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Unreal Engineはどこへ向かうのか――Epic Games Japanで聞いた「UE 5.8」と「UE6」の現在地

Epic Games Japanは6月23日、横浜市みなとみらいにある同社オフィスで報道関係者向けのラウンドテーブルを開催した。

今回のラウンドテーブルでは、先日米シカゴで開催された「Unreal Fest Chicago 2026」の内容をもとに、正式リリースされたばかりの「Unreal Engine 5.8(UE 5.8)」の新機能や、2027年末にアーリーアクセス開始を予定している次世代エンジン「Unreal Engine 6(UE6)」の方向性に関する説明が行われた。

会場にはEpic Gamesの担当者に加え、『鉄拳8』を手掛けるバンダイナムコスタジオのテクニカルディレクター、稲城聡氏も登壇。実際の開発現場での活用事例や今後の展望について語った。

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「UE 5.8」は開発現場の負担軽減に重点

読者のなかには、ゲームエンジンの事情に明るくない方もいると思うため、簡単に説明しておきたい。

まず、「Unreal Engine」とはEpic Gamesが開発するゲームエンジンだ。ゲームエンジンとは、3Dグラフィックスの描画や物理演算、アニメーション、サウンド、ネットワーク処理など、ゲーム開発に必要な機能をまとめたソフトウェア基盤のことを指す。

もともとは1998年に発売されたFPS『Unreal』向けに開発された技術だが、その後は外部企業にもライセンス提供されるようになり、現在では世界でもっとも広く利用されているゲームエンジンのひとつとなっている。

『フォートナイト』をはじめ、『鉄拳8』や『FINAL FANTASY VII REBIRTH』など数多くの大作タイトルで採用されているほか、近年は映画やテレビ番組の映像制作、自動車開発、建築ビジュアライゼーションなどゲーム以外の分野でも利用が広がっている。

その日本法人であるEpic Games Japanは、国内のゲーム会社や映像制作会社への技術支援や普及活動を行っており、今回のラウンドテーブルもその取り組みの一環として開催されている。

Epic Games Japan 代表 河﨑高之氏が登壇 

そして、今回発表された「UE 5.8」は2022年に登場したUE5系統の最新版にあたる。

UE5では「Nanite」による高精細なジオメトリ描画や、「Lumen」によるリアルタイムグローバルイルミネーションなどが大きな注目を集めたが、「UE 5.8」ではそうした描画技術をさらに進化させるだけでなく、実際の開発現場で課題となっている作業効率やパフォーマンス改善にも重点が置かれている。

Epic Gamesは今回のアップデートについて、開発者が技術的な制約や煩雑な作業から解放され、より創造的な仕事に集中するためのリリースと位置付けている。グラフィックスの進化だけを追求したアップデートではないようだ。

近年のゲーム開発は大規模化が進み、クリエイターが制作以外の作業に多くの時間を費やさざるを得ない状況が続いている。Epic Gamesはそうした課題を解消し、開発チーム全体の生産性を引き上げることを「UE 5.8」の重要なテーマとして掲げている。

その代表例が「MegaLights」だ。これまでリアルタイムレンダリングでは、ライトの数が増えるほど描画負荷も大きくなるため、ライティング担当者は常にパフォーマンスとの兼ね合いを考慮する必要があった。

一方、「MegaLights」では数千規模のライトを配置しても負荷の増加を大幅に抑えられるという。ライティングアーティストは技術的な制約を気にせず、より表現に集中できるようになる。

また、UE5を代表するグローバルイルミネーション技術「Lumen」にも新たな動きがあった。

Lumenは光の反射や間接光をリアルタイムで計算する高度なライティングシステムだが、その一方で処理負荷の高さが課題とされてきた。そこでUE 5.8では、描画品質をできるだけ維持しながら負荷を抑えた「Lumen Light」が新たに追加されることに。

ラウンドテーブルでは、この軽量版「Lumen」によって、これまで性能面から導入が難しかったプラットフォームでも高品質なライティング表現を実現できる可能性が示され、具体的な活用例としてNintendo Switch 2にも言及している。

『鉄拳8』バンダイナムコスタジオ テクニカルディレクター 稲城聡氏
『鉄拳8』についても紹介があった

実際、登壇したバンダイナムコスタジオの稲城聡氏は、『鉄拳8』の開発においてLumenの採用を検討したものの、パフォーマンス面の課題から見送った経緯があったと説明した。そのため、品質を維持したまま負荷を抑えられる「Lumen Light」には大きな期待を寄せているという。

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AIがUnreal Editorを操作する時代へ

「UE 5.8」でひとつ注目なのが、MCP(Model Context Protocol)サーバーへの対応だ。MCPは生成AIとUnreal Editorを接続するための仕組みで、ClaudeやChatGPT、Geminiなどの大規模言語モデルと連携することが可能だ。

Epic Gamesが提供するのはAIそのものではなく、AIとUnreal Engineをつなぐための共通インターフェースだ。開発者は好みのAIモデルを利用しながら、エディターの操作をAIへ委ねられるようになる。

会場では実際のデモも披露された。担当者がAIに対して「窓際にソファを置いてほしい」と自然言語で指示すると、AIはシーンの状況を認識し、適切なアセットを検索。そのままシーン内へ自動配置する様子が紹介された。

従来であれば、アセットブラウザから素材を探し出し、シーンへ配置し、位置や向きを微調整するといった作業が必要だったはずだが、デモではそれらの工程がプロンプトだけで完了していたことから、十分に実用的なレベルにあるように感じた。

また、境界線を引いて地区を定義し、道を引くだけで、それに沿った道路や建物オブジェクトが自動的に生成・配置されるデモだったり、見た目だけでなく、近づくと爆発するといったUIや火災の煙などの「ゲームロジック」に関するデモも行われた。

Epic Gamesは近年、「クリエイターを単純作業から解放する」という考え方を繰り返し強調している。今回のMCP対応もその延長線上にある取り組みといえそうだ。AIが制作そのものを代替するというよりは、レベルデザインやシーン構築の補助役として機能し、開発者が本来のクリエイティブな作業へ集中できる環境づくりを目指しているように見えた。

なお、ラウンドテーブルの会場外では「MetaHuman」のデモ展示が行われていた。本機能は、Epic Gamesが開発した次世代デジタルヒューマンフレームワーク。Unreal Engine 5と密接に統合されていおり、誰でも数分で高品質な3D人間キャラクターを作成・アニメーションできるツールとして、ゲーム開発者や映像クリエイターから注目を集めている。

展示ブースでは、人や表情をトラッキングして生成する機能が用意されており、被写体の表情変化や視線がデジタルヒューマンに反映される様子が披露された。

UE6はUE5とUEFNを一つにつなぐ。フォートナイトの衣装を別のゲームでも使える世界

ラウンドテーブルの後半では、2027年末のアーリーアクセス開始を目指して開発が進められている「UE6」について紹介された。

UE6で目指しているのは、現在のUE5と、フォートナイト向け開発環境であるUEFN(Unreal Editor for Fortnite)をひとつの基盤へ統合することだ。

Epic Gamesによると、UE4は「誰もがゲームを作れるようにした世代」、UE5は「世界の作り方を変えた世代」だった。そしてUE6は「ゲームを公開し、運営していく仕組みそのものを変える世代」と位置付けられている。

そこで重要なキーワードとなるのが「ポータビリティ(相互運用性)」だ。

「UE6」の構想を象徴する例として紹介されたのが、フォートナイトのスキン共有だ。Epic Gamesは、フォートナイトで購入した衣装を、将来的には別のUE6対応タイトルでも利用できる環境を目指している。そのために、フォートナイトの衣装システムを支える共通モジュールをUE6向けに提供する計画だという。

また、アセット形式についてはglTFやUSDといった業界標準を積極的に採用し、独自仕様についてもVerse APIや各種規約を公開する方針を示した。

ひとつ興味深いのは、対象がスキンだけではないこと。Epic Gamesは、見た目だけでなく動作やルールまで含めて扱える「スマートアセット」という考え方を打ち出している。将来的には、あるゲーム向けに作られたコンテンツが別のゲームでも同じように機能する世界を見据えているという。

新プログラミング言語「Verse」はゲーム開発の考え方を変えるのか

こうした取り組みを支える技術として紹介されたのが、新プログラミング言語「Verse(バース)」である。

VerseはPythonやC#に近い書き味を持ちながら、並列処理や同期処理を言語側で扱えるよう設計されている。なかでも特徴的なのが、「ソフトウェアトランザクションメモリ(STM)」と呼ばれる仕組みだ。

処理中に問題が発生した場合、自動的に実行前の状態へ戻せるロールバック機能を備えており、大規模なネットワーク処理や分散環境での開発を効率化できるという。登壇した稲城氏も、このロールバック機能に強い関心を示していた。

格闘ゲームのオンライン対戦では、ラグを抑えるためにゲームの状態を巻き戻して再計算する処理が欠かせない。しかし、その実装は非常に難しく、多くの開発コストがかかる。

Verseがこうした処理を言語レベルで支援することで、ネットワーク対戦ゲームの開発環境にも大きな変化をもたらす可能性がありそうだ。

Unreal Engineはデジタルコンテンツの共通基盤へ

今回のラウンドテーブルを通じて感じたのは、Epic Gamesが「Unreal Engine」をゲームエンジンの枠に収まる存在として考えていないことだ。AIによる制作支援、フォートナイトとの連携、アセットやコードの相互利用、そしてVerseによる新たな開発環境。こうした取り組みの先には、デジタルコンテンツ全体を支える基盤づくりという大きな目標が見えてくる。

映像制作や自動車業界などでも活用が広がるなか、Unreal Engineはゲーム制作ツールから、さまざまなデジタル体験を支えるプラットフォームへと変化しつつある。

UE6のアーリーアクセス開始は2027年末を予定している。実際の姿が見えてくるまでにはまだ時間があるものの、今回示された構想からは、Epic Gamesが描く次世代の開発環境の輪郭を垣間見ることができた。

「UE6」については開発の透明性を高めるために、GitHubのUnrealEngineリポジトリに「ue6-main」というブランチが公開されている。アクセス方法はUE5と同じで、EpicアカウントとGitHubアカウントを連携させて、Unreal Engineのライセンスに同意すれば閲覧できるため、興味がある人は、ぜひ一度見てみてほしい。

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