SNSの年齢制限だけでは「子どもを守れない」ーーMetaが語る安全対策の課題とは

Meta 安全対策グローバル責任者 アンティゴネ・デイビス氏

Meta日本法人(Facebook Japan)は10月21日、青少年のSNS利用に関する報道関係者向けのラウンドテーブルを開催した。来日した安全対策グローバル責任者のアンティゴネ・デイビス氏が、青少年向けの保護機能や年齢確認の仕組み、海外で進むSNS規制について説明したほか、日本国内での啓発活動も紹介した。

子どものSNS利用をめぐっては、有害なコンテンツへの接触やオンライン上での犯罪被害、長時間利用による睡眠や学業への影響などが問題となっている。こうした課題に対し、SNS事業者は保護機能の強化を進めている。

一方、オーストラリアでは16歳未満のSNS利用を制限する法律が施行されるなど、事業者の自主的な取り組みに加えて、法規制によって対応しようとする動きも広がっている。

SNSの利用を年齢で制限することは、子どもたちを守るための有効な手段なのだろうか。Metaが進める保護対策を見ていくとともに、年齢制限をめぐる議論や、子どもたちが安全にインターネットを利用するために必要な取り組みについて考える。

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13〜17歳を対象とした「ティーンアカウント」

(画像:Meta)

まず、上記懸念に対してMetaは青少年の安全対策としてInstagramやFacebook、Messengerにおいて「ティーンアカウント」を提供している。日本では2025年初頭からInstagramへの導入が始まり、そのあと、FacebookやMessengerにも対象が広がった。13〜17歳の利用者に対し、年齢に応じた保護設定を初期状態で適用する仕組みとなっている。

ティーンアカウントでは、アカウントが非公開に設定されるほか、知らない人からのダイレクトメッセージ(DM)が制限される。不適切な可能性のあるコンテンツの表示も抑えられ、利用時間については1時間ごとに休憩を促す通知が届く。さらに、午後10時から翌朝7時まではスリープモードとなり、通知がミュートされるほか、メッセージへの自動返信も設定される。

13〜15歳の利用者が保護設定を緩和する場合には、保護者の許可が必要だ。年齢が上がるにつれて設定を変更できるようになる仕組みも取り入れ、保護者の見守りと、子ども自身がSNSの使い方を学ぶ機会の両立を目指している。

コンテンツの表示基準も見直している。Metaは2026年5月、Instagramのティーンアカウントにおけるコンテンツ基準を更新し、初期設定で表示されるコンテンツを13歳以上向けの映画に相当する基準に変更した。FacebookやMessengerでも関連する対策を進めており、保護者がより厳しい制限を適用できる設定も用意している。

保護者向けの「ペアレンタル・スーパービジョン(見守り機能)」では、子どもの利用時間やフォロー・フォロワーの状況、ブロックしたアカウントなどを確認できる。過去7日間にメッセージを送った相手も把握できるが、メッセージの内容そのものは閲覧できない。子どものプライバシーに配慮しながら、保護者がオンライン上での交流について把握できるようにする考えだ。こうした見守り機能はThreadsやMeta AIアプリにも広がっている。

自傷行為などに関連するコンテンツへの対応も強化している。Metaは2026年8月、自殺や自傷に関するキーワードを短時間に繰り返し検索した場合、検索を制限して相談窓口へ誘導する対策を強化した。見守り機能を利用している場合は保護者にも通知し、子どもとの対話を始めるための情報も提供する。

保護機能を初期設定で適用するだけでなく、年齢に応じたコンテンツの制限や保護者向けの支援を組み合わせ、子どもの利用環境を整えていくのがMetaの方針だ。

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AIも活用する年齢確認の仕組み

こうした保護機能を適切な利用者に適用するには、アカウントの登録情報だけに頼らず、利用者の年齢を確認する仕組みも必要になる。

Metaは登録時に入力された生年月日に加え、AIによるテキスト分析や年齢予測モデルを活用している。プロフィールや投稿などに含まれる年齢に関する情報を分析するほか、生年月日の変更履歴や、登録情報と実際の行動に矛盾がないかといった点も確認する。

年齢の申告に疑わしい点がある場合には、身分証明書の提出や、セルフィー画像・動画を用いた顔年齢推定などによる追加確認を求めることもある。こうした手段をリスクに応じて使い分け、年齢を偽って保護機能を回避する行為への対応を進めている。

ただし、オンライン上で年齢を確認する方法には、プライバシーへの配慮も欠かせない。身分証明書や顔画像などの情報を扱う場合、どの情報を、何のために、どのように利用するのかが重要になる。年齢確認の精度を高めることと、利用者のプライバシーを守ることをどう両立するかは、SNS事業者だけでなく、年齢確認の仕組みを導入するサービス全体に関わる課題だ。

Metaは、個々のアプリだけで年齢確認を担うのではなく、アプリストアやOSの段階で年齢確認を行う仕組みも提案している。AppleやGoogleなどが提供するアプリストアで、子どもがアプリをダウンロードする際に保護者の承認を求める方式だ。保護者がアプリごとに設定を確認する負担を減らし、複数のサービスに共通するルールを設けやすくする狙いがある。

デイビス氏は、この仕組みについて日本でも導入を望む考えを示し、国会議員とも意見交換を進めていると説明した。

16歳未満のSNS利用を制限したオーストラリア

海外では、SNS事業者による自主的な対策だけでなく、法律によって子どもの利用を制限する動きも進んでいる。その代表例がオーストラリアだ。

同国では16歳未満の子どもが対象となるSNSのアカウントを保有できないようにする法律が成立し、2025年12月10日に施行された。対象となる事業者には、16歳未満の利用者がアカウントを作成・保有することを防ぐため、合理的な措置を講じることが求められている。

Metaは2026年6月時点で、同法への対応として75万件を超えるアカウントへのアクセスを除去したと公表している。

ただし、デイビス氏はSNSの一律禁止について、子どもがオンライン上の危険から遠ざかるとは限らないと指摘する。年齢制限を回避するために生年月日を偽ったり、VPNを利用したりする可能性があるほか、規制対象外のサービスへ移ることも考えられるためだ。実際、規制対象外のニュースサイトのコメント欄が、友人同士の交流に利用されるようになった事例もあるという。

SNSの利用を制限しても、子どもたちがオンラインでの交流をやめるとは限らない。移行先のサービスに十分な保護機能やコンテンツ管理の仕組みがなければ、かえって安全性が低下する可能性もある。

年齢制限に賛成する立場からは、サイバーいじめや有害コンテンツへの接触、オンライン上で子どもを狙う人物との接触を減らせることに加え、睡眠や学業への悪影響を抑えられるとの期待がある。オーストラリアでは、子どもが被害に遭った保護者や一部の青少年からも支持が寄せられており、事業者の自主規制だけでは不十分だった以上、法律によって責任を明確にするべきだという考えもある。

これに対し、慎重な立場からは、規制によって子どもが保護の不十分なサービスへ移るリスクや、年齢確認に伴うプライバシー上の懸念が指摘されている。SNSが友人とのつながりや情報収集、社会参加の機会になっている子どもにとって、利用制限が孤立につながる可能性もある。オンライン上で安全に行動するためのデジタルリテラシーを学ぶ機会が減ることを懸念する声もある。

オーストラリアの制度についても、規制によって子どもの安全性がどの程度高まったのか、回避行動や別サービスへの移行がどのような影響を与えるのか、引き続き検証が必要になるだろう。

Metaはこうした懸念から、年齢だけで一律にSNSの利用を禁じるよりも、年齢に応じた保護機能を適用し、保護者が利用環境を管理できる仕組みを整えることを重視している。

SNSの安全対策は1社だけでは完結しない

Meta日本法人 Facebook Japan 公共政策本部 ポリシープログラムマネージャー 栗原さあや氏

青少年のSNS利用をめぐる課題は、アカウントの年齢確認や利用時間の制限だけではなく、利用者が目にするコンテンツを選ぶ推薦アルゴリズムも、議論の対象になっている。

SNSでは、利用者の興味や関心に応じた投稿を推薦する仕組みが広く使われている。関心のある情報を見つけやすくする一方で、次々と投稿を閲覧することで利用時間が長くなったり、特定のコンテンツに触れる機会が増えたりすることへの懸念もある。

デイビス氏は、アルゴリズムは利用者に合った投稿を推薦するだけでなく、酒やタバコ、性的表現、自傷行為などに関連する不適切なコンテンツを抑えるためにも使われていると説明した。また、利用時間の管理とコンテンツの表示制限は別の課題として捉え、それぞれに共通の基準を設けることが、対策の実効性を高めるうえで重要だとの考えを示した。

Metaは米国で、州司法長官らとの合意に基づく対策も発表している。2026年8月には、InstagramとFacebookの利用時間を合算し、1日2時間を初期設定とする措置を発表した。日本で同様の仕組みを導入するかについては、今回のラウンドテーブルでは具体的な方針を明らかにしなかったが、複数のアプリを横断して利用時間を管理する仕組みが必要だという認識を示していた。

今回のパネルディスカッションには、ITジャーナリストでスマホ安全アドバイザーの鈴木朋子氏と、コミックエッセイ作家・ブロガーのけえこ氏も参加した。

鈴木氏は、中高生が週に数十種類ものアプリを使っていると説明。学校で使用する端末と個人のスマートフォンでは管理の仕組みが異なることもあり、保護者がそれぞれのサービスの設定を把握し、利用状況を見守る負担は大きいと指摘。

また、Instagramでライブ配信を制限された子どもが、年齢を偽って別の動画配信サービスで配信していた事例も紹介した。ひとつのサービスで制限を設けても、別のサービスに移れば同じ問題が起きる可能性がある。子どもが実際に利用するサービス全体を視野に入れた対策が必要だという。

デイビス氏も、Metaのプラットフォームに保護機能を設けるだけでは、子どもがオンライン上で安全に過ごせる環境を十分に整えられないと説明した。事業者に加え、保護者や学校、行政、支援団体が連携する必要があるとの考えだ。

日本でも啓発活動と被害防止の取り組みを推進

Metaは、保護機能の提供に加えて、子どもや保護者がSNSのリスクを理解し、安全な使い方を学ぶための啓発活動にも取り組んでいる。

日本では、総務省が推進する官民連携プロジェクト「DIGITAL POSITIVE ACTION」や、こども家庭庁の「春の安心ネット・新学期一斉行動」と連携。ティーンアカウントの保護機能について、累計100万人以上に周知してきた。

オンライン上で性的な画像を利用した脅迫などの被害を防ぐための活動も進めている。Metaは、米国の児童保護団体NCMECと連携して開発した無料ツール「Take It Down」を紹介した。同ツールは、拡散を防ぎたい画像そのものを外部に送信せず、端末内で生成したハッシュ値を使って照合する仕組み。日本ではNPO法人PAPSと協力し、ツールの周知を進めている。

被害に遭った子どもが自分を責めず、相談につながれるようにすることも重要な課題となる。被害の予防だけでなく、被害に遭った際に支援を受けられる環境を整える必要があるだろう。

また、MetaはNPO法人企業教育研究会と共同で、2020年から「みんなのデジタル教室」を実施している。オンラインと対面の授業を通じて全国の中高生にデジタル社会での行動について伝えており、累計受講者数は5万人を超えた。危険を察知する力や、状況に応じて適切に判断する力を育むことを目指している。

こうした活動は、子どもがSNSを使うこと自体を避けるのではなく、危険を理解し、適切に対処する力を身につけることにもつながる。保護機能や年齢制限だけであらゆる問題を防ぐことは難しく、日常的な対話や教育、相談先の整備も欠かせない。

子どもを守るために、どのような対策が必要なのか

SNSの年齢制限をめぐる議論では、子どもを危険から遠ざけることと、オンライン上で学び、他者とつながる機会を確保することの両立が問われている。

Metaが進めるティーンアカウントのように、保護設定を初期状態で適用する方法には、保護者が個々の設定を一から確認する負担を減らせる利点がある。一方で、保護機能が実際の利用環境でどこまで機能しているか、設定を回避した場合にどう対応するかについては、継続的に確認していく必要があるだろう。

外部の調査や報道では、保護設定を適用したアカウントでも有害なコンテンツが推薦されたとする指摘が出ている。研究者グループが47種類の安全機能を調べた結果、完全に有効だったのは8種類だったとする報告もある。これについてMetaは誤解を招く内容があると反論している。

安全機能の評価では、設定が用意されているかどうかだけでなく、実際にどのようなコンテンツが表示されるのか、子どもが制限を回避した場合にどうなるのかといった点も重要になる。企業による対策の改善とともに、独立した立場からの検証や、実効性を判断できる情報の公開も求められる。

子どものSNS利用をめぐる問題は、特定の事業者だけで解決できるものではない。だからこそ、事業者間で保護機能や年齢確認の基準をそろえ、学校や行政、保護者、支援団体が協力することが重要になる。必要に応じて法規制を検討する場合にも、利用を一律に禁止することによる影響や、規制の回避によって生じる課題を考慮する必要がある。

今回のラウンドテーブルで示されたMetaの取り組みは、年齢に応じた保護機能を整え、保護者や関係機関との連携を進めようとするものだった。子どもたちがSNSを利用する現実を踏まえながら、安全性を高めるための対策をどのように組み合わせていくのか。保護機能の改善と社会全体での取り組みを並行して進めることが、今後も重要な課題となるだろう。

Meta取材
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