6月13日、Adobeは同社の2つの製品 「Illustrator」 「Express」 に、自社開発のジェネレーティブAI 「Firefly」 を搭載すると発表。
それぞれのアプリケーションのベータ版にて、ジェネレーティブAIを活用した機能を利用することが可能になる。まずは英語版のベータ版で提供が開始され、日本語版は後日搭載予定。
アドビは今年3月に独自の画像生成AI 「Firefly」 を発表し、今年5月には他製品に先駆けるかたちで、「PhotoShop」 に同ジェネレーティブAIを搭載。新たなAI機能 「ジェネレーティブ塗りつぶし」 を実装し、クリエイティブコミュニティを中心に話題になっていたが、今回の 「Illustrator」 「Express」 へのAI搭載はこれに続くかたちとなる。
「Illustrator」 に搭載されるAI機能は、「ジェネレーティブリカラー (Generative Recolor)」 。これはデザイナーが簡単なプロンプトを入力するだけで、瞬時に “色のバリエーション” を検討できるようにするというもの。
具体的には、ベクターアートワークの配色を瞬時に変えられるツール。これまでは、新しい製品パッケージの開発、ブラ ンディングを再構築する際のロゴ配色の検討、WEBサイトのリニューアルなどのたびに、候補となる色のバリエーションを手作業で作成することが多かった。しかし、これが 「Firefly」 の力で瞬時に終わるようになる。
たとえば、「正午の砂漠」 や 「真夜中のジャングル」 のように、言葉で表現したカスタムカラーテーマを生成。これをベクターアートワークに一斉適用することができる。個々のベクターを、手動で修正する必要がないため時間を節約することが可能だ。
ジェネレーティブリカラー (Generative Recolor)は、以下の機能が利用できる。
- テキストプロンプトでの配色:シンプルなテキストプロンプトの入力だけで高度なグ ラフィックの再配色を素早く行えるため、時間の節約に
- カラーの探索と適用が手軽に:さまざまなカラー、パレット、テーマを手軽に試し、 アートワークに適した見た目や雰囲気を実現
- カラーバリエーションをいくつでも生成可能:1つのアートワークから無数のカラーバリエーションの生成により、アートワークのSNS/印刷物/WEBでの展開を促進。
そのほか、「Illustrator」 は今後のアップデートで、フォントの再編集機能 「ReType (Beta版)」 が追加され、画像トレースパネルとメニューが刷新されるほか、レイヤーパネルに「検索」と「フィルター」パネルが追加され、PDF保存画面に「ハイパーリンクを保持」オプションが追加。
さらに、書き出しで「WebP」フォーマットがサポートされたり、スクリーン用書き出しで、JPEGのカラーモード(RGB、 CMYK、グレースケール)が選択可能になるなどの変更がもたらされる。
Adobe Expressでは、アドビの生成AI 「Adobe Firefly」 による 「テキストで画像生成 (Text to Image) 」 や 「テキスト効果 (Text to effects) 」 が利用でき、自分の言葉で簡単な指示を出すだけで画像やテキスト効果を生成し、SNS投稿やポスター・チラシなどの作成が可能になる。
「Adobe Firefly」 は、Adobeが開発した独自のジェネレーティブAI (画像生成AI)。画像生成AIと言えばStable Diffusionなどが有名で、ユーザーが指定したプロンプトからAIが自ら画像を生成するというもの。生成には、画像生成のためのモデルを構築し、大量の画像をディープラーニングを使用して学習させることで実現する。これは今回の 「Firefly」 も同様だ。
しかし、「Firefly」の場合は、Adobeのストックサービス 「Adobe Stock」 のコンテンツが使用されているため、誰かの著作権を侵害したり、センシティブな問題にも抵触しないという安心感があるという点が、他の画像生成AIとは一線を画すポイントとなる。
なお、学習に使用されるコンテンツは、画像の投稿者が許可した場合のみとなるため、投稿者の権利も守られる仕組みだ。
(画像提供:アドビ)