
楽天モバイルとKDDIのローミング契約が、2026年9月末を境に大きく変わろうとしている。
KDDIは8月7日、楽天モバイルへのローミング提供について、現在の契約を9月末で終了する方向を示した。一方、楽天モバイルは、10月以降も自社回線の整備に時間がかかる地域ではローミングを続ける方針だ。十分な自社エリアを確保できている地域では、ローミングを縮小する。
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長も8月12日、Xへの投稿でこの方針に触れ、KDDIとの「詰めの協議」を続けていることを明らかにした。具体的な対象エリアや期間はまだ固まっていないものの、楽天モバイルの自社回線を軸にしながら、必要な地域ではKDDIのネットワークを利用する形へ移行する方向だ。
楽天モバイルのローミング契約につきましては、KDDI様とは現在も、詰めの協議を行なっています。
— 三木谷浩史 Hiroshi (Mickey) Mikitani (@hmikitani) August 12, 2026
楽天モバイルがカバーに時間を要するエリアに関しては、ローミングは10月以降も継続します。一方、楽天モバイルが十分カバーできているエリアはローミングを縮小していきます。…
7年間続いたKDDIのローミング、楽天モバイルの成長を支える
楽天モバイルにとって、KDDIのローミングはサービス開始時から全国展開を支えてきた存在だ。
楽天モバイルは2019年10月、国内4番目のMNOとして携帯電話サービスを開始。当時は自社基地局の整備が都市部を中心に進んでいた一方、地方や山間部では十分なエリアを確保できていなかった。そこでKDDIのネットワークを借り、自社基地局が少ない地域でもサービスを提供した。
ローミングは2019年10月1日に始まり、主にKDDIの800MHz帯を利用してきた。800MHz帯はいわゆるプラチナバンドで、電波が遠くまで届きやすく建物内にも入りやすい。基地局が十分に整っていなかった楽天モバイルにとって、全国の通信エリアを補う重要な存在だった。
当初のローミング契約は2026年3月末までの予定だったが、2023年に両社が新たな協定を結び、期限は2026年9月末まで延長された。このとき、東京都23区、名古屋市、大阪市の一部繁華街に加え、地下鉄や地下街、トンネル、屋内施設などもローミング対象に加わった。

その後、楽天モバイルは自社ネットワークを急速に拡大した。2026年6月末時点の契約回線数は1075万回線で、前年同期から178万回線増加。MNO単体でも約993万回線まで増えている。
自社基地局は6月末時点で累計32万1900局。内訳はLTEが26万1100局、5Gが6万800局で、人口カバー率は公称99.9%水準まで上がった。2026年度には2000億円規模の設備投資を計画しており、基地局建設をさらに進める。
また、2024年6月からは自社の700MHz帯によるプラチナバンドの運用も始めている。サービス開始当初と比べ、楽天モバイルは自社ネットワークで対応できる範囲を大きく広げた。
一方、KDDIにとって楽天モバイルは、すでに1000万回線を超える規模まで成長した競合キャリアだ。
KDDIの松田浩路社長は8月7日の決算説明会で、ローミングについて「人口カバー率を補填する目的で7年間提供してきた。役割は果たせた」と説明した。楽天モバイルの契約者増加に伴って、KDDIのネットワークに想定以上の通信が流れ込むケースもあり、今後はau、UQ mobile、povoなど自社サービスの利用者を優先する考えを示している。
楽天側も、自社回線を軸としたネットワークへの移行を進める。三木谷氏は8月10日の決算説明会で、カバーに時間がかかる地域では10月以降もローミングを継続し、十分なカバーを確保できている地域では縮小していくと説明した。
10月以降、楽天モバイルの通信はどう変わる?
では、10月1日から何が変わるのか。まず、KDDIのネットワークが全国一律で使えなくなるわけではない。楽天モバイルの自社回線で十分なエリアを確保できている地域からローミングを縮小し、整備に時間がかかる地方や山間部では、当面KDDIのネットワークを利用する形になる。
都市部で気になるのは、屋内や地下、ビルが密集した場所などの通信環境だ。楽天モバイルは700MHz帯の整備を進めているが、これまで利用できたKDDIの800MHz帯が減れば、場所によっては電波状況が変わる可能性がある。
実際、2026年6月ごろからKDDI側でローミングエリアの縮小が進み、一部の楽天モバイルユーザーからは「以前はつながっていた場所でつながりにくくなった」といった声も出ている。今後さらに縮小が進めば、同様の変化が別の地域でも起きる可能性がある。
楽天モバイルは自社ネットワークの強化も急いでいる。山手線の全駅で年内に5Gを整備する計画や、東京メトロでのMIMO導入など、都市部の通信容量を増やす取り組みを進めている。
地方や山間部では、KDDIのローミングが楽天の自社基地局整備を支える橋渡しの役割を担う。基地局を新設するには用地の確保や工事などに時間がかかるため、すぐにすべてを自社回線へ切り替えるのは難しい。
具体的にどの地域で、いつまでローミングが残るのかは現時点で決まっていない。両社は現在も協議を続けており、対象エリアや期間は今後明らかになるとみられる。
楽天モバイルにとって、ローミング縮小は通信品質だけでなく収益にも関係する。KDDIに支払うローミング費用を減らせるため、モバイル事業の収益改善につながる可能性がある。楽天モバイルは2025年度に携帯キャリア事業で通期EBITDA黒字を達成しており、契約者数の増加と通信品質の改善を進めている。
一方、自社ネットワークの整備には引き続き投資が必要になる。ローミング費用を抑えながら基地局を増やし、自社回線だけで対応できるエリアを広げていくことが今後の課題だ。
今回の契約見直しは、楽天モバイルにとって大きな転換点になる。サービス開始から7年間、KDDIのネットワークを借りて全国展開を進めてきた楽天モバイルは、今後、自社ネットワークを軸に大手3社と競争する段階へ入る。
KDDIとの協議で今後どの地域にローミングを残すのかが固まれば、ユーザーにとっても10月以降の通信環境がより具体的に見えてくる。楽天モバイルが自社回線の整備をどこまで進められるか、そしてローミング縮小後も通信品質を維持できるかが、次の焦点となる。





