
汎用AIエージェント「Manus」が、独立企業としての運営を再開する。これに伴い、特定の法域における規制要件への対応として、一部ユーザーの2025年12月29日以降に生成されたデータが削除される。
対象ユーザーは、2026年8月23日午前7時59分(シンガポール時間)まで、日本時間では8月23日午前8時59分までにデータをバックアップする必要がある。削除期間は8月23日午前8時(シンガポール時間、同9時)から8月24日にかけてで、対象ユーザーはこの間、Manusのアカウントにアクセスできなくなる。8月25日午前8時(シンガポール時間、同9時)以降に復元ポータルが開き、バックアップしたデータを復元できる。
Manusは今回の措置について、データ漏洩やセキュリティインシデントが原因ではなく、独立企業としての運営に戻ることと、各地域の規制要件に対応するためのものだと説明している。
ユーザーの皆様へのお知らせ
— Manus 公式(マナス) (@ManusAI_JP) August 11, 2026
Manusはまもなく、独立した企業としての運営を再開します。…
自律的に作業を進める「汎用AIエージェント」として登場したManus
Manusは、ユーザーが与えた目的をもとに、AIが自ら計画を立て、必要なツールを使いながら作業を進める「汎用AIエージェント」と位置付けられている。
一般的なチャット型AIでは、ユーザーが質問を入力すると文章やコードなどを生成して返す使い方が中心になるが、Manusは目的を伝えると、その後の作業をAI自身が組み立てて進めることを重視している。
たとえば、情報を調査してレポートにまとめる、コードを作成する、資料を作る、Webブラウザーを操作するといった作業をAIに任せ、最終的な成果物を受け取るといった使い方ができる。
Manusを運営するのはButterfly Effect。中国・北京で2022年4月に創業した企業で、CEOの肖弘(Xiao Hong氏、Red氏)やChief Scientistの季逸超(Ji Yichao氏、Peak氏)らが創業に関わった。
同社は当初、「Monica」と呼ばれるAIブラウザー拡張機能から事業を始めた。その後、2025年3月6日にManusを招待制で公開。AIがユーザーの指示を受けて自律的に作業を進める様子を紹介したデモが大きな注目を集め、一気に知名度を高めた。
2025年4月にはBenchmarkが主導する約7500万ドルの資金調達を実施し、企業価値は約5億ドルとされた。その後、2025年中旬にはシンガポールへ本社を移転。中国本土での事業を縮小し、中国人従業員の一部をシンガポールへ移すなど、海外市場を意識した事業展開を進めた。
Manusは急速に利用を拡大し、2025年12月ごろには年率換算の収益(ARR)が約1億〜1億2500万ドル規模に達したとされる。ゼロから短期間でここまで成長した例としても注目された。

そして2025年12月29日、MetaによるManusの買収が完了した。買収額は約20億〜30億ドルと報じられている。買収後もManusはシンガポールを拠点とし、比較的独立した形で運営されながら、MetaのAI戦略や「Meta AI」などとの統合が進められる計画だった。
しかし、その後に中国当局による調査が始まった。2026年1月から中国商務部などが買収について調査を開始し、4月27日には国家発展改革委員会(NDRC)が外国投資安全保障審査に基づいて買収を禁止し、取引の撤回を命じたとされる。
背景には、AI技術の海外流出や国家安全保障、データ、人材の移動などをめぐる問題があったとみられる。こうした経緯からMetaとManusを取り巻く事業関係は見直され、2026年6月ごろから運営やデータ共有の分離が進められてきた。今回の発表は、その仕上げとしてManusが独立企業としての運営に戻ることを正式に案内したものだ。
2025年12月29日以降のデータが対象。8月23日までにバックアップを
今回の対応で特に注意が必要なのが、一部ユーザーのデータだ。Manusによると、2025年12月29日以降に一部ユーザーが生成したデータは、規制要件への対応のため削除される。2025年12月29日はMetaによるManus買収が完了した日であり、買収後に生成されたデータが今回の対応対象となる。
対象となるユーザーには、Manusアプリ内とメールで通知が届く。Apple IDまたはFacebookアカウントで登録しており、Manus側にメールアドレスを登録していないユーザーについては、アプリ内通知を確認する必要がある。対象かどうかは、Manusから届く通知のほか、ヘルプセンターの案内からも確認できる。
バックアップ期間はすでに始まっており、2026年8月23日午前7時59分(シンガポール時間)まで。日本時間では8月23日午前8時59分までとなる。
バックアップは専用ツールから実行でき、複数回のバックアップにも対応する。バックアップを実行したあとに新しいTaskデータを作成した場合は、最新のデータを保存するため、もう一度バックアップを実行する必要がある。
削除は8月23日午前8時から8月24日(シンガポール時間)にかけて行われる。この期間、対象ユーザーはManusのアカウントにアクセスできなくなる。Manusは約2日間のアクセス停止を見込んでいる。日本時間では、8月23日午前9時ごろから8月25日午前9時ごろまでが、この移行期間にあたる。
バックアップ期間が終了すると、対象ユーザーはデータ復元ポータルが開くまでアカウントを利用できない。復元ポータルは8月25日午前8時(シンガポール時間)、日本時間では8月25日午前9時から利用できる。復元ポータルからバックアップしたデータを戻せば、Manusの利用を再開できる。
なお、バックアップ期間中の対象ユーザーには料金が請求されない。また、データを復元して利用を再開したユーザーには「ウェルカムバックボーナス」として特典が提供される。サブスクリプションの詳細については、対象ユーザーへのメールやアプリ内通知で案内される。
一方、今回の対応対象ではないユーザーは、特別な操作をする必要はなく、通常どおりManusを利用できる。対象外であることを知らせるアプリ内通知が届く予定だ。
Manusは、今回のデータ削除についてセキュリティ事故によるものではないと明確に説明している。独立企業としての運営再開と、特定の法域における規制要件への対応が理由となる。
独立後のユーザーデータは、米国とシンガポールに保存される。具体的なデータの取り扱いについては、ManusのTrust Centerで案内している。また、Manusは今回の移行後もサービスの開発を続ける方針だ。公式発表では、汎用AIエージェントの可能性をさらに広げる新機能を複数準備しているとしている。
中国発のAIサービスとして注目を集め、シンガポールへの拠点移転、Metaによる買収、そして規制上の問題を経て、再び独立企業として運営されることになったManus。今回のデータ移行は、こうした複雑な経緯を経てサービスを新たな体制へ移すための重要な手続きとなる。
情報ソース
(画像:Manus)





