
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は2026年9月15日、「日本ゲーム大賞2026 年間作品部門 発表授賞式」を東京・有楽町のヒューリックホール東京で開催した。
授賞式では、11名のトップクリエイターが独創性を基準に作品を審査する「ゲームデザイナーズ大賞」の受賞作として、台湾のTeam9が開発した『文字遊戯』が発表された。
同賞は2010年に新設され、売上や人気とは異なる視点からゲームの創造性や斬新性を評価してきた。CESAは9月8日に「日本ゲーム大賞2026」の詳細を発表した際、今回の「ゲームデザイナーズ大賞」を最後に、その役割を終えることを事前に告知していた。
そして9月15日の授賞式では、長年にわたって審査委員長を務めてきた桜井政博氏が、同賞を終了する理由について説明した。
文字だけでゲームを成立させる『文字遊戯』。桜井政博氏が壇上でデモプレイ
『文字遊戯』は、台湾のクリエイター集団「Team9」が開発したアドベンチャーゲームだ。一般的なゲームで使われるキャラクターや背景のグラフィック、アニメーションなどは登場せず、画面上のほぼすべてが文字で表現されている。壁や家具、登場人物、道具、物語の描写まで、文字そのものがゲームの世界を構成している。
プレイヤーが操作するのは「我」という文字。画面に並んだ文字を動かしたり、消したり、つなげたりすることで、文章の意味やゲーム内の状況そのものを変化させていく。
例えば、文章の文字を入れ替えることで指示の内容を変えたり、マップ上に配置された「門」という文字を通り抜けたりと、文字の意味とゲーム内の性質が結びついている。キーボードのデリートキーで文字を消すなど、PC操作そのものをゲームシステムに取り込んでいるのも特徴だ。
授賞式では桜井氏が実際にゲームをプレイ。文字を動かして道を作り、文章を書き換えながら仕掛けを解いていく様子を実演した。
見慣れた文字がそのままゲームのキャラクターやオブジェクトになり、文字の並びを変えることでゲーム内の世界まで変化していく。桜井氏はデモプレイを通じて、こうした発想の面白さを紹介した。
『文字遊戯』の構想は、Team9のコアメンバー6名によって始まった。開発者たちは幼い頃から日本のゲームに親しみ、ゲームを「共通言語」として学んできたという。
そのなかで、日常的に使っている中国語の文字そのものに面白さがあることに着目。タピオカミルクティーのカップのフタに印刷されていたダジャレから着想を得て、文字をゲームの仕組みに取り入れた作品へと発展させていった。
日本語版の展開では、フライハイワークスがローカライズを担当した。4年前に同社へ話が持ち込まれた際、同社のコウ氏は実際にテストプレイをしたうえで、「この作品は誰かが日本語化して日本のユーザーに遊んでもらわなければいけないと思った」と振り返った。
日本語は漢字、ひらがな、カタカナなどを使い分ける言語であり、中国語とは文字の構造や言葉の使い方も異なる。そのため、日本語版では単純な翻訳ではなく、日本語ならではの文字の特性を生かした表現を新たに作り込んだという。
こうした工夫を重ねた結果、『文字遊戯』は中国語版とは異なる、日本語版ならではの文字遊びを楽しめる作品として完成した。
「私の代わりがいなかった」、桜井氏がゲームデザイナーズ大賞終了の理由を説明
『文字遊戯』のデモプレイを終えると、桜井氏はゲームデザイナーズ大賞を今回で終了すると改めて説明した。
同賞は2010年に新設され、売上や人気とは異なる視点から、ゲームの創造性や斬新性を評価してきた。CESAは9月8日、「日本ゲーム大賞2026」の詳細を発表した際に、今回のゲームデザイナーズ大賞を最後に同賞を終了することを事前に告知している。
桜井氏は終了の理由について、「辞める理由を聞かれたら非常に単純です。私の代わりがいなかったんですね。本当にただそれだけです」と説明。これまで同賞では、ゲームデザインに携わるトップクリエイターを審査員として集めるだけでなく、受賞作の紹介やステージ上でのデモプレイなども行ってきた。桜井氏は、こうした役割を引き継ぐ後任を見つけられなかったことが、終了につながったとした。
ただし、桜井氏はゲーム業界における独創性の価値まで失われたわけではないと強調する。ゲーム大賞が人気投票になりがちななか、独創性を評価する同賞には「別の評価軸を与えることができたのではないか」と振り返った。
一方で、独創性が必ずしも売上につながるわけではないという厳しい現実にも触れた。「大変残酷なことを言いますけれども、独創性ってあんまり売上に影響がないんですね。優先度としては下の方だと思っています」と語り、ゲームを選ぶ側が新しさだけを求めているわけではないことを指摘した。
桜井氏は、その状況をコンビニの飲み物にたとえて説明する。新商品が出るたびに試す人は多くなく、慣れてくるほど定番の商品を選び、自分が好む味や、期待通りの味を求めるようになる。ゲームでも同じように、プレイヤーはすでに知っている楽しさや、面白さを想像しやすい作品を選びやすいという。
だからこそ、新しい遊びや、それまでになかった面白さを生み出すことは難しい。それでも、桜井氏は、「こういう独創性みたいなものを失った業界というのは、やっぱりゆっくりと死んでいくだけなんですね。」とゲーム業界への警鐘を鳴らし、「今までも新しい発明があり、新しい喜びがあり、そういうのを開拓した人がいるから、今の業界が成り立っているものだと思います」との考えを示した。
桜井氏は最後に、「ゲームデザイナーズ大賞はここで一旦幕引きとなりますが、新しさや独創性、その作品にしかないものに目を向けていただければ幸いです」と述べ、独自の発想から生まれたゲームを評価していくことの大切さを改めて訴えた。
