NVIDIA、家庭内PCの空きGPUでAIを分散処理する「NVIDIA pair」無償公開

COMPUTEX TAIPEI 2026で基調講演に登壇したNVIDIAのジェンスン・フアンCEO

米NVIDIAは9月3日、独ベルリンで開催されている家電見本市「IFA Berlin 2026」にあわせて、家庭内にある複数のPCのGPUをAI処理に活用するソフトウェア「NVIDIA pair」を公開した。

家庭内ネットワークにつながったPCを自動的に検出し、それぞれのPCで使われていないGPUの計算資源へAI処理を振り分ける仕組み。オープンソースライセンス「Apache 2.0」のもとで無償提供する。

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家庭に眠るGPUをAI処理に活用

「NVIDIA pair」は、家庭内のPCをAI処理のために連携させる「AIルーター」と位置付けられるソフトウェアだ。物理的なルーターを用意するのではなく、各PCにインストールして使う。

背景にあるのは、家庭内に複数のPCがあっても、それらが常に使われているわけではないという状況だ。NVIDIAの調査では、米国の半数以上の家庭に2台以上のPCがある一方、PCの平均稼働率は1日あたり17%。時間にすると4時間強にとどまるという。

そこでNVIDIAは、普段は使われていないPCのGPUをAI処理に回すことを考えた。家庭内で使われていないGPUの計算資源を合算すると、平均で約165テラフロップスに達するとしている。

NVIDIAの試算では、こうしたPCを60%の稼働率で運用し、270億パラメータのローカルAIモデル「Qwen 3.8」を実行した場合、1日あたり約1億2000万トークンを処理できる。商用クラウドAIサービスに換算すると、月額約1200ドル相当の処理能力にあたるという。NVIDIA pairは、この家庭内にある余剰の計算能力をまとめてAI処理に使えるようにする。

仕組みは比較的シンプルだ。「NVIDIA pair」をインストールしたPCは、「mDNS」技術によって家庭内ネットワーク上のほかのPCを自動的に検出する。接続時には画面に表示される6桁のコードを入力してデバイス同士を認証し、通信には「mTLS」による暗号化を用いる。

AI処理の割り振りにはプロキシ方式を採用する。ローカルAIの実行環境として広く使われている「Ollama」や「LM Studio」の通信ポートをNVIDIA pairが中継する仕組みだ。

ユーザーがAIエージェントなどからOllamaやLM Studioへリクエストを送ると、NVIDIA pairがそのリクエストを受け取り、家庭内ネットワークにある別のPCへ転送する。利用する側から見ると、普段通りOllamaなどを使っているように見える。

AI処理は、複数のGPUに1つの巨大なモデルを分割して配置するのではなく、処理リクエストを別のPCへ転送し、そのPC上でAIモデルを実行する方式だ。複数GPUを1つのモデルとして扱う必要がないため、システム構成もシンプルに抑えられている。

対応OSはWindows、Linux、Mac OSで、Apple Silicon搭載Macも利用できる。NVIDIA製GPUだけに限定されておらず、OllamaやLM Studioを動かせるGPUであれば組み込める。

NVIDIAが公式にサポートするGPUは、AI処理に適したTensor Coreを搭載するRTX 20シリーズ以降。ただし、古いPCでもOllamaやLM StudioなどのAI実行環境を動かせる性能があれば、NVIDIA pairのネットワークに加えられる。

共有グループへの参加や離脱はユーザーが手動で管理するため、PCが勝手にほかの家庭内ネットワークへ接続されることはない。NVIDIAによる検証では、最大18台のGPUを接続して動作することも確認している。

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PCでゲームをしている間は別のGPUへ処理を回す

「NVIDIA pair」では、家庭内のGPUをまとめて使うだけでなく、それぞれのPCの状況を見ながら処理を割り振る。

各PCのGPU使用率や待機中のタスクなどを監視しており、例えばメインPCでゲームを起動した場合、そのPCへのAI処理の割り当てを避ける。3D映像のレンダリングなど、GPUを大きく使う作業を始めた場合も同様で、空いている別のPCへ処理を回す。

ゲームや映像制作など、GPUを使う作業をしながらでも、AI処理によって手元のPCの動作が重くなることを抑えられる設計だ。

PC間でやり取りするのはテキストデータが中心となるため、ネットワーク帯域の消費も少ない。動画配信など、家庭内で行っているほかの通信への影響も抑えられるとしている。

NVIDIAが特に用途として挙げているのが、複数のAIエージェントを同時に動かす「マルチエージェント」環境だ。1台のPCだけで複数の処理を実行すると、処理が順番待ちになる場合がある。「NVIDIA pair」を使えば、家庭内の別々のPCへ処理を振り分け、複数のタスクを並行して実行できる。

NVIDIAのデモでは、スマートホームのログやメールなど、大量の入力ファイルを解析する処理を実施した。1台のPCだけで処理した場合は18分かかったのに対し、3台のPCに分散した場合は約9.8分で完了した。約2倍の処理速度になったという。

家庭内に複数のPCがあり、その一部を使っていない時間が長いユーザーにとっては、これまで眠っていたGPUをローカルAIの処理能力として活用できる。PCが使われていない時間をAI処理に振り向けることで、家庭内にあるGPUを無駄なく使い切るという新しいPCの活用方法が広がる可能性がある。

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