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現地時間2月19日に、Appleはエントリー型iPhoneの最新モデル 「iPhone 16e」 を発表した。「iPhone SE (第3世代)」 および 「iPhone 14」 を置き換えるかたちで登場する。
これまでエントリーモデルとして販売されてきた 「iPhone SE」 は、現行ラインアップの中で唯一ホームボタンを搭載したiPhoneだった。しかし、今回登場したiPhone 16eがフルスクリーンデザインを採用したことに加えて、iPhone 16eの発表と同時にiPhone SE (第3世代)の販売が終了したことによって、長らく親しまれてきたホームボタンを搭載したiPhoneが、遂にラインナップから完全に姿を消すことになった。
Touch IDからFace IDへ。2度の大きな進化を経験したインターフェースが遂に終焉を迎える
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かつてiPhoneを操作するうえで欠かせなかった 「ホームボタン」 が、はじめて登場したのは2007年のこと。初代iPhoneのフロントディスプレイ下に搭載された丸いホームボタンは、押すだけでホームボタンに戻れるというシンプルな操作方法により、iPhoneの快進撃を支えた。現在の 「上スワイプでホーム画面に戻る」 動作を、まさに “物理的” に担ってきたボタンだ。
歴代のiPhoneでは、iPhone 3G〜iPhone 8/8 Plusまでのメインストリームで搭載されたほか、エントリークラスのiPhone SEでは第1世代/第2世代/第3世代の3モデルで搭載された。
また、搭載デバイスはiPhoneだけに留まらず、iPod touch、iPod nano (第7世代)、各iPadモデルでも採用されるように。
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2013年に発売した 「iPhone 5s」 では、指紋認証センサー 「Touch ID」 がホームボタンに一体化。さらに、2016年に発売した 「iPhone 7」 では感圧式のソリッドステートボタンになるなど、2度の大きな進化も経験してきた。
特にソリッドステートボタンは、ホームボタンの最大の懸念だった 「故障」 の可能性を大きく低減するのに役立った。その頃のiPhoneは、内蔵バッテリーの劣化よりもホームボタンの故障のほうが早いパターンも多く、ひとつの買い替え理由としても挙げられていた。
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そんなホームボタンも、主役の座から下ろされることになる。「iPhone X」 の登場だ。
2017年に発売した 「iPhone X」 は、世の中の製品の多くがベゼルレスデザインを採用するという大きな潮流のなかで生まれた製品で、10周年を記念し、ホームボタンを搭載する従来のデザインからベゼルレスとも呼ばれるフルスクリーン型デザインに舵を切ることに。同時に発売した 「iPhone 8/8 Plus」 は引き続きホームボタンを搭載したものの、翌年からはホームボタンを搭載したiPhoneが登場することはなかった。
いまでこそフルスクリーン型デザインが広く受け入れられるようになったものの、画面上部のノッチ (最新のiPhone 16/16 ProシリーズはDynamic Island) に対する拒否反応もそれなりにあったことから、フルスクリーンデザインをメインに据えてからも、依然としてホームボタン搭載モデルの需要は一定数あったものと予想される。
Face IDが主流になるが、指紋認証が再評価される瞬間も
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一方で、クラシックなホームボタンが役立つ場面もあった。それは新型コロナウイルス感染症の拡大によって、多くの人がマスクで顔を覆うようになり、Face IDでは一発で生体認証をパスできなかったことから、ホームボタン (Touch ID) を搭載するiPhoneを再評価する動きもあったのだ。
しかし、新型コロナもひと段落し日常生活が戻ってきたこと、そしてFace IDの改良によってマスクを装着していたとしても認証を突破しやすくなったことから、ホームボタン (Touch ID) の復活待望論は再び下火になっていく。そして、今回いよいよホームボタン (Touch ID) を搭載したiPhoneが完全になくなった。
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とはいえ、ホームボタンは終焉を迎えることになったが、指紋で認証をする 「Touch ID」 が完全に消えるわけではない。Appleは、現在もiPadシリーズではTouch IDを採用しており、Macのキーボードにも搭載されている。
また、過去にはディスプレイ内蔵型のTouch IDの開発が噂されたこともあり、何らかの形で復活する可能性もゼロではない。
しかし、iPhoneに関してはFace IDの精度が年々向上していることに加えて、ユーザーもFace IDでの生体認証に慣れていることから、Appleが今後Touch IDを復活させる可能性はおそらく低いだろう。
(画像:Apple)