
レノボ・ジャパンは2月17日、東京で「Lenovo Tech World Japan 2026」を開催し、企業向けAIの最新動向をまとめた調査レポート「CIO Playbook 2026:エンタープライズAIを巡る競争」を公開した。
同レポートによれば、日本企業におけるAI導入(試験運用および組織的導入)は2025年の21%から、2026年には68%へ拡大する見通し。AI活用は実証段階から本格運用へと移行しつつあり、企業の競争力を左右する基盤技術として位置づけられ始めている。
投資対効果(ROI)の見通しも高い。日本企業は1ドルのAI投資に対して平均3.05ドルの収益を見込んでおり、アジア太平洋地域平均の2.85ドルを上回る水準だ。コスト削減にとどまらず、成長戦略の中核としてAIを捉える動きが広がっていることがうかがえる。


推論中心へ移るAI基盤、エッジ分散が鍵に

レノボは、AI市場の重心がクラウド上での「学習」から、現場でリアルタイムに処理する「推論」へ移行していくと予測する。2030年までにAIコンピューティングの75%が推論用途となり、多くの企業が分散型エッジインフラを前提とする環境へ移るという見立てだ。
この流れを見据え、同社は小型筐体にNVIDIA GB10を搭載したワークステーション「GaiXer ThinkStation(ThinkStation PGX)」を紹介した。1000TOPSの演算性能と大容量メモリを備え、2000億パラメータ規模のモデルにも対応可能とする。医療や製造、法務など、機密性が高く高度な推論処理を必要とする現場での活用を想定している。
実装事例として紹介されたのが藤田医科大学病院だ。院内に点在するカルテや手書き資料をAIで解析し、退院証明書の作成業務を自動化。導入から3カ月で医師や看護師の事務作業を年間約1,000時間削減する効果が見込まれているという。現場に設置できる高性能計算基盤が、業務プロセスそのものを変え始めている例といえる。


大規模なAI処理に伴う電力と発熱の課題に対しては、温水液冷技術「Neptune」を展開する。冷却効率を高めることで電力消費を抑えつつ、空冷方式と比べて高いパフォーマンスを引き出せるとする。コスト効率や持続可能性を重視する企業からの関心も高いという。
パーソナルAI「Qira」と広がるデバイス横断型体験

コンシューマーおよび業務デバイス領域では、AIエージェント「Qira(キラ)」を軸に据える。PCやスマートフォン、ウェアラブル機器を横断して動作し、利用状況に応じて最適なAIモデルを呼び出す役割を担う。
例えば、PC上で作成中の資料内容を踏まえて関連情報を提示したり、会議中の音声を要約して他デバイスに共有したりといった活用を想定する。個別のアプリに閉じない、デバイス横断型のAI体験を目指す構えだ。
あわせて、日本の大和研究所が開発する縦方向に画面が拡張するコンセプトモデル「ThinkPad Rollable XD」や、カメラとマイクを活用してリアルタイム翻訳やアクセシビリティ支援を行うウェアラブルAI「Project Maxwell」も紹介された。ハードウェア設計そのものをAI前提で再構築する試みといえる。



スポーツ分野では、FIFAの公式テクノロジーパートナーとして、2026年男子ワールドカップおよび2027年女子ワールドカップでのAI活用を支援する。3Dリアルタイム再構成技術によるVAR高度化や、審判用カメラ映像の補正、会場運営を最適化するデジタルツイン基盤などを展開する予定だ。
セキュリティと信頼性が導入拡大の前提に

一方、調査で日本企業のCIOが投資の最優先事項として挙げたのは「AIのセキュリティ、信頼性、透明性」に関する対策だった。
レノボは、デバイスからクラウドまでを保護するセキュリティ基盤「ThinkShield」や、データの国内管理を可能とするソブリンAI環境の提供を通じ、安全性を担保しながらAIを展開できる体制を整える方針を示した。
AIが実験段階を超え、本格的な業務基盤へと組み込まれる中で問われるのは、性能だけでなく運用と信頼性だ。今回のイベントでは、推論中心へと移るAI活用の潮流を見据え、インフラからデバイス、セキュリティまでを一体で提示した格好だ。




