
米Microsoftは2月20日(現地時間)、同社のゲーム部門「Microsoft Gaming」を長年率いてきたCEOのフィル・スペンサー氏が引退することを発表した。後任には、現在同社のCoreAIプロダクト担当プレジデントを務めるアシャ・シャルマ氏が就任する。
また、Xboxの社長を務めていたサラ・ボンド氏も同社を去ることが明らかになり、ブランドを象徴する指導部が刷新される大規模な組織再編となった。
スペンサー氏は1988年にインターンとして入社以来、38年間にわたりMicrosoftに在籍し、2014年からはゲーム部門のトップとしてXbox事業を牽引してきた。同氏の退任は2026年2月23日付で発効するが、円滑な体制移行のため、同年夏まではアドバイザーとして留まる予定だ。
新CEOアシャ・シャルマ氏による「3つの公約」とAIへの姿勢
新たにCEOに就任するアシャ・シャルマ氏は、Metaのプロダクト・エンジニアリング担当副社長やInstacartの最高執行責任者(COO)を歴任し、2024年にMicrosoftへ入社した経歴を持つ。サティア・ナデラCEOは、シャルマ氏のグローバル規模でのプラットフォーム運営経験と事業モデル構築能力を高く評価しており、ゲーム事業を次の成長段階へ導く存在として期待を寄せている。
シャルマ氏は就任にあたっての社内メモで、「優れたゲーム(Great games)」「Xboxの再起(The return of Xbox)」「遊びの未来(Future of play)」という3つの優先事項を掲げた。特筆すべきは、コンソール機(ハードウェア)をXboxの原点として再定義し、既存のコアなファンや開発者へのコミットメントを強調している点である。同時に、PC、モバイル、クラウドを横断したシームレスな体験の提供も継続する方針だ。
また、AI部門出身という経歴から懸念される「AIによるコンテンツの粗製乱造」については、いわゆる「AIスロップ(AI slop)」という言葉を用いて明確に否定した。シャルマ氏は「ゲームは人間によって作られる芸術であり続ける」と述べ、短期的な効率化のためにエコシステムを魂のないAIコンテンツで満たすことはしないと宣言している。
スペンサー氏の功績とマット・ブーティ氏の昇進
この新体制において、これまでXbox Game Studiosの責任者を務めていたマット・ブーティ氏が、エグゼクティブ・バイスプレジデント兼チーフ・コンテンツ・オフィサー(CCO)に昇進した。
ブーティ氏はシャルマ氏直属の部下として、傘下となったActivision Blizzard、ZeniMax、Bethesdaを含む約40のスタジオと、そのクリエイティブ・パイプラインの統括を担う。なお、現時点でスタジオ組織自体の変更はないとしている。
引退するスペンサー氏の功績は多岐にわたる。2014年にXbox Oneの苦境の中でトップに就任して以来、Xbox Game Passの立ち上げやアクセシビリティの向上、後方互換機能の拡充などを主導した。特に、総額690億ドルに及ぶActivision Blizzard Kingの買収や、75億ドルでのZeniMax買収といった巨額のM&Aは、Microsoftのゲーム事業を約3倍の規模に成長させる決定打となった。
一方で、直近のXbox事業は課題にも直面していた。2025年末のホリデーシーズンにおけるハードウェア売上の低迷や、Xbox Game Pass Ultimateの価格改定、そして直近の決算で見られた収益性の悪化などが報じられていた。今回のトップ交代とボンド氏の辞任は、これらの課題に対応し、25周年を迎えるXboxブランドを再構築するための戦略的な動きと見られている。
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