
Appleは、北米時間2025年6月9日に開催した年次開発者会議 「WWDC25」 の基調講演において、空間コンピュータ 「Apple Vision Pro」 向けの次期OS 「visionOS 26」 を正式発表した。
視界に溶け込むウィジェット機能が登場、WidgetKitでサードパーティ開発も可能に
新バージョンでは、現実空間に溶け込むようにウィジェットを配置できる機能が追加され、時計や天気、写真、ミュージック、カレンダーといった新たなウィジェットが登場する。
これらはユーザーの視界に常に固定されて表示され、フレームの幅や色、奥行きなどを自由にカスタマイズ可能。開発者向けには「WidgetKit」も提供され、サードパーティによるウィジェット開発が可能になった。
写真が「空間シーン」に進化、生成AI×コンピュテーショナル深度で臨場感を再現
また、「写真」 アプリでは、生成AIとコンピュテーショナル深度(※) を組み合わせた新たなアルゴリズムによって、2D画像が複数の視点から再構成され、臨場感ある「空間シーン」として楽しめるようになった。Appleは厳選した空間ギャラリーも提供し、今後コンテンツを順次追加するとしている。
※コンピュータによる画像解析や処理によって、2Dの写真や映像から被写体や背景までの奥行き情報(=深度情報)を推定・生成する技術のこと。
Safariに「空間ブラウズ」導入、3D表現による没入型Web体験を実現
Safariでは 「空間ブラウズ」 機能が加わり、気が散る要素を取り除いた表示に切り替わり、写真がスクロールにあわせて空間的に展開されるなど、没入感のあるWeb体験が可能となる。
さらに、Web開発者向けにはWebページに3Dオブジェクトを直接埋め込む機能も追加され、空間コンピューティング時代に適したブラウジング体験が整備された。
Personaがより自然に進化、ボリュメトリックレンダリングで外見表現を強化
ユーザーの姿をデジタル空間に再現する「Persona」機能も強化された。まつげや髪の毛、血色といった細部の描写が大幅に改善され、より親しみやすく自然な外観が実現。
実現にはボリュメトリックレンダリング (※) と機械学習技術が活用されており、ペルソナは数秒で生成できる。ユーザーは、見た目の調整や1000種類以上のメガネからの選択も可能となっている。
※ 3D空間内の体積を持つデータを描画する技術のこと
ゲスト利用や企業導入に対応、セキュリティ強化APIも提供
visionOS 26では、Apple Vision Proを複数のユーザーで共有するための機能も整備され、目や手の動き、眼鏡・コンタクトの処方、アクセシビリティ設定などをiPhoneに保存することで、一時的にゲストユーザーとしてVision Proを利用できるようになった。これは企業や教育現場などチームでの利用を想定した設計だ。
また、エンタープライズ向けには新たなAPI群が追加された。特に「Protected Content API」は、機密情報を含むコンテンツの閲覧者を制限し、コピーやスクリーンショット、画面共有を防止する。企業の情報管理や遠隔作業において高いセキュリティを確保するための重要なアップデートといえる。
Logitech MuseやPS VR2コントローラーに対応、空間操作とゲーム体験が向上
外部アクセサリとの連携強化も見逃せないポイントだ。ペン型入力デバイス「Logitech Muse」への対応によって、3D空間内での描画や共同作業が可能となった。
また、ソニーの「PlayStation VR2 Senseコントローラー」が正式サポートされ、6DoFのモーショントラッキングや指先の認識、ハプティックフィードバックを活かした没入型ゲーム体験が可能に。
360度カメラ映像をネイティブ再生、Adobe製アプリで空間ビデオ編集も可能に
映像体験も強化されており、GoPro、Insta360、Canonといったメーカーの180度/360度カメラや広角レンズで撮影された動画がネイティブ再生に対応。2Dディスプレイでは再現できなかった奥行きや広がりのある視聴体験が実現される。
また、新たに提供されるAdobeのアプリでは、空間ビデオをVision Pro上で直接編集・プレビューすることが可能になった。
visionOS 26:正式リリースは今秋。本日より開発者向けベータ配信
「visionOS 26」 の開発者向けベータは本日から配信されており、一般ユーザー向けのパブリックベータは7月に公開予定。正式リリースは今秋とされている。
関連リンク
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(画像:Apple)