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レノボの新AI「Lenovo Qira/Motorola Qira」とは何か。PCもスマホも1つのAIでつながる時代へ

生成AIの普及によって、PCやスマートフォンには「AIアシスタント」が当たり前のように搭載される時代になった。Microsoftの「Copilot」、Googleの「Gemini」、Appleの「Apple Intelligence」などがその代表例で、「AI PC」や「AI Phone」という言葉もテック業界の中ではすっかり定着している。

もっとも、現在のAIは基本的に「使いたいときに呼び出す」存在だ。チャット画面を開いて質問し、回答を受け取る。モデルの性能は飛躍的に向上したものの、使い方そのものはこれまでと大きく変わっていない。

しかし、米ラスベガスで開催された「CES 2026」でレノボが発表した「Lenovo Qira」と、Motorolaブランド向けに展開する「Motorola Qira」は、その体験を変えようとしている。

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「Personal Ambient Intelligence」が目指すもの

レノボは「Qira」を、従来のAIアシスタントとは異なる「Personal Ambient Intelligence(パーソナル環境知能)」として位置付けている。チャットを開いて話しかけるAIではなく、デバイスの裏側で常に動作し、ユーザーの状況や作業内容、過去の履歴を理解しながら、その時々に応じた支援を行う。AIを「使う」のではなく、AIが生活や仕事に自然と溶け込み、必要な場面で先回りして支えてくれる。そんな新しいコンピューティング体験を目指している。

「Qira」を理解するうえで欠かせないのが、「Personal Ambient Intelligence」という考え方だ。「Ambient Intelligence(環境知能)」という概念自体は以前から存在しており、人を取り巻くコンピューティング環境が状況を理解し、自然な形で支援することを指す。「Qira」は、そこに「Personal」という考え方を加えている。

「Qira」が理解しようとしているのは、不特定多数の利用者ではなく、一人ひとりのユーザー。利用しているデバイスや保存しているファイル、スケジュール、過去の作業履歴、日々の利用習慣、AIとの会話までを継続的に把握し、その人に合わせた支援を行う。

主役はAIではなく、あくまでユーザー自身。PCからスマートフォンへ持ち替えても、将来的にスマートグラスなど新しいデバイスを使うようになっても、「Qira」は同じ知識と文脈を持ったまま寄り添い続ける。レノボは、この体験を「One Intelligence, Across All Your Devices」という言葉で表現する。

CES 2026で発表された、Qiraエコシステム内で動作するように設計されたペンダント型AIデバイス「Project Maxwell」

名称だけを見ると、「Lenovo Qira」と「Motorola Qira」は別々のサービスのようにも思えるが、しかし実際に両者は共通のAI基盤を採用したひとつのAIとなっていて、レノボのPCやタブレット向けには「Lenovo Qira」、Motorolaのスマートフォン向けには「Motorola Qira」というブランド名で提供される。

言い換えれば、AIはデバイスに紐付くのではなく、ユーザーに紐付いているということ。従来は、PCではCopilot、スマートフォンではGeminiというように、利用するデバイスごとに異なるAIを使い分けるケースが一般的だった。

AppleもApple Intelligenceによってデバイス間の連携を進めているが、「Qira」ではさらに一歩踏み込み、「同じAI」があらゆるデバイスをまたいでユーザーを支えることを前提としている。

例えば、自宅ではLenovo製ノートPCで企画書を作成し、外出先ではMotorolaスマートフォンで続きを確認する。帰宅後はタブレットで修正を加える。そんな流れでも「Qira」は作業を途中から自然に引き継ぐ。

「午前中に作っていた資料を開いて」「さっき修正した内容を反映して」「この続きを書いて」といった曖昧な指示が通じるのは、AIがユーザーの文脈を理解し続けているからだ。レノボが描くのは、「PC向けAI」や「スマホ向けAI」ではなく、一人のユーザーに寄り添うAIがあらゆるデバイスで同じように働く世界だ。

Qiraを搭載したスマートグラス「Lenovo AI Glasses」(画像:Lenovo)

また、「Qira」がこれまでのAIアシスタントと大きく違うのは、「必要なときにアプリを開いて使うAI」ではなく、システム全体に溶け込んだ「環境型AI」として設計されていること。

これまでの生成AIは、チャット画面を開いて質問や指示を入力して初めて動き出すものだった。一方のQiraは、デバイス上で常時動作し、画面の表示内容やカメラ、音声などをリアルタイムで認識。ユーザーが何をしているのか、その場の状況を踏まえたうえでサポートを行う。

例えば、Web会議をしながら「この資料の要点をまとめて」と依頼したり、旅行の計画を立てている途中で「次の予定に合わせてホテルを予約して」と話しかけたりといった操作が、アプリを切り替えることなくシームレスに行える。

また、専用パネルの「Qira Launchpad」は、ジェスチャーやホットキーで呼び出すだけで、表示中の画面に合わせたAIアクションを提案してくれる。そのときの作業内容に応じて必要な機能へすぐアクセスできるのも特徴だ。

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「答える」だけで終わらない、実行力を持つAI

27インチのUHDディスプレイにAI機能を組み合わせたコンセプト製品「Lenovo Smart Sense Display」(画像:Lenovo)

「Qira」では、「Action Orchestration(行動実行機能)」も重要な役割を担っている。従来の生成AIは、質問に対して文章で回答することが中心だった。しかし「Qira」は、ユーザーの代わりに実際の操作まで行える。

例えば、会議の内容を要約したあと、その内容を関係者へメッセージで共有し、さらにフォローアップの予定をカレンダーへ登録するといったように、複数のアプリをまたぐ一連の作業をまとめて実行できる。

用途に応じて、以下の6つのモードも用意されている。

  • Chat:質問への回答や情報検索、アイデア出し、文章作成などを行う基本的なチャットモード。
  • Live:画面やカメラの映像をリアルタイムで解析し、状況に応じた解説や操作支援を行うモード。
  • Catch Me Up:離席中に届いたメールやチャット、通知、会議内容などをまとめて要約し、短時間で状況を把握できるモード。
  • Write:メールやレポート、企画書などの作成やリライト、校正、文体の調整を支援するモード。
  • Creator:画像やデザイン、プレゼンテーションなどの制作を支援し、アイデア出しからコンテンツ生成までをサポートするモード。
  • Pay Attention:会議や授業で重要なポイントを抽出し、メモや要約を作成することで、内容の理解や議論に集中しやすくするモード。

こうした機能を支えているのが、デバイス内の文書や会話履歴、ユーザーの利用傾向などを組み合わせた「Fused Knowledge Base(融合知識ベース)」だ。過去の情報や現在の状況を踏まえて判断するため、より自然で的確なサポートが期待できる。

プライバシーを担保する「ハイブリッド・アーキテクチャ」

AIが常に状況を把握していると聞くと、「プライバシーは大丈夫なのか」と気になる人も多いだろう。「Qira」では、その不安に応えるために「Privacy by Design」という考え方を採用している。

そもそもAIを使用する際のデータ処理は、デバイス内のNPUを活用したオンデバイス処理が基本となっており、機密性の高いデータは原則として端末内で処理される仕組みになっている。クラウドへデータを送信する場合も、ユーザーの明示的な許可が必要で、ユーザーの個人データが公開AIモデルの学習に利用されることもない。

さらに、ネットワークに接続せずに利用できる「Local Mode」も用意されており、機密情報を扱う企業や業務用途でも安心して利用できるよう配慮されている。

最後に提供時期について。まず「Motorola Qira」については、7月15日に国内発表された折りたたみスマートフォン「motorola razr fold」の発表会で、日本での提供時期が2026年秋頃になることが明らかにされた。日本市場向けには日本語環境に最適化され、Qiraの各種機能をフルに利用できる予定だ。

一方、「Lenovo Qira」はすでに一部の国・地域で対象デバイスへの提供が始まっており、対応機種や提供地域は今後順次拡大される予定となっている。現時点では日本での提供開始時期は案内されていないものの、同じAIアーキテクチャを採用する「Motorola Qira」が今秋にも国内で利用可能になることを踏まえると、「Lenovo Qira」についても、それほど遠くない将来に日本で提供が始まる可能性は十分にありそうだ。また、将来的にはスマートグラスなどのウェアラブル端末との連携も計画されているという。

「Qira」は、前身となる「Lenovo AI Now」で培われたローカル処理や個人向け知識ベースの仕組みを受け継ぎながら、デバイスをまたいで利用できる常時待機型のAIへと進化した。これまでAIは、必要なときに呼び出して使うツールだったが、「Qira」が目指すのは、AIが普段の仕事や生活に自然と溶け込み、必要な場面でさりげなく支えてくれる存在だ。

レノボが掲げる「One Intelligence, Across All Your Devices」という構想を実現するためには、PCとスマートフォンの双方で「Qira」が利用できることが不可欠。日本市場でも、そのエコシステムがどのタイミングで本格的に立ち上がるのか、今後の動向に注目したい。

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