Appleは5月15日、次世代SoC 「M4」 を搭載した新型11インチ/13インチiPad Proを発売した。
今回筆者は11インチの 「iPad Pro (M4)」 を購入しており、ベンチマークソフト 「Geekbench 6」 でM4チップのベンチマークスコアを計測してみた。同時に発売した 「iPad Air (M2)」 や、過去に発売したM2/M1チップを搭載したiPad Proともスコアを比較してみたので、M4チップがどれほどの性能なのか、気になっている方はチェックいただきたい。
M4チップとは?
Appleの 「M4」 は、第2世代の3nmテクノロジーを使って設計され、280億個のトランジスタで構成された最新SoC。
2つのOLED発光層を積層して作られた、iPad Proの最先端ディスプレイ 「Ultra Retina XDRディスプレイ」 の精度や色精度、輝度の均一性を可能にするため、新しいディスプレイエンジンを搭載しているのが大きな特長だ。
CPUは、256GB/512GBモデルは3つの高性能コアと6つの高効率コアを搭載した9コア構成、1TB/2TBモデルは4つの高性能コアと6つの高効率コアを搭載した10コア構成。
改善された分岐予測機能を備え、高性能コアにはより幅広いデコードエンジンと実行エンジンを搭載し、高効率コアにはより深い実行エンジンを搭載したという。CPUパフォーマンスは前世代のiPad Pro (M2) よりも最大1.5倍高速化している。
GPUは10コア構成で、M3ファミリーの次世代グラフィックスアーキテクチャをもとに設計された。
ハードウェアのローカルメモリをリアルタイムで動的に割り当て、GPUの平均使用率を劇的に高める 「Dynamic Caching」 を備えたことで、負荷の高いプロ向けアプリやゲームのパフォーマンスが大幅に向上。その結果、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングがiPadで初めて利用可能になり、ゲームなどでさらにリアルな陰影と反射を表現できるようになった。
さらに 「ハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディング」 も組み込まれており、ジオメトリ処理の能力と効率を高め、ゲームやグラフィックスを駆使するアプリでさらに視覚的に複雑なシーンを可能にしているという。Octaneなどのアプリでのプロ向けのレンダリングパフォーマンスは大幅に向上し、M2よりも最大4倍高速になった。
M4チップのベンチマークスコアまとめ
今回実機が用意できたのは以下モデル。参考として、iPad Air (M2) も用意した。
- 11インチiPad Pro (M4):256GBモデル/モデル名:iPad16.3
- 11インチiPad Pro (M4):1TBモデル/モデル名:iPad16.3
- 11インチiPad Air (M2):128GBモデル/モデル名:iPad14.8
CPU性能
まずは 「Geekbench 6」 でCPUのシングルコア/マルチコアスコアを計測した。比較対象として、M2/M1を搭載したiPad Proや、Mシリーズのチップを搭載した過去のMacのスコアも掲載しておく。
製品名 | SoC | コア構成 | シングルコア | マルチコア |
---|---|---|---|---|
iPad Pro (11-inch, M4, 1TB) |
M4 | 合計10コア ・高性能x4 ・高効率x6 |
3707 | 14418 |
iPad Pro (11-inch, M4, 256GB) |
M4 | 合計9コア ・高性能x3 ・高効率x6 |
3634 | 12978 |
MacBook Pro (16-inch, M3 Max) |
M3 Max | 合計16コア ・高性能x12 ・高効率x4 |
3218 | 21398 |
合計14コア ・高性能x10 ・高効率x4 |
3079 | 19057 | ||
MacBook Pro (16-inch, M3 Pro) |
M3 Pro | 合計12コア ・高性能x6 ・高効率x6 |
3121 | 15686 |
MacBook Pro (14-inch, M3 Max) |
M3 Max | 合計16コア ・高性能x12 ・高効率x4 |
3101 | 21067 |
合計14コア ・高性能x10 ・高効率x4 |
3021 | 15686 | ||
MacBook Pro (14-inch, M3 Pro) |
M3 Pro | 合計12コア ・高性能x6 ・高効率x6 |
3167 | 15524 |
合計11コア ・高性能x5 ・高効率x6 |
3138 | 14369 | ||
MacBook Pro (14-inch, M3) |
M3 | 合計8コア ・高性能x4 ・高効率x4 |
3127 | 12148 |
MacBook Air (13-inch, M3) |
M3 | 合計8コア ・高性能x4 ・高効率x4 |
3066 | 11927 |
Mac Studio (M2 Ultra) |
M2 Ultra | 合計24コア ・高性能x16 ・高効率x8 |
2688 | 20970 |
MacBook Pro (14-inch, M2 Max) |
M2 Max | 合計12コア ・高性能x8 ・高効率x4 |
2692 | 14918 |
MacBook Pro (14-inch, M2 Pro) |
M2 Pro | 合計12コア ・高性能x8 ・高効率x4 |
2586 | 14235 |
合計10コア ・高性能x6 ・高効率x4 |
2661 | 11849 | ||
MacBook Air (13-inch, M2) |
M2 | 合計8コア ・高性能x4 ・高効率x4 |
2571 | 9876 |
iPad Pro (11-inch, M2) |
M2 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2621 | 10091 |
iPad Air (11-inch, M2) |
M2 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2611 | 9985 |
Mac Studio (M1 Ultra) |
M1 Ultra | 合計20コア ・高性能x16 ・高効率x4 |
2430 | 18566 |
Mac Studio (M1 Max) |
M1 Max | 合計10コア ・高性能x8 ・高効率x2 |
2456 | 12959 |
MacBook Pro (16-inch, M1 Pro) |
M1 Pro | 合計10コア ・高性能x8 ・高効率x2 |
2399 | 12334 |
MacBook Pro (14-inch, M1 Pro) |
M1 Pro | 合計8コア ・高性能x6 ・高効率x2 |
2398 | 10585 |
MacBook Air (13-inch, M1) |
M1 | 合計8コア ・高性能x4 ・高効率x4 |
2383 | 8724 |
iPad Pro (11-inch, M1) |
M1 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2364 | 8686 |
iPad Air (11-inch, M1) |
M1 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2317 | 8460 |
iPad mini (第6世代) |
A15 Bionic | 合計6コア ・高性能×2 ・高効率×4 |
2138 | 5262 |
上記結果から、M4はM2に比べてシングルコアスコアが最大41%、マルチコアスコアが最大43%向上していることがわかる。M1と比べると、シングルコアスコアは最大57%、マルチコアスコアは最大66%向上している。
参考としてM3と性能を比べてみると、シングルコアスコアは最大21%、マルチコアスコアは最大21%向上している。
ちなみに、M4 (高性能×4、高効率×6) とM3 Pro (高性能×6、高効率×6) で比較してみると、コア数はM3 Proの方が多いものの、シングルコアスコアはM4の方が高く、マルチコアスコアもM3 Proの方がわずかに高いだけだとなったことから、M4はM3 Proと性能が同等、あるいはそれよりも高いということができるかもしれない。
M3 Maxと比較すると、さすがにM3 Maxの方がマルチコアスコアが約25〜31%高いという結果になった。
以上の結果をまとめると、M4のCPU性能はM3 Proとほぼ同じくらいであることがわかった。
以下は、iPadのみを比較した表だ。世代間のスコアを比較したい場合は以下の表を参考にしていただきたい。
製品名 | SoC | コア構成 | シングルコア | マルチコア |
---|---|---|---|---|
iPad Pro (11-inch, M4, 1TB) |
M4 | 合計10コア ・高性能x4 ・高効率x6 |
3707 | 14418 |
iPad Pro (11-inch, M4, 256GB) |
M4 | 合計9コア ・高性能x3 ・高効率x6 |
3634 | 12978 |
iPad Pro (11-inch, M2) |
M2 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2621 | 10091 |
iPad Air (11-inch, M2) |
M2 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2611 | 9985 |
iPad Pro (11-inch, M1) |
M1 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2364 | 8686 |
iPad Air (11-inch, M1) |
M1 | 合計8コア ・高性能×4 ・高効率×4 |
2317 | 8460 |
iPad mini (第6世代) |
A15 Bionic | 合計6コア ・高性能×2 ・高効率×4 |
2138 | 5262 |
GPU性能
次はGPU性能をチェックすべく、Geekbench 6のMetalスコアを計測した。こちらもCPU性能と同様、比較対象としてM2/M1を搭載したiPad Proや、Mシリーズのチップを搭載した過去のMacのスコアも掲載しておく。
製品名 | SoC | コア構成 | OpenCL | Metal |
---|---|---|---|---|
iPad Pro (11-inch, M4) |
M4 | 10コア | — | 53594 |
MacBook Pro (16-inch, M3 Max) |
M3 Max | 40コア | 91071 | 154764 |
30コア | 76577 | 125046 | ||
MacBook Pro (16-inch, M3 Pro) |
M3 Pro | 18コア | 50299 | 77739 |
MacBook Pro (14-inch, M3 Max) |
M3 Max | 40コア | 92159 | 152579 |
30コア | 76915 | 124177 | ||
MacBook Pro (14-inch, M3 Pro) |
M3 Pro | 18コア | 50299 | 77739 |
14コア | 42773 | 68579 | ||
MacBook Pro (14-inch, M3) |
M3 | 10コア | 30332 | 47392 |
Mac Studio (M2 Ultra) |
M2 Ultra | 76コア | 128858 | 218367 |
60コア | 114679 | 199183 | ||
MacBook Pro (14-inch, M2 Max) |
M2 Max | 38コア | 83221 | 140362 |
30コア | 75786 | 120781 | ||
MacBook Pro (14-inch, M2 Pro) |
M2 Pro | 19コア | 51835 | 82754 |
16コア | 45723 | 74656 | ||
MacBook Air (13-inch, M2) |
M2 | 10コア | 28669 | 46140 |
8コア | 24114 | 39381 | ||
iPad Pro (11-inch, M2) |
M2 | 10コア | — | 46545 |
iPad Air (11-inch, M2) |
M2 | 10コア | — | 41745 |
Mac Studio (M1 Ultra) |
M1 Ultra | 64コア | 104687 | 170072 |
48コア | 89569 | 153801 | ||
MacBook Pro (14-inch, M1 Max) |
M1 Max | 32コア | 69552 | 117211 |
24コア | 59779 | 99774 | ||
MacBook Pro (14-inch, M1 Pro) |
M1 Pro | 16コア | 41668 | 64524 |
14コア | 38352 | 62842 | ||
MacBook Air (13-inch, M1) |
M1 | 8コア | 21068 | 33318 |
7コア | 18760 | 30652 | ||
iPad Pro (11-inch, M1) |
M1 | 8コア | — | 32648 |
iPad Air (11-inch, M1) |
M1 | 8コア | — | 32621 |
iPad mini (第6世代) |
A15 Bionic | 5コア | — | 19529 |
上記結果から、M4はM2に比べてMetalスコアが約28%向上していることがわかった。M1と比べると、スコアは約64%向上している。
参考としてM3チップを搭載したMacBook Airと比べてみたところ、スコアが約14%向上していることが確認できた。
ちなみに、コア数が多いM3 Pro (14コア) とM4 (10コア) のスコアを比較してみたが、やはりM3 Proの方が約28%高いという結果になった。以上の結果からM4は、M3とM3 Proのちょうど中間くらいのGPU性能を持っていることがわかった。
以下は、iPadのみを比較した表だ。世代間のスコアを比較したい場合は以下の表を参考にしていただきたい。
製品名 | SoC | コア構成 | Metal |
---|---|---|---|
iPad Pro (11-inch, M4) |
M4 | 10コア | 53594 |
iPad Pro (11-inch, M2) |
M2 | 10コア | 46545 |
iPad Air (11-inch, M2) |
M2 | 10コア | 41745 |
iPad Pro (11-inch, M1) |
M1 | 8コア | 32648 |
iPad Air (11-inch, M1) |
M1 | 8コア | 32621 |
iPad mini (第6世代) |
A15 Bionic | 5コア | 19529 |
NPUの演算性能 (AI性能)
機械学習アプリケーションのパフォーマンスをどれぐらい発揮できるかを測定する 「Geekbench ML」 のスコアも計測してみた。この数値が高ければ高いほど、AI性能が高いことを示す。結果は以下のとおり。
製品名 | SoC | CPU/GPU/NPUコア数 | 演算性能 | Core ML CPUスコア | Core ML GPUスコア | Neural Engineスコア |
---|---|---|---|---|---|---|
iPad Pro (M4) | M4 | 10基/10基/16基 | 38TOPS | 4732 | 6821 | 8686 |
9基/10基/16基 | 4677 | 6737 | 9351 | |||
MacBook Air (M3) | M3 | 8基/8基/16基 | 18TOPS | 4291 | 5731 | 8269 |
iPad Pro (M2) | M2 | 8基/10基/16基 | 15.8TOPS | 3448 | 5179 | 7299 |
iPad Air (M2) | M2 | 8基/10基/16基 | 15.8TOPS | 3498 | 4679 | 6918 |
iPad Pro (M1) | M1 | 8基/8基/16基 | 11TOPS | 3015 | 3322 | 6789 |
iPad Air (M1) | M1 | 8基/8基/16基 | 11TOPS | 1949 | 3344 | 6206 |
AppleはM3ファミリーの発表の際に、Neural Engineの性能がM1→M2→M3と向上していることについて触れており、さらにM4の発表時には、Apple史上最もパワフルな毎秒38兆回の演算処理ができるNeural Engineを搭載していると発表していた。
上記の結果を確認する限り、各スコアはチップの世代が変わるごとに向上していることから、やはりAppleの発表どおり、Neural Engineの性能は徐々に向上しているようだ。
ただし、今回の11インチiPad Pro (M4) の1TBモデルに関しては、256GBモデルに比べてスコアが低くなってしまった。この理由は不明だが、もしかするとソフトウェアの最適化などがまだ果たされていないのかもしれない。機会があったらまたいつかのタイミングで計測し直してみたい。
(画像:Apple)