチのセンターディスプレイと12.3インチの助手席ディスプレイを1枚のガラスで覆う構成で、コックピットの印象を大きく変えている。



AI機能も大幅に強化された。MBUXバーチャルアシスタントは自然言語での対話に対応し、ChatGPTとMicrosoft Bingを活用した複数ターンの会話が可能。質問内容に応じてGoogle GeminiとChatGPTを使い分ける機能も備え、会話の文脈を保持しながら応答する。Googleと共同開発したナビゲーションシステムでは、Google Mapsをベースにリアルタイム交通情報やルート案内を提供する。
運転支援システムでは、10基の外部カメラ、5基のレーダーセンサー、12基の超音波センサーを搭載。AIアルゴリズムによって周囲の交通状況を解析し、「MB.DRIVE」や「MB.DRIVE ASSIST」の各機能を支える。
V8と直6ディーゼルを設定、サスペンションも知能化




エクステリアでは、従来比で約20%大型化したラジエーターグリルを採用。クロームルーバーは3本から4本へ増やされ、スターパターン装飾も追加された。グリル周囲にはSクラス初となるイルミネーションを備える。
ヘッドライトにはマイクロLED技術を採用した次世代DIGITAL LIGHTを搭載し、スターデザインの新しいライトシグネチャーを採用。リアコンビネーションランプも3つのスターモチーフを組み込んだ新デザインとなった。


インテリアでは、トリム面積を拡大したセンターコンソールや新しいウッドパネルを採用。新色「ビーチブラウン/ブラック」を追加したほか、シートヒーターと連動するヒーテッドシートベルトも装備する。
また、オーダーメイドプログラム「MANUFAKTUR Made to Measure」を導入。100色以上のボディカラー、400色以上のインテリアカラー、80色以上のステッチカラー、70色以上のアンビエントライトカラーを選択できる。

パワートレインは2種類を用意する。
「S 450 d 4MATIC」には3リッター直列6気筒ディーゼルターボ「OM656 Evo」を搭載。最高出力367PS、最大トルク750Nmを発揮する(どちらも欧州仕様参考値)。量産車として初めて電気加熱式触媒コンバーターを採用し、排気後処理性能を向上させた。EGRや冷却系、クランクケース換気システムも改良され、耐久性と効率性を高めている。
「S 580 4MATIC long」には4リッターV型8気筒ツインターボ「M177 Evo」を搭載。最高出力537PS、最大トルク750Nmを発揮する(どちらも欧州仕様参考値)。大型化したターボチャージャーや改良型インジェクションシステム、新設計の吸排気系に加え、フラットプレーンクランクシャフトと新しい点火順序を採用。レスポンス向上と振動低減を両立した。
両エンジンには17kW(23PS)のインテグレーテッド・スターター・ジェネレーター(ISG)を組み合わせた48Vマイルドハイブリッドシステムを採用。低速域でのトルクアシストや回生機能、滑らかな再始動を実現する。

足まわりにはAIRMATICサスペンションを標準装備。新開発のインテリジェントダンパー制御では、車両が検知した路面情報をクラウド上で共有し、同じ場所を通過する他車両のサスペンションを事前調整する。スピードバンプなどの路面変化に先回りして対応する仕組みで、日本市場では後日サービス開始を予定している。
さらにオプションのE-ACTIVE BODY CONTROLでは、コーナリング時に車体を内側へ傾ける制御を行い、後席を含む乗員の快適性向上を図る。
発表会に登壇したモータージャーナリストの清水和夫氏は、「これからの高級車はパワーや馬力ではなくIQで競う時代になる」とコメントした。ABSやエアバッグなど数々の技術革新を生み出してきたSクラスは、今回のモデルでソフトウェアとAIを軸にした次の時代へ踏み出した形だ。

