3月18日、Appleは新型 「iPad Pro(2020)」 を突如として発表した。新型モデルは先代の 「iPad Pro (2018)」 からデザイン・サイズは大きく変わっていないものの、背面カメラやプロセッサのアップデートが大きな特徴となっている。
今回のアップデートにより、iPad Proはどのように変化したのか。当記事では、Apple公式サイトで公開されたスペックをもとに2020年モデルと2018年モデルを比較してみた。最新モデルの購入を検討している方はぜひ参考にしていただきたい。
デザイン
今回発表された新型iPad Pro(2020)の製品デザインは、2018年に発売したiPad Pro(2018)からほとんど変わっていない。画面縁の狭いベゼルレスデザインを引き続き採用し、Face IDによる顔認証機能が利用できる。
端末底部にはUSB-Cコネクタが搭載されており、最大30Wによる急速充電が利用可能。端末側面にはApple Pencilをペアリング・充電するための磁気コネクタが用意されている。背面にはSmart Connectorが搭載されており、iPad向けキーボード 「Smart Keyboard Folio」 や今回新たに発表された 「Magic Keyboard」 を接続して利用することが可能だ。
iPad Pro (2018) | iPad Pro(2020) | |
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ディスプレイ | Liquid Retina ディスプレイ 耐指紋性撥油コーティング フルラミネーションディスプレイ 反射防止コーティング 広域色ディスプレイ(P3) True Toneディスプレイ ProMotionテクノロジー |
Liquid Retina ディスプレイ 耐指紋性撥油コーティング フルラミネーションディスプレイ 反射防止コーティング 広域色ディスプレイ(P3) True Toneディスプレイ ProMotionテクノロジー |
ディスプレイサイズ | 11インチ/12.9インチ | 11インチ/12.9インチ |
解像度 | 11インチ:2,388 x 1,668ピクセル(264ppi) 12.9インチ:2,732 x 2,048ピクセル(264ppi) |
11インチ:2,388 x 1,668ピクセル(264ppi) 12.9インチ:2,732 x 2,048ピクセル(264ppi) |
センサー | Face ID 3軸ジャイロ 加速度センサー 環境光センサー 気圧計 |
Face ID LiDARスキャナ 3軸ジャイロ 加速度センサー 環境光センサー 気圧計 |
Apple Pencil | Apple Pencil (第2世代) | Apple Pencil (第2世代) |
スピーカー数 | 4 | 4 |
コネクタ | USB-C Smart Connector |
USB-C Smart Connector |
本体サイズ | 11インチ:247.6 × 178.5 × 5.9 mm 12.9インチ:280.6 × 214.9 × 5.9 mm |
11インチ:247.6 × 178.5 × 5.9 mm 12.9インチ:280.6 × 214.9 × 5.9 mm |
重量 | 11インチ Wi-Fiモデル:468g Wi-Fi + Cellularモデル:468g 12.9インチ Wi-Fiモデル:631g Wi-Fi + Cellularモデル:633g |
11インチ Wi-Fiモデル:468g Wi-Fi + Cellularモデル:468g 12.9インチ Wi-Fiモデル:631g Wi-Fi + Cellularモデル:633g |
カラー | シルバー スペースグレイ |
シルバー スペースグレイ |
最も大きな変化があったのは背面カメラで、シングルレンズからデュアルレンズにアップデートされている。また、深度検出能力を備えたLiDARスキャナも新たに搭載されたのだが、これらカメラ性能については別の項目で説明するため、ここでは見た目についてだけ述べさせていただきたい。
今回背面に搭載されたカメラユニットは、おそらく 「iPhone 11」 シリーズでも使われているものが一部流用されており、見た目はデュアルレンズカメラを搭載した 「iPhone 11」 にそっくり。デザインはそこまで悪いとは思われないが、以前よりもカメラの存在感が際立ってしまったことで違和感を感じるユーザーもいるかもしれない。
背面カメラ
iPad Pro(2020)の最も大きな進化した点は背面カメラにあると言っても過言ではないだろう。
iPad Pro(2020)には初のマルチカメラシステムが搭載された。搭載されているカメラは1,200万画素の広角レンズと1,000万画素の超広角レンズ。構成はiPhone 11にやや似ていて、iPhone 11 Proのように望遠レンズを利用することは残念ながらできない。
iPad Pro(2018) | iPad Pro(2020) | |
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背面カメラ レンズ構成 |
シングルレンズ ・広角:12M、f/1.8 |
デュアルレンズ ・広角:12M、f/1.8 ・超広角:10M、f/2.4、視野角125° |
背面カメラ 仕様 |
・5枚構成のレンズ ・デジタルズーム(最大5倍) ・クアッドLED True Toneフラッシュ ・Live Photos ・Focus Pixelsを使ったオートフォーカス ・パノラマ(最大63Mピクセル) ・サファイアクリスタル製レンズカバー |
・5枚構成のレンズ ・LiDARスキャナ搭載 ・光学ズーム(2倍) ・デジタルズーム(最大5倍) ・より明るいTrue Toneフラッシュ ・Live Photos ・Focus Pixelsを使ったオートフォーカス(広角のみ) ・ パノラマ(最大63Mピクセル) ・サファイアクリスタル製レンズカバー |
内向きカメラ レンズ構成 |
TrueDepthカメラ(シングルレンズ) ・7M、f/2.2 |
TrueDepthカメラ(シングルレンズ) ・7M、f/2.2 |
内向きカメラ 仕様 |
・ポートレートモード ・ポートレートライティング ・アニ文字とミー文字 ・Live Photos ・Retina Flash ・1080p HDビデオ撮影 ・スマートHDR ・自動手ぶれ補正 |
・ポートレートモード ・ポートレートライティング ・アニ文字とミー文字 ・Live Photos ・Retina Flash ・1080p HDビデオ撮影 ・スマートHDR ・自動手ぶれ補正 |
ただし、iPad Pro(2020)だけの機能も搭載されている。iPad Pro(2020)にはToF方式のLiDARスキャナーが搭載されていて、被写体までの距離や形状を正確に認識することが可能。この機能が搭載されたことで、カメラのボケ具合をより高い精度で、そしてより自然に表現できるようになる。
また、AR (拡張現実)のオブジェクトの認識精度が、より高度になることも予想される。iPhoneを含めたスマートフォンや一般的なタブレットでは利用できない同機能、iPad Proの魅力のひとつとなりそうだ。
LiDAR (Light Detection and Ranging) とは、発した光が反射して帰ってくるまでの時間を計測することでオブジェクトまでの距離や位置、形状を認識できる技術。
プロセッサ
iPad Pro(2020)に搭載されたプロセッサは、Appleが独自に開発した 「A12Z Bionic」 。実力は未知数ながら、iPad Pro(2018)に搭載されていた 「A12X Bionic」 プロセッサを改良したものになっていることから、少なくともシングルタスク・マルチタスクの両方で性能が向上していることが予想される。
iPad Pro(2018) | iPad Pro(2020) |
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A12X Bionic Neural Engine M12コプロセッサ |
A12Z Bionic Neural Engine M12コプロセッサ |
ちなみにAppleの発表によれば、「A12Z Bionic」 には8コアCPU・8コアGPU・Neural Engineが搭載されているとのこと。詳しい性能については、「A12Z Bionic」 のベンチマークスコアが出てきたら、この項目を追記したいと思う。
ストレージ
iPad Pro(2020)はストレージ容量に変更があった。
iPad Pro(2018)のストレージは64GB/256GB/512GB/1TBのラインナップだったが、iPad Pro(2020)のストレージは128GB/256GB/512GB/1TBのラインナップに。つまり、新型モデルは最低ストレージ容量が64GBから128GBに増えたことになる。最少ストレージ容量モデルを購入する派の方にとっては地味に嬉しいアップデートのはずだ。
iPad Pro(2018) | iPad Pro(2020) |
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64GB / 256GB / 512GB / 1TB | 128GB / 256GB / 512GB / 1TB |
バッテリー持ち
iPad Pro(2020)のバッテリー持ちは、先代のiPad Pro(2018)と変わらず。11インチモデル、12.9インチモデルともに最大10時間(セルラー通信時は最大9時間)。内蔵するバッテリー容量に違いはあるものの、実際の駆動時間については両モデルとも変更なしだ。
ちなみに、iPad Proは最大30Wの急速充電(USB-PD)に対応する。購入時に付属してくるUSB-C電源アダプタは18Wだが、30W以上の出力が可能な電源アダプタと接続することで利用することが可能だ。
iPad Pro(2018) | iPad Pro(2020) | |||
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11インチ | 12.9インチ | 11インチ | 12.9インチ | |
バッテリー容量 | 29.37Wh | 36.71Wh | 28.65Wh | 36.71Wh |
バッテリー持ち | ビデオ/オーディオ再生:最大10時間 インターネット(Wi-Fi):最大10時間 インターネット(4G LTE):最大9時間 |
ビデオ/オーディオ再生:最大10時間 インターネット(Wi-Fi):最大10時間 インターネット(4G LTE):最大9時間 |
Wi-Fi / ネットワーク
iPad ProのWi-Fiおよびネットワークの仕様について解説しておきたい。まずはWi-Fiの仕様についてだが、今回の新型モデルから次世代の通信規格 「Wi-Fi 6 (802.11ax)」 に初めて対応した。
iPad Pro(2018) | iPad Pro(2020) |
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Wi-Fi 802.11a/b/g/n/ac 同時デュアルバンド(2.4GHz/5GHz) MIMO対応 |
Wi-Fi 802.11a/b/g/n/ac/ax 同時デュアルバンド(2.4GHz/5GHz) MIMO対応 |
Wi-Fi 6は前規格Wi-Fi 5(802.11ac)から通信速度スループットが改善され、データ転送速度が30%向上、レイテンシは1/4となり、実質4倍以上のスピードで通信できる規格となる。また、2.4GHz帯の通信を利用できるため、障害物があっても電波が届きやすくなるなどのメリットがある。
もちろん、Wi-Fi 6を利用するには自宅の無線ルーターが同規格に対応している必要があるが、今後は同規格がスタンダードになってくるため、iPad ProがWi-Fi 6に対応することは地味ながら重要なアップデートだ。
セルラー通信については4G/LTE通信に対応し、5G(第5世代移動通信システム)には対応しなかった。よって、セルラー通信については先代モデルから変わらずなので割愛させていただく。
Magic Keyboard&Smart Keyboard Folioへの対応
今回、AppleはiPad Pro(2020)の発表とともに、iPad Pro向けのMagic Keyboardおよび新型Smart Keyboard Folioを発表した。
Magic Keyboardはトラックパッドとバックライト付きシザー構造キーボードが内蔵された外付けキーボード。トラックパッドが新たに利用できるようになったことで、PC・MacライクにiPad Proを操作することが可能。また、キーボードの下にバックライトが内蔵されたことで暗所でも安定してタイプできるようになった。
このMagic Keyboardは、iPad Pro(2020)、iPad Pro(2018)のどちらでも利用可能。つまり、Magic Keyboard使いたさにiPad Pro 2018からiPad Pro 2020に買い換える必要はないというわけだ。
Magic Keyboardは、iPad Proのスマートコネクター経由で電力供給が可能なため、iPad ProのUSB-Cポートを埋めることなく利用できるというメリットもある。また、Magic Keyboardを所定の位置に置いておけば、iPad Proを置くだけで充電できるスタンドとしても機能させられる。これだけでもMagic Keyboardを購入する理由になりそうだ。
ちなみに、Smart Keyboard FolioについてもiPad Pro(2020)向けに新型モデルが発表されている。とは言っても、新しいSmart Keyboard FolioはiPad Pro(2020)のカメラに合わせて穴の位置や大きさを変更した程度。Smart Keyboard Folioの性能自体は特に進化していないため、iPad Proの買い替え材料にはならないだろう。
11インチ/12.9インチのどっちを買うべき?
ここまでiPad Pro(2020)とiPad Pro(2018)を比較してきたが、多くのユーザーが悩むのは11インチモデルと12.9インチモデルのどちらを買うべきなのかということ。
これについてはあくまで個人的主観の話になりそうだが、筆者の意見としては “大画面で映像を見たり、大きなキャンバスで絵を描くために購入するのであれば12.9インチモデルを選ぶべき” であるということ。反してこういった作業をする機会が少なく、”外に持ち出したり自宅で持ち運んだりを想定しているのであれば11インチモデルがオススメ” だ。
筆者は11インチモデルを愛用している。筆者は自宅やオフィス外で活動する機会が多くあり、移動も意外と多いためコンパクトなモデルの方が使いやすい。Apple Pencilを使って絵を描いたりマークアップをする機会もあるが、正直11インチの画面で不足を感じたことはないため、筆者のような使い方を前提としているのであれば11インチモデルを購入してみてはどうだろうか。
iPad Proは11インチモデルが84,800円から、12.9インチモデルが104,800円から購入可能だ (いずれも税別) 。注文はApple公式サイトから可能。発売は3月25日(水)を予定している。