
時は5月、筆者は大型連休に珍しく旅先にいた。いつもは混雑を避けて自宅に引きこもり、まとまった時間を使って少しヘビーな作業をするのがルーティンだったが、今年は東北の実家に帰省するというミッションがあったため、せっかくなら道中で日光に立ち寄り、少しリフレッシュしてから帰省しようという計画を立てていた。
旅程は2泊3日。ただし筆者の仕事上、連休中も完全に仕事を休むことはできないため、新緑がまぶしい東照宮や華厳の滝を巡る王道の観光ルートを楽しみながらも、スキマ時間にはノートPCで作業をする予定だった。
そんなプライベートと仕事が入り混じる旅の中で筆者が密かに楽しみにしていたのが、4月23日に発売されたばかりのポータブルスピーカー「Sonos Play」だ。
価格は税込4万9800円。「家でも外でも、Sonosのホームサウンドをそのまま持ち歩ける」というコンセプトに惹かれて持ち出した本製品を、ホテルの部屋とバルコニーを中心に2日間じっくり使い込むことに。Sonos Playが旅先の空気や時間の感じ方までどう変えてくれるのかを確かめてみたくなったのだ。
ポータブルでありながらホームスピーカーのようなサウンドを実現した「Sonos Play」
「Sonos Play」は、Sonosが「最も汎用性の高いポータブルスピーカー」として設計した製品で、従来のモバイルスピーカーとホームオーディオの中間を埋めるような立ち位置にある。
サイズは約192.3mm(高さ)×112.5mm(幅)×76.7mm(奥行)、重量は約1.3kg。500mlペットボトルよりやや大きい程度だが、実際に手にすると密度感があり、しっかりとしたオーディオ機器としての存在感がある。
バッテリーは最大24時間駆動に対応し、IP67等級の防水・防塵性能を備えるため、屋外や水回りでも安心して使える設計。接続はWi-Fi(AirPlay)とBluetoothの両対応で、Wi-FiではSonosアプリを通じたホームオーディオ連携、Bluetoothでは最大4台までのグループ再生が可能になっている。
音響面では角度付きツイーター×2、ミッドウーファー×1、デュアルフォースキャンセリング・パッシブラジエーターを搭載し、3基のクラスHデジタルアンプによって180度に広がるステレオサウンドを実現している。さらに自動音響補正のオートマティックTrueplayや内蔵マイク、ストラップ、専用充電ベースなど、ポータブルでありながら本格的なホームスピーカーに近い構成となっている。
Sonos Playと過ごすホテルのひととき。いつもの音楽を、いつもと違う場所で
今回の旅行では、Sonos Playを移動中の再生には使わず、ホテル滞在中の音楽体験に集中して試してみた。
昼過ぎにホテルへ到着し、チェックインを済ませると、まずは本体を充電ベースから取り外してバルコニーへ持ち出した。重量は1.3kg。超軽量というわけではないが、バッグに入れて持ち歩いたりする用途であれば特に負担は感じない。
早速ホテルのWi-Fiへ接続し、Spotifyのプレイリストを再生してみる。目の前には新緑に包まれた日光の山々。そんな開放的な空間に音楽が流れ始めると、音が一点から鳴っているというより、周囲の空気に自然と溶け込んでいくような感覚があった。
ポータブルスピーカーでありながらステレオ感はしっかりと残っており、低音も量感がある。それでいて必要以上に膨らまず、中高域とのバランスも良好だ。風が吹く屋外環境でも音像が崩れにくく、音が飛んでいくというより「その場に留まる」ような安定感が印象に残った。
筆者はこれまで旅行用のスピーカーとして「Sonos Roam」を愛用してきた。携帯性ではRoamの方が優れるものの、音質面ではSonos Playが明確に上回る。特に低音の厚みと空間表現の豊かさは一聴して分かるレベルで、正直なところ、一度この音を体験してしまうとRoamへ戻るのは少し難しく感じるほどだった。
この日はホテルへの移動日だったこともあり、特に観光の予定は入れていなかった。そこでバルコニーに腰を落ち着け、山の景色と心地よい空気を楽しみながら、夕方までノートPCで原稿作業を進めることにした。
作業中もSonos Playは活躍した。小音量でも音が痩せにくく、BGMとして流していても存在感が薄くならない。集中を妨げることなく空間を心地よく満たしてくれるため、ワーケーション用途との相性も良いと感じた。
日が暮れてからは近くの道の駅で購入した晩ご飯とお酒を持ち込み、再びバルコニーへ。ちょうどお気に入りのラジオ番組の配信日だったため、iPhoneのradikoアプリからAirPlay経由でSonos Playへ音声をキャストして楽しんだ。
AirPlay対応の利便性は想像以上に高く、自宅でSonosスピーカーを使うときと同じ感覚で再生先を選べる。旅先でも普段のリスニング環境をそのまま持ち出せるような感覚があった。
ラジオ番組が終わった後は部屋へ戻り、今度はジャズのプレイリストを再生しながら就寝前の時間を過ごした。
このとき、オートマティックTrueplayがしっかりと効果を発揮してくれた。開放的な屋外空間から室内へ移動しても音のバランスが大きく崩れることはなく、ボーカルや楽器の輪郭が自然な状態で保たれていた。環境が変わるたびに設定を調整する必要がないのは、こうしたポータブルスピーカーならではの魅力だろう。
音楽を持ち歩くのではなく、「音楽のある空間」を持ち歩く
実際に数日間使ってみて感じたのは、Sonos Playは「Sonosのホームサウンド体験をそのまま持ち出せるデバイス」だということだ。
旅行先のホテルや旅館では、テレビやノートPC、スマートフォンの内蔵スピーカーから音を出して過ごすことが多い。しかしSonos PlayはAirPlayで気軽に音楽やラジオを再生できる手軽さもあり、自宅で音楽を楽しむ習慣そのものを、旅先へ持ち込むような感覚に近い。
もちろん4万9800円という価格は決して安くない。ポータブルスピーカーとして見ればプレミアムな価格帯に属する製品だ。また、1.3kgという重量も携帯性だけを重視するのであれば、より小型なSonos Roamなどに軍配が上がるだろう。
それでも、Sonos Playには価格やサイズと引き換えに得られる確かな魅力がある。日光の山々を眺めながら音楽を流した昼下がり。お気に入りのラジオ番組を聴きながら過ごした夜。静かなジャズを流しながら一日を締めくくった就寝前の時間。振り返ると、そうした何気ないひとときの心地よさこそが、本製品の価値だったように思う。
音楽は「何を聴くか」だけでなく、「どこで聴くか」によっても体験が大きく変わる。Sonos Playは、そのことを改めて実感させてくれる製品だった。
リビングで音楽を楽しみ、そのままベランダへ持ち出す。休日には庭やテラスで使い、旅行やワーケーションにも持参する。Sonos Playは、場所ごとに異なるスピーカーを使い分けるのではなく、一台で音楽体験をシームレスにつなげてくれる製品だ。音楽を持ち歩くというよりも、「音楽のある空間」を持ち歩きたい人にとって、Sonos Playは魅力的な選択肢になるはずだ。
