
海外出張となると、パスポートの残存有効期間や渡航先で必要な書類、現地で契約するSIMカードなど、気をつけなければならないことが山ほどある。
そんな中で意外と忘れがちなのが、渡航先の電源環境だ。日本と同じ形状のコンセントを使える国は一部に限られており、多くの場合は変換プラグを持参する必要がある。
筆者はいま「gamescom 2025」と「IFA 2025」の取材のため、ドイツに滞在している。今年は海外渡航の機会が多く、これで7回目、訪れた国は9カ国目となった。

実際に各国を回るなかで痛感するのが、微妙に異なるコンセント形状への対応だ。筆者は常に主要国対応のマルチ変換プラグを持ち歩いているものの、出張時の荷物はなるべくコンパクトに抑えたい。だからこそ「最適解」を模索し続けている。
そんな折、ちょうどよいタイミングでMomaxから、海外対応のUSBマルチタップ「Momax 1-World2+ 100W 4-Port Dual AC Travel Adaptor with Built-in Retractable Cable」を提供いただき、試す機会を得た。
一般的な変換プラグはコンセント形状を変換するだけだが、この製品は世界各国のプラグに対応しつつ、同時にUSB充電器としても活躍してくれる “万能USBマルチタップ” だ。
実際に使ってみると、そのメリットとデメリットがはっきり見えてきた。本稿では、その使用感をレポートしていきたい。
これさえあればほとんどの国で充電できる。万能USBマルチタップを試してみた

今回レビューする「Momax 1-World2+ 100W 4-Port Dual AC Travel Adaptor with Built-in Retractable Cable」を手がけたMomaxは、2003年に香港で設立されたモバイルアクセサリーブランドだ。
日本での知名度はそれほど高くないかもしれないが、毎年ラスベガスで開催されているCESや、Hong Kong Electronics Fairなどにも出展している企業であるため、業界では一定の認知を得ているブランドといえる。

さっそく実機をチェックしていこう。前述したように本製品は、世界各国のコンセントに対応できる万能USBマルチタップということで、通常の変換プラグに比べたらサイズ・重量は大きめだ。
具体的なサイズは95.2 x 59 x 54.3mmで、重量は322g。大きさとしては小さな牛乳パック(200ml) よりもすこし大きいかなといった感じだ。

使い方はとてもシンプル。製品背面にコンセントに挿すためのプラグが内蔵されているので、本体側面のつまみを動かしプラグを引っ張り出しコンセントに繋ぐ。あとは本体正面に搭載されているユニバーサル仕様のコンセントに日本から持ってきた充電器だったり、家電製品を繋ぐだけだ。

また、本製品にはそのほかにもUSBポート/AタイプのACポートが搭載されているので、ひとつのコンセントに対して複数のガジェットを接続することが可能だ。

本製品が利用できるコンセントは、A (日本・北米・台湾など)/BF (イギリス・香港・シンガポールなど)/C (韓国・ヨーロッパなど)/O (オーストラリア・ニュージーランドなど) の合計4種類。
これらのプラグは、本体側面のつまみを押しながら左右に動かすことで端子を出し入れできる。

つまみは上から順に「EU」「USA/AUS」「UK」の順に配置されており、もし日本・米国・オーストラリア等で利用する場合は「USA/AUS」を利用する。オーストラリアの場合はプラグをくるっと回しハの字にすることで使用することが可能だ。
たとえば、今回乗り継ぎのために訪れた韓国はタイプC、目的地のドイツもタイプCであるため、この場合はEUのプラグを引っ張り出せば使用することが可能だ。
出力ポートは全部で6つ。コンセントが1つしかない部屋で役立ちそう

本製品には2つのACポートと4つのUSBポートが搭載されている。
ACポートは、本体正面にあるものがユニバーサル仕様でどんなプラグ形状でも接続できるものになっていて、側面にあるもう1つがタイプA (米国・日本・台湾など) 仕様。
たとえば、ホテルの部屋できちんと通電するコンセントが1つしかない場合に、部屋備え付けの機器と自身が持って行った機器を一緒に使いたいときに便利だろう。

USBポートはType-Cが2つ、Type-Aが1つの合計3つ。そのほかに伸縮に対応したType-Cケーブルがビルトインされている。このビルトインケーブルは最大100Wまでの充電に対応するため、MacBook Proなどのデバイスも高速充電できる。
ケーブルの長さは約65cm。ホテルによってはとんでもない場所にコンセントがあり、長さが足りないこともあるかもしれないが、一般的にはこれくらいの長さがあれば十分かと思われる。

そのほか、2ポートのType-CとType-Aはいずれも本体底面に搭載されている。Type-Cの片方は単ポートで最大100W出力に対応。もう片方のType-CとType-Aは単ポート利用で最大18Wに対応する。
2つ以上の機器を接続した場合、出力は1ポート最大65W、合計最大100Wに抑えられる。具体的には、ビルトインケーブルとType-Cポートにデバイスを接続した場合は、ビルトインケーブル側が最大65W、Type-Cポートが最大35Wになり、さらにもうひとつのType-CポートやType-Aポートにデバイスを接続すると、ビルトインケーブルは最大65Wのままだが、ひとつめのType-Cポートが最大20Wに制限され、残りの15WがふたつめのType-CポートとType-Aポートに振り分けられる仕組みだ。
注意点として、本製品には変圧機能はなく、日本の電圧にしか対応していない製品を海外で接続すると故障する可能性がある。プラグ部分に「100-250V対応」と書いてある電化製品は海外の電圧にも対応しているため、接続前に必ず表記を確認していただきたい。
世界4カ国で使ってみて分かったメリット・デメリット
本製品を提供してもらってから、筆者は香港・シンガポール・韓国・ドイツに持っていき同製品を試用してみた。
まず香港やシンガポールだが、渡航者が多いこともありホテルや空港のコンセントはほとんどがユニバーサル仕様になっていて、日本のプラグを直接挿せることも多いため、意外と利用する場面が少なかったのが実情だ。

役に立ったのは、韓国やドイツだ。これらの国はタイプCのコンセントを採用しており、ホテルでもユニバーサル仕様のコンセントがあることは意外と少ない。現に、筆者がいま宿泊している米国資本のホテルもコンセントが7つあるにも関わらず、すべてがタイプCとなっている。
そして、タイプCのコンセントは奥まった位置にあることが多いのだが、本製品はコンセントまで届くよう先端が伸びてくれるため、問題なく挿すことが可能だ。


ちなみに、USBポートがある底面を下に向けてコンセントに挿すのが本来の正しい向きだが、コンセント部分が緩くなければ、こんなふうに逆向きに挿すことも可能。デスクとコンセントの距離が近いなど、底面側のスペースに余裕がないときにはケーブルに負荷をかけないように逆向きに挿すのもアリだ。
単ポートで最大100Wまで出力できるため、本製品があれば大抵のデバイスを充電できるのがグッド。変換プラグなど細々したものを使わず、挿せばOKというシンプルさも便利なポイントだ。複数の国を跨いだり、次に行く国を決めない放浪旅をするなら、これ一つでどこでも充電できるというのは魅力かもしれない。


ただし、一方で使い勝手が悪いなと感じる部分もいくつかあった。
まずは、本製品がやや重いこともあって、緩いコンセントだと案外簡単に抜けてしまうこと。特にタイプCのプラグは製品上部に配置されていて、重心がどうしても背面側に寄りがちなため、ガチッ!とハマるタイプのコンセントでない限りズルっと抜けてしまうことも多い。こうなると「充電できない……」という状況に陥ってしまうことに。

また、本製品はサイズも大きいため、上記写真のように一見挿せそうに見える場所でもうまく挿せないこともある。これらも踏まえて、海外に行く際には本製品だけ持って行くのではなく、他の変換器とあわせて持っていくことを筆者としてはオススメしたい。
前述したように、いろんな国・地域に出張する機会が増えたこともあり、本製品のような「万能」な製品には期待感も大きい。今回はやや厳しめなレビューとなってしまったかもしれないが、今後の改良のなかでより安心感の高い製品が生まれてくれたらと思う。
調べてみたところ、最新モデルには今回のレビュー品よりもさらにコンパクトな製品もあるようなので、そちらの使い勝手が気になるところだ。
最後に、これはデメリットというべきか分からないが、本製品は残念ながら日本で購入することができない。もし購入したいと思ったなら、似た仕様の製品が日本のAmazon.co.jpでもいくつか販売されているため、そちらもぜひチェックしてみていただきたい。