App Storeとの出会いがゲームの未来を変えた。個人開発のパズルゲーム『レベルス』10年の軌跡を開発者に訊いた

2016年にApp Storeで配信を開始したパズルゲーム『レベルス』が、今年でリリース10周年を迎えた。個人開発者の林氏が手がける同作は、スマートフォン向けゲームとしてスタートし、Nintendo Switch版やアーケード版など、さまざまな形で展開を広げてきた。

現在は、10年間で生まれた歴代のゲームモードをひとつのアプリに集約する『レベルスII』の開発を進めている。初代のランダムなパネル配置を再現した「クラシックモード」や、Nintendo Switch版で採用された「Plusルール」など、シングルプレイの主要モードはすでに実装済み。一方、アーケード版の対戦モードについては、モバイル版への移植と常設化に向けた取り組みが続いている。

アプリ開発未経験からゲーム開発を始め、App Storeでの特集を機に作品を広げてきた林氏。シリーズを10年間にわたって開発し続けてきた経緯や作品を作り直す中での試行錯誤、そしてAIによって変わりつつある個人開発の現場について話を訊いた。

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アプリ開発未経験から始まった『レベルス』の10年

2016年にApp Storeで公開された初代『レベルス』

『レベルス』は、『テトリス』や『Threes!』などから着想を得て生まれた思考型パズルゲームだ。同じ数字が書かれた同じ色のパネルを組み合わせながら盤面を整理し、青いパネルの「冒険者」で赤いパネルの「敵」を倒し、黄色いパネルの「お宝」を獲得していく。シンプルなルールながら、パネルを動かす順番や盤面の状況を考えながら進める必要があり、先を読む楽しさがある。

林氏がゲーム制作に興味を持ったのは、小学生の頃に『RPGツクール3』で遊んだことがきっかけだったという。大学卒業後はIT企業に就職し、約3年間勤務。その後、退職してから元同僚にアプリ開発を教わり、アプリ開発未経験の状態からUnityを独学で学び始めた。

こうして完成した初代『レベルス』を2016年にApp Storeで公開すると、SNSでの告知がApp Storeのエディトリアルチームの目に留まった。リリースから数日のうちに「新着一押しゲーム」として特集されたのだ。林氏は「SNSで一度告知しただけで、数日のうちにストアで取り上げられた。あの時掲載されていなければ現在の活動には至っていなかった」と振り返る。

広告宣伝に大きな費用をかけることが難しい個人開発者にとって、App Storeの編集チームによるキュレーションは、作品そのものを見つけてもらい、世界中のプレイヤーと出会う決定的なきっかけになった。この特集掲載を機に、作品が一気に世界中の目に触れ、37カ国・28言語への展開や、ビジネスとしての成長へと繋がる大きな転機となったのだ。林氏は、編集チームが自分たちの作品をきちんと見てくれていると感じられることや、直接やり取りできることにも感謝しているという。

App Storeでの認知を皮切りに、作品はほかのプラットフォームにも広がっていった。Nintendo Switch向けに『中毒パズル レベルス+』を発売し、累計販売本数は4万5,000本を超えた。「週刊ファミ通」のクロスレビューでも殿堂入りを果たし、スマートフォン向けに生まれた作品が家庭用ゲーム機でも多くのプレイヤーに遊ばれるようになった。

さらに2020年には、タイトーのアーケード向けコンテンツ配信システム「NESiCAxLive2」を通じて、対戦ゲーム『レベルスVS』が登場した。Nintendo Switch版をベースに、複数のプレイヤーが対戦できるルールを加えた作品だ。

稼働開始時期は新型コロナウイルスの感染拡大と重なり、ゲームセンターにとって厳しい状況が続いていた。それでも店舗スタッフやコアなファンが作品を盛り上げ、国内外の店舗で稼働。アメリカのラウンドワンにも設置され、熱心に遊び続けるプレイヤーが生まれた。

林氏は、ゲームを本当に好きな人たちに認めてもらえたことがうれしかったと話す。印象的だったのは告知をせずにモバイル版のVSモードを期間限定でテスト配信した際の出来事だ。アメリカのファンがすぐにテスト配信に気づき、「対戦版を動かしてくれてありがとう」と林氏に直接メッセージを送ってきたという。作品を長く追いかけ、モバイル版での展開を待ち望んでいたファンが海外にもいることを実感した出来事だった。

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初代のコードをゼロから刷新。ユーザーの声を取り入れた『レベルスII』

シリーズが広がる一方で、初代『レベルス』の開発環境には限界が近づいていた。最初の開発時点ではプログラミングの経験が乏しく、独学で覚えながら力づくでコードを書いていたという。

その後、Nintendo Switch版やアーケード版への対応を重ねるたびに機能を後付けしていった結果、コードは複雑化。新しいアイデアを試したり、細かな操作感を改善したりすることも難しくなっていった。

林氏は当時の状況について「もうコードも見たくない」と思うほどだったと振り返る。ストア側の技術要件に合わせたメンテナンスも負担になり、従来の構造を維持したまま開発を続けるのは難しい状態だった。

そこで2024年、林氏は初代のプログラムを流用せず、ゲームの仕組みをゼロから組み直した『レベルスII』へ移行した。初代アプリの配信を終了し、今後の機能追加やメンテナンスを見据えた新しい開発環境でシリーズを継続する道を選んだ。

ただし、作り直すにあたって過去の遊び方をすべて変えたわけではない。初代のランダムなパネル配置を好むプレイヤーの声を受け、その遊び方は「クラシックモード」として残した。さらに、Nintendo Switch版『中毒パズル レベルス+』で採用された「Plusルール」や、パネルを配置する盤面の大きさを4×4または6×6に変更できるモードなど、10年間で生まれた主要なシングルプレイモードを『レベルスII』に収録している。

一方で、プレイヤーから寄せられた意見を取り入れ、新しい遊び方も加えてきた。たとえば、パネルの出現に一定の法則性(敵を倒すと必ずお宝が出現するなど)を持たせたり、次に出現するパネルの色や数字を画面上に事前に表示する「次回予告」機能を用意したりすることで、先を読んで戦略を立てる楽しさを高めている。過去のルールを残すだけでなく、プレイヤーの声を参考にしながら遊びやすさやゲーム性を調整してきた。

歴代のシングルプレイモードは、現在の『レベルスII』でひと通り遊べるようになった。一方、シリーズのもうひとつの柱であるアーケード版『レベルスVS』の対戦ルールは、モバイル版への移植を実現したものの、正式な提供方法はまだ定まっていない。

林氏は対戦モードを届けたい意向を持っているが、サーバーの維持費や課金の仕組み、プレイヤー人口との兼ね合いなど、継続的な運営に向けた課題もある。現在はアプリ内で期間限定の「VSモード体験会」を実施し、プレイヤーの反応を確かめながら、どのような形で提供するのがよいかを模索しているとのことだ。なお、10月30日の「バージョン3.1.0」の配信に伴い、第2回VSモード体験会が開催中だ。

AIで個人開発の可能性が広がる一方、模倣への不安も

モバイル版でのVSモード

『レベルスII』の開発では、AIを活用したコーディングも大きな変化をもたらした。林氏はゲーム開発に使うUnityを使い、プログラミング言語のC#で『レベルスII』を開発している。近年はコーディングAIも取り入れ、実装方法の相談やコードの作成、動作確認などに活用しているという。

その効果が特に大きかったのが『レベルスVS』のネットワーク対戦機能をモバイル版へ移植する作業。アーケード版のネットワーク処理は、もともと外部の開発者に有償で依頼して実装したものだった。モバイル版への移植も技術的なハードルが高く、従来なら再び外部のエンジニアに依頼する必要があったという。

しかしコーディングAIと対話しながら実装方法を相談し、問題をひとつずつ解決していくことで、林氏自身が移植を進められるようになった。以前なら外部のエンジニアに依頼する必要があったネットワーク対戦機能の移植を、AIの力を借りながら自ら進められるようになった。

AIに任せられる作業が増えたことで、自らコードを書いたり、細かな実装を確認したりする時間は減った。その分ゲームデザインやバランス調整といった、本来注力したいクリエイティブな作業に時間を使えるようになったという。ただし、開発にかかる仕事そのものが減ったわけではない。実装の進め方が変わり、個人でも取り組める範囲が広がったというのが実感に近いようだ。

一方で、AIの進化には不安も感じているという。プログラミングの難度が下がれば、これまで開発に参入できなかった人たちもゲームを作れるようになり、競争はさらに激しくなる。さらに自分が時間をかけて作ったゲームの仕組みやアイデアが、AIによって簡単に模倣されたり、複製されたりするのではないかという懸念もある。開発のハードルが下がることは個人開発者にとって追い風になる一方、自分の作品をどう守るかという新たな課題にもつながっている。

10年間にわたって作品を育ててきた林氏が大切にしているのは、時代や端末が変わっても、ユーザーが作品にアクセスできる状態を残すこと。今後は折りたたみスマートフォンなど、新しい端末の形状に合わせた展開にも関心を寄せており、「時代や端末の環境が変化しても、手がけた作品にユーザーがいつでもアクセスして遊べる状態を残し続けたい」と語る。

スマートフォン向けの小さなパズルゲームから始まった『レベルス』は、家庭用ゲーム機やアーケードへと展開し、10年を経て再びひとつのアプリに集まりつつある。歴代のシングルプレイモードを収録した『レベルスII』に、今後はアーケード版の対戦モードも加わるのか。10年にわたって作品を遊んできたファンに向けて、林氏は新しい環境でも『レベルス』を届け続けようとしている。

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(画像提供:flow)

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