昨日、TF International Securitiesの著名アナリストMing-Chi Kuo氏が、今後のAppleの新製品を予想したレポートを公開した。
同レポートの中には新型iPad Proに関する情報が含まれていたが、この新型iPad Pro、なんとLightningポートが廃止されて代わりにUSB-Cポートが搭載されるという。
これは結構衝撃的だ。なぜなら、Appleは新機能を搭載する時、多くはiPhoneシリーズで先行実装し、その後受け入れられた新機能をiPadシリーズにもたらすという流れがとても多かったからだ。
実際、最近では当たり前となったLightningも「iPhone 5」で初めて採用され、その後に「iPad(第4世代)/iPad mini」に搭載された。「Touch ID」なども同様。
もちろん、これまでの例ではその逆もあった。だが、新型iPhoneと新型iPadを同時もしくは1ヶ月違いで発表する上で、新型iPad ProだけにUSB-Cポートが搭載されるというのはやや違和感がある話。
これまでの噂的にも、Appleは新型iPhoneにUSB-Cポートを搭載する可能性は低いとされてきた。そのため筆者としても、次に発表されるiPad Proもこれまで同様にLightning端子が搭載されるものと思っていたからだ。
しかし、あのMing-Chi Kuo氏が言うのだから、きっと何かしらの根拠があるに違いない。AppleがUSB-CをiPad Proに搭載しようとしているのは本当なんじゃないだろうか。
メリット①充電速度が向上する可能性
USB-CポートがiPad Proに搭載されることでユーザが得られるメリットは意外と多い。
まずは、iPadの充電速度が速くなる可能性があるということ。USB-Cポートが搭載されるということは、USB-PDに対応した充電器とケーブルを使用すればiPadを急速充電できるようになる可能性が高い。
最大で何W(ワット)まで対応するのかは不明だが、Appleが開発していると噂の純正USB-C充電器は最大出力18W。もしも、この充電器が同梱されたなら、これまでiPadに付属してきた純正充電器は最大12Wでの充電しかできなかったため、単純計算で1.5倍の速度で充電できる可能性がある。
メリット②データ転送が速くなるかも
また、ユーザーにとって案外恩恵が大きいのはデータ転送速度が向上することだろう。USB-C to Cケーブルが利用できるようになれば、最大で10Gbps(理論値)のデータ転送が利用することができるかもしれない。
これはあくまでUSB 3.1 Gen2規格を採用した時の話で、Appleがこの規格を採用するかは分からない。ただ、現状のLightningではUSB 2.0程度(理論値480Mbps)のデータ転送しか利用することができないのでデータ転送速度が向上する可能性は十分にありだ。
これが実現すれば、iTunesとの同期も高速になるかも(少しというかかなり時代遅れな話なので、書いていて少し残念な気持ちになっているが)。
ちなみに、「USB-C – Lightningケーブル」やMacBook Proに付属してくる「USB-C充電ケーブル」は最大480Mbpsの転送しか対応していないので、Appleの純正品で最大10Gbpsのデータ転送を利用するには「Thunderbolt 3(USB-C)ケーブル (0.8 m)」を別途購入する必要がある。
メリット③将来はiPhone、iPad、Macをすべて1本のケーブルで管理できるように
もし仮にiPad ProにUSB-Cポートが搭載されたら、確実にケーブル周りがシンプルになる。
MacはすでにUSB-Cを採用しているため、Macから1本のケーブルでiPadを充電・同期することが可能になる。さらに、USB-CポートがiPhoneにも搭載したら、すべてのデバイスをUSB-C to Cケーブルだけで接続できるように。
これまではMacとiPhoneを接続するには変換アダプタが必要だったが、正直不便極まりない。Appleもこの面倒臭さの解消は前向きに検討しているはず。将来的にはiPhoneやiPad、Macを一本のケーブルで管理できるようになるだろうが、その足がかりとしてまずはiPadから、というのが今回の狙いなのかもしれない。
今のApple Pencilのままだと充電ができなくなるなどデメリットも
LightningポートがUSB-Cポートに置き換わることで、ザッと上記のようなメリットはあるが、だがよくよく考えてみてほしい。Lightningポートが廃止されUSB-Cになることで、いくつか問題点も発生してくる。
例えば、最大充電速度は今とさほど変わらない可能性があるということ。Appleの開発しているUSB-C充電器は18W出力と言われているが、MacBookに付属してくる29W充電器に「USB-C – Lightningケーブル」を挿すと急速充電できるのは皆さんご存知の通り。
バッテリー残量にもよるが20W以上の出力で充電できる。これはiPhoneにもすでに実装されている(iPhoneの場合は少し出力が弱い)機能であるため、充電速度を早くするためだけにLightningを廃止するわけではなさそうだ。
また、重大な問題があることにお気づきだろうか。それはApple Pencilを充電できなくなってしまうということ。
Apple PencilはLightningコネクタを搭載しており、直にiPadに接続して充電・ペアリングすることが可能だが、USB-Cポートが搭載された途端、これは叶わなくなる。これまでLightningポートにApple Pencilが挿さっている様がカッコ悪いと言われていたが、充電できなくなると分かった途端になんだか不安になってくるではないか。
もし、Kuo氏のいう通りUSB-Cを搭載したとして、この問題を解決するにはLightningとUSB-Cを変換できるドングルが必要になる。また、新しいドングルか…。AppleはMacBook Pro(2016)にUSB-Cを載せた時、レガシーコネクタをUSB-Cに変換するためのドングルを販売したが、これと同じことを再びする予定なのだろうか。
ちなみに、Apple Pencilは購入時にLightningのオス端子同士を繋げる「Lightningアダプタ」が付属してくるが、これを「USB-C(メス) to Lightning(メス)アダプタ」に変えることで、この問題は解決できないこともない。
でも、これをしたところでiPadでApple Pencilを直接充電できなくなるのは変わりない。外でApple Pencilを使うには、新しいアダプタが必須になりそうな予感。
さらに上の考えとして、USB-Cを搭載した新型Apple Pencilが登場することも想定できる。ただし、Apple Pencilの幅は約8.5mmで、USB-Cコネクタの幅は約8mm。あの細いデバイスにUSB-Cコネクタを搭載するにはかなりギリギリだが、Appleはこれを乗り越えるつもりなのだろうか。
ちなみに、リークされた新型iPad Proのレンダリング画像にはサイドに謎のコネクタが用意されていた。もしかしてこのコネクタは新型Apple Pencilを充電するためのものなのだろうか。いや流石に考えすぎだろうか。
いずれにしても、Appleが何か突拍子もないことをしたとしても筆者は決して驚きはしない。今までもたくさんのサプライズをもたらしてきた会社だ。
しかし、これらの問題を考えるとUSB-Cポートを新型iPad Proに載せるというのは何の考えなしにできることではないだろう。もしかするとウルトラC的な何かを用意している可能性もあるものの、しかしiPhoneではなくiPadだけに載せることをAppleは良しとするだろうか。的中率の高いMing-Chi Kuo氏の予想だが今回ばかりは筆者もやや懐疑的だ。
この記事を読んだあなたは一体どう思うだろうか。やはりKuo氏の言う通りUSB-Cポートが搭載すると思うだろうか。ぜひご意見を聞かせてほしい。
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