今年6月、Amazonの 「Fireタブレット」 シリーズに、待望のスタイラスペン対応モデルが登場した。その名も 「Fire Max 11」 。
Fireタブレットシリーズの中では最上位モデルにあたる製品で、11インチの大型ディスプレイや高性能なオクタコアプロセッサなどを搭載。スタイラスペンを使えば手書きのメモを取ったり、お絵描きなどもすることができる。
今回、アマゾンジャパンから 「Fire Max 11」 の実機をお借りし、じっくりと使ってみることができたので、詳しい仕様や使い勝手についてレビューをお届けする。
11インチの大きな画面が搭載、指紋認証にも対応
Fireタブレットシリーズには、これまでエントリーモデルの 「Fire 7」 、中間モデルの 「Fire HD 8」 、上位モデルの 「Fire HD 10」 の3モデルがラインナップされてきたが、今回の 「Fire Max 11」 は「Fire HD 10」 よりもさらに上のグレードの最上位モデルにあたる製品だ。
名前のとおり、11インチの画面を搭載。解像度は2000×1200ピクセル (213ppi) で、これまでのFireタブレットシリーズよりもクッキリと鮮やかな画面でコンテンツを映し出す。ベッドに寝転びながらPrime Videoのコンテンツを見るときにも、大満足の画質で楽しむことができる。
画面のベゼルは約1cmとFireタブレットシリーズのなかでもっとも狭くなっていて、広々と画面を使うことができる。
Fire 7 | Fire HD 8/8 Plus | Fire HD 10 | Fire Max 11 | |
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本体サイズ | 181 x 118 x 9.7 mm | 201.9 x 137.3 x 9.6mm | 246 x 164.8 x 8.6mm | 259.1 x 163.7 x 7.50mm |
画面 | 7インチ液晶 | 8インチ液晶 | 10.1インチ液晶 | 11インチ液晶 |
解像度 | 1024 x 600 (171ppi) | 1280 x 800 (189ppi) | 1920 x 1200 (224ppi) | 2000 x 1200 (213ppi) |
Fire HD 8以上の大画面モデルは 「Showモード」 に対応しており、スマートディスプレイとして使うことができる。もちろんFire Max 11もShowモードが利用可能で、画面上部から設定画面をスワイプし、Showモードを選択することで切り替えが可能だ。
ビデオ通話などに使うフロントカメラは、本体を横向きに持ったときに正面上に来るように配置されている。画素数は8MPで、1080pのHD解像度でビデオ通話をすることができる。
ひっくり返して本体背面へ。筐体には耐久性が高くて軽く、おまけに触り心地も良いアルミニウムが使用されている。公式発表によると、落下テストでの耐久性は10.9インチiPad (第10世代) の3倍もあるのだとか。うっかり机から落としてしまったとしても安心だ。
本体重量は490g。ほぼ中身入りの500mlペットボトルと同じくらいの重さで、他のFireタブレットシリーズに比べると少し重め。ただし本体の厚みは7.5mmと薄く、リュックやカバンにも収納しやすいので、ノートPCよりは持ち運びやすい印象だ。
リアカメラもフロントカメラと同様、8MPのシングルカメラが搭載。オートフォーカスにも対応する。昨今のハイエンドスマートフォンほど画質は良くないため、基本的には記録用カメラとして使う程度にはなると思うが、一応撮影できるということは覚えておこう。
本体側面には、電源ボタンや音量ボタン、microSDカードスロット、本体充電用のUSB Type-Cポートが搭載されている。
注目していただきたいのが、電源ボタンが指紋認証に対応したこと。わざわざパスコードを入力しなくても、電源ボタンに指を当てるだけでロックを解除できるようになった。
microSDカードは最大1TBまで対応する。KindleコンテンツをmicroSDカードにダウンロードしたい場合は、設定でmicroSDカードの用途について 「外部ストレージとして使用する」 を選択していただきたい。
本体上部にはデュアルスピーカーが搭載。ドルビーアトモスに対応しているため、広がりのある音でコンテンツを楽しめる。
ヘッドホンやイヤホンを使いたい場合は、Bluetooth経由でのワイヤレス接続がもっとも便利。コーデックはAACとSBCのほか、LDACにも対応しているため、対応するワイヤレスヘッドホン・イヤホンがあるなら高音質を楽しむことができる。
有線のヘッドホン・イヤホンを使いたい場合は、本体のUSB Type-CポートにUSB-C – 3.5mm変換プラグを挿して、変換プラグ経由でヘッドホン・イヤホンを繋げばOKだ。
Fire Max 11の同梱物は、USB Type-C (2.0) ケーブル、9W電源アダプタ、SDカード取り出しピンの3つ。スタイラスペンとキーボード付きカバーは別売になるため、必要な人は別途購入していただきたい。
内蔵チップの処理性能が大幅アップ
Fire Max 11は、内蔵チップとして8コアプロセッサ 2x Arm Cortex-A78 (最大 2.2GHz) 、6x Arm Cortex A55 (最大 2GHz) を搭載し、4GBのRAMを搭載している。
Fire HD 10 (第11世代) は、Twitterなど重めのWebページなどを閲覧すると動作がカクつくことがあったが、Fire Max 11では動作のカクつきを感じることはほぼなく、とても快適に作業できている。
アプリを2つ並べて作業できる 「画面分割モード」 使用時にも、左右どちらのアプリも快適に動作していて、不満を感じることはなかった。とにかく処理性能が高いFireタブレットが欲しいなら、Fire Max 11一択になるだろう。
キーボード付きカバーでビジネス用途にもオススメ
Fire Max 11には、専用のマグネット式キーボード付きカバーが用意されていて、接続することでノートPCライクに使うことができる。
カバーは本体背面に装着する上半分とキーボードが搭載されている下半分に分かれており、上半分の裏側を折り曲げてスタンドにすることでFire Max 11を立たせ、下半分のキーボードをFire Max 11の下部に装着して使用する。
従来までのFireタブレットシリーズのキーボードはBluetoothで接続する仕様だったが、今回のFire Max 11用のキーボードは専用端子での直繋ぎになるため、接続がうまくいかなかったり、入力遅延などに悩まされることがなくなった。
また、キーボードはFire Max 11から直接給電されて動作する仕組みなので、別途充電する必要はなし。キーボード上部のポコっとしている部分にはUSB Type-Cポートも搭載されていて、Fire Max 11とキーボード付きカバーを接続している状態でも本体の充電が可能だ。
キーボードは日本語配列で、2つのカスタマイズ可能なショートカットキーとプログラムされた15個のショートカットキーが搭載されていて、便利に作業することができる。キーボード下にはトラックパッドも搭載されており、カーソルを動かしての操作が可能だ。
実際にキーボードを使ってみたところ、程よいクリック感でタイピングしやすい印象を受けた。メール返信など文字入力をする機会が多い人は、買っておいて損はないかもしれない。
シリーズ初のスタイラスペンに対応
本製品の最も重要な特徴が、Fireタブレットシリーズとして初めてUSI 2.0に対応したスタイラスペン (別売) が使えるようになったことだ。
アプリをタッチして起動したり、画面をスワイプするなど本体の操作はもちろん、メモアプリで手書きメモを取ったり、メディバンペイントでイラストを描くことも可能。タッチ操作だけでは実現できなかった作業ができるようになったことで、作業内容の幅が大きく広がった。
スタイラスペンは45度までの傾き検知に対応するほか、4096段階の筆圧感知にも対応する。ペン先のホバー表示も利用可能だ。
スタイラスペンの側面にはボタンが搭載されていて、このボタンを押しながら文字をタップすると文字を消すことができる機能も用意されている。
実際に画面に書き込んでみると、書き心地は比較的滑らかで、イラスト制作にも利用できそう。ただし、ペンで書き込んだ位置と実際に画面に線が表示される場所にわずかなギャップが感じられたため、完全に使いこなすには慣れが必要だと感じた。
Fire Max 11は手書きでの文字入力にも対応する。よほど崩した字で書かない限りはしっかりと認識できているようで、キーボードの文字入力よりも手で書いた方が速い人には嬉しい仕様だ。
スタイラスペンにはマグネットが内蔵されており、Fire Max 11の側面にマグネットでピタッとくっつけておくことができる。紛失防止のため、スタイラスペンを使い終わったら必ずくっつける癖をつけるようにしよう。
気になる点としては、スタイラスペンの内蔵電池が単6電池であること。コンビニなどでは売っていない種類の電池のため、バッテリーがなくなったときにすぐに手に入れるのが難しい。ネット通販などでは比較的手に入れやすいので、スタイラスペンを日常的に使うことを想定するなら、いくつか自宅にストックしておくことをオススメする。
また、同じくAmazonデバイスではKindle Scribeもスタイラスペンに対応しているが、Kindle Scribe用のスタイラスペンはFire Max 11との互換性はないので注意していただきたい。
ちなみに、2023年9月には同じくスタイラスペンに対応した 「Fire HD 10 (第13世代)」 が発表されている。同デバイスは10月18日に発売予定で、Fire Max 11のスタイラスペンと互換性があることが発表されている。
まとめ:高性能で便利に使えるが、価格がちょっぴり高め
Fire Max 11を実際に使ってみて、まず筆者が気に入ったのが画面の大きさ&綺麗さ。動画視聴でも仕事でも、やはり大きくて綺麗な画面は見やすく作業もはかどる。
そして、キーボード付きカバーとスタイラスペンによって、書類の作成やメール返信などでの文字入力時にキーボードを使ったり、写真編集やイラスト制作などにスタイラスペンを使ったりと、色々な作業ができるようになったのも大きな進化だ。
ただし、問題点として挙げられるのがAmazonアプリストアのアプリのラインナップが他プラットフォームに比べて少ないこと。AndroidタブレットのようにGoogle Playからアプリをダウンロードすることはできないため、せっかく購入したのに使いたいアプリがない、ということもあるかもしれない。
さらに、「格安タブレット」 とは言いづらい価格帯になってしまったのもちょっぴり残念なポイント。
本体のみでも34,980円〜、スタイラスペンを一緒に購入すれば38,980円〜、キーボード付きカバーを一緒に購入すれば43,980円〜で、本体+スタイラスペン+キーボード付きカバーだと47,980円〜だ (価格はいずれも税込) 。
スタイラスペンが使えるタブレットでこの価格帯は安めとは言えるが、Google Playが使えないことなどを踏まえると、オススメできるかどうかはその人がAmazonのサービスへの依存度がどれくらいなのかによる、という感じだ。そういう意味ではそれなりに上級者向けのデバイスとも言えるかもしれない。
以上を踏まえると、Fire Max 11を購入して幸せになれるのは、Fireタブレットのデザインや操作感が気に入っていて、Kindleアプリで電子書籍を読むことが多かったり、Prime Videoで映画やドラマを見るのが好きな人。それにプラスして、キーボード付きカバーやスタイラスペンがあるとこんな作業ができていいな、便利だなと感じた人は、Fire Max 11を最大限に活用できるはずだ。