
マウスコンピューターは23日、メディアやパートナー企業を対象としたカンファレンスイベント「Mouse Communication Partner Conference」を東京都内で開催した。
カンファレンスのなかでは2026年度の事業方針について説明が行われた。マウスコンピューターの発表によれば2025年度の売上高は過去最高を更新し、PC販売台数は前年比108%、液晶モニター販売台数も同109%と好調だったとしている。
同社の代表取締役社長を務める軣秀樹氏が繰り返し語っていたのは、「ものづくり」を経営の軸に据える考え方だ。品質向上やサポート体制の強化、eスポーツやAI PCへの取り組みなどさまざまな施策を進めているが、その背景には製品品質と顧客満足度を高めるという考えがある。
その考えを形にしたものとして打ち出されたのが、新たな経営指針「MOUSE」だ。品質や納期を支える仕組みづくり、AI PCやeスポーツを通じた新たな価値の提供、人材育成や組織強化など、今後の取り組みを5つのテーマにまとめた。
また、PCの年間不良率が低下し、目標としていた数値を下回ったことも明らかにした。さらに、愛知・名古屋で開催される第20回アジア競技大会のeスポーツ競技において、同社のゲーミングブランド「G TUNE」が競技用PCとして採用されることも発表された。
過去最高売上のマウスが次に挑むもの。5つの事業方針「MOUSE」を発表
今回発表された「MOUSE」は、2026年度以降の成長戦略を示す5つの事業方針だ。背景には、轟社長が就任後の2年間で進めてきた指針「ものづくり10」の浸透がある。
同社では、社内外の課題を分析した結果、解決策の多くがものづくりの考え方や姿勢に結びついていると判断。これまでは社内改革の指針として活用してきたが、2026年度からは顧客や社会に向けて積極的に発信するフェーズへ移行する。
MOUSEは以下の5項目で構成される。
- M(Monetize & Market Share):価値ある製品やサービスを収益と市場シェアの拡大につなげる。
- O(Operational Excellence):品質や納期を個人の経験に依存せず、組織的な仕組みで維持する。
- U(User Value Expansion):AI PCやeスポーツなど新たな領域で、ユーザーが価値を実感できる体験機会を増やす。
- S(Stop-less Growth Structure):継続的な成長を可能にする組織基盤を構築する。
- E(Employee & Organization Power):従業員と組織の力を引き出し、企業価値向上につなげる。
品質面では、PCの不良率が大幅に改善したことも明らかにされた。かつては品質面で課題を抱えていた時期もあったが、設計や製造工程の見直しを継続した結果、安定した品質水準を実現している。轟社長は当時を振り返り、「品質最優先」の考え方を全社で共有しながら改善を積み重ねてきたと説明した。
長野県飯山市の開発・製造拠点では、温度管理設備や静音試験設備を活用し、「性能」「温度」「静音性」のバランスを検証。部品レベルでもサプライヤーと品質目標を共有しながら、継続的な品質向上に取り組んでいる。
また、品質管理を専門部門だけの仕事にせず、全従業員が参加する「マウスクオリティ」の考え方を導入。現場主導のQCサークル活動や障害報告制度を通じて、製品不具合だけでなく業務上の課題も継続的に改善している。
「MOUSE」の「O(Operational Excellence)」では、こうした品質維持を個人の経験や属人的なスキルに頼らず、組織の仕組みとして定着させることを重視する。サービス部門では修理スタッフの多能工化を進め、状況に応じて柔軟に人員配置を行える体制を整備。修理用部材についても10万点を超えるが、これを安定供給を支える管理体制を構築し、迅速な対応につなげている。
コールセンターでは、入電状況に応じた柔軟な人員配置を行うほか、音声認識技術を活用して通話内容をリアルタイムでテキスト化。FAQ検索スピードや応対内容チェックの精度、通話ログの作成スピードが向上し、通話時間は2023年度に比べて109秒(約15%)短縮したという。
さらに同社はサポート業務を自社運営することで、ユーザーが訴える症状と実際の故障原因とのギャップを分析しやすい環境を構築。サービス部門、品質管理部門、開発部門が日常的に情報共有を行い、不具合の真因特定や再発防止に取り組んでいるという。
法人向けサービスも強化する。専門知識を持つスタッフが対応するエンジニア専用窓口を新設したほか、大規模導入時の負担軽減を目的に、購入後でも保証内容を変更できるサービスを開始。「また選びたくなるサービス」の提供を目指すとしている。
一方、「U(User Value Expansion)」では、製品を販売するだけでなく、ユーザーが実際に価値を体験できる機会の拡大を掲げる。AI PCについては、従来のPCとの違いを実機で体験しながら理解できる場づくりを進める方針だ。
2026年度の重点施策として挙げられたのが、ユーザー体験の拡大だ。同社は愛知・名古屋で開催される第20回アジア競技大会のeスポーツ競技パートナーとなり、競技用PCとしてゲーミングブランド「G TUNE」が採用された。高校生向けeスポーツ大会「STAGE:0」への協賛に続く取り組みで、日本のeスポーツ市場の活性化を後押しする狙いもある。
国際大会で競技用PCとして採用されることは、長時間の競技環境でも安定して動作する品質を示す機会になる。大会で使用されるPC構成も決定しており、高い処理性能と安定動作を両立した仕様になるという。
また今年度は、サービス本部内に「3R推進室」を新設した。PC価格の上昇が続くなか、新品に近い品質を求めながらもコストを抑えたいというニーズに応えるため、自社で整備したメーカー保証付きリユースPC「マウス整備済パソコン」の提供を開始。サービスセンター内に専用ラインを設け、検査から整備、部材供給までを一貫して行う体制を整えている。
同取り組みは、Reuse(再利用)・Reduce(廃棄物削減)・Recycle(再資源化)からなる3R活動を通じて環境負荷の低減と事業価値の最大化を目指すもの。製品は外観の状態に応じてランク分けされており、ランクごとに価格を設定することで、用途や予算に合わせて選択できるようにしている。
このほか、飯山市と連携した親子パソコン組み立て教室など、地域社会や次世代への取り組みも継続。ものづくりを軸としながら、品質、サポート、体験価値、資源循環まで含めた幅広い施策を通じて、顧客との信頼関係を強化していく姿勢を示した。
