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『The Last of Us Part II』レビュー。辛く厳しい復讐劇の中で紡がれる人間の憎悪と愛

初代『The Last of Us』のエンディングから5年後の世界を描く続編作品『The Last of Us Part II』が、今月19日(金)にいよいよ発売を迎えた。

前作のエンディングの解釈は人それぞれで、納得がいく終わりだったと感じている人もいれば、すこし釈然としない終わりだったと感じている人もいるかもしれない。しかし、おそらくそのどちらも『The Last of Us』の続きが気になっていたのではないだろうか。まさに筆者がそうだったように。

初代『The Last of Us』は、人間を凶暴化させる謎の寄生菌の感染爆発によって崩壊した人間社会で、感染者 (インフェクテッド) や他の生存者の脅威と戦いながら、ジョエルとエリーの2人がアメリカ大陸を横断するという長い旅路を描いたものだった。

そしてその続編となる『The Last of Us Part II』は、前作のエンディングから5年後の世界で “とある出来事” をきっかけとしたエリーの復讐譚を描いた作品となる。すでに発売から1週間以上が経過しているが、本作について気になっている方はぜひ参考にしていただきたい。

ちなみに『The Last of Us』シリーズはストーリーがとても重要な作品になっているため、本レビュー記事ではなるべくネタバレにならないよう配慮して書いたつもりだが、ゲームの性質上、軽くストーリーに言及せざるを得ない部分があり内容を推察できる箇所があるため、ネタバレを一切見たくないという方のためにぜひ注意喚起をさせていただきたい。

『The Last of Us Part II』のあらすじ
エリーとジョエルの2人は、謎の寄生菌による感染爆発によって荒廃したアメリカ大陸を横断したあと、ワイオミング州ジャクソンにある生存者たちのコミュニティーで比較的平穏な日々を送っていた。しかし、ある日その穏やかな日々を一転させる凄まじい事件が起こり、エリーは復讐の旅に出ることになる。

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憎しみと愛に溢れたエリーの 「復讐譚」

前作のエンディング後、エリーとジョエルの2人は長く苦しい旅から一転、ワイオミング州ジャクソンで比較的落ち着いた生活を送っていた。

感染者たちは相変わらず発生しており、他の生存者たちによる脅威もなくなったわけではなく、前作の時点から世界の状況は大きく進展したわけではないのだが、前作の過酷な旅を忘れてしまうほど穏やかな表情を浮かべる2人がとても印象的だった。

しかし、その穏やかな生活を一転させる出来事が発生し、エリーは復讐のためシアトルに向かうことになる。ジャクソンで垣間見ることができた穏やかな表情は、一瞬にして憎しみに染まってしまう。

この事件はストーリーに大きく関わる部分になるため詳細は伏せておくのだが、あまりに辛すぎる事柄で、エリーの悲痛な表情が生々しく描かれていて、まさに心をえぐられるような思いがした。

本作は主に復讐劇の中で紡がれる人間の憎悪と愛を描いた作品だ。ジョエルとエリーだけでなく、他の登場キャラクターたちの行動や会話、表情から人間の感情がヒシヒシと伝わってくる。すべて非現実かつ非情な舞台のなかで起こる出来事ではあるものの、この世界に住む人間が感じる感情は我々の住む実世界に通ずることも多いため、いずれも共感できる。

さらに本作の作り込みはプレイヤーサイドだけでなく、エネミーサイド(つまり敵陣営) にも及ぶ。特に戦闘中、誰かを殺すと敵の誰かがその殺した人の名前を呼んだりするため、自分の行動が誰かの命を奪ったことを実感させられる。もちろん、それを理解すると相手に憎まれることも同時に実感してしまう。

プレイヤーが感じている憎しみを、敵も同じく感じていることを随所で感じなくてはいけないのだ。これは普通の人間なら辛いことだろう。しかし、それを分かっていても時として暴力を加えなくてはいけない。そんなシチュエーションに終始身を投じなくてはいけないのが『The Last of Us Part II』のつらく厳しいところなのかもしれない。

ちなみに本作は単体でも楽しむことができるものの、ストーリーは前作から直接的に関係しているため、できれば前作をプレイしてから本作に挑んでいただきたいと筆者は感じている。

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PS4で圧倒的な進化を遂げた『The Last of Us』

ここまではストーリーや作品性にすこし触れてきたが、本作の魅力のひとつとして、超美麗なグラフィックやゲームシステムの奥行きの広さを忘れてはいけない。

前述のとおり本作は謎の寄生菌によって崩壊した人間社会が舞台だが、プレイヤーは旅のなかで荒廃した都市と大自然の両方を見ることになる。

それまで大勢の人が住んでいた都市は、社会インフラのほぼすべてがメンテナンスされていないこともあり動かない状態になってしまっている。建造物には植物が繁茂し、汚濁した水がそこらかしこに溜まり、時として腐敗した屍体が見ぐるみを剥がされて放置されている状態だ。そんな中、感染者からの襲撃や生存者の攻撃から耐え生き延びていかなければならないというのだから、まさしく絶望としか表現することができない。

これらは前作でもリアルに描かれていたが、『The Last of Us Part II』はハードをPlayStation 4に上げたこともあり、“汚い” 描写をよりリアルに表現することができていた。我々にとって、本来『The Last of Us』の世界は非現実的なものであるはずだが、そのあまりにリアルな描写ゆえ、現実として認識してしまうほど高い没入感が得られるようになっている。おかげでプレイ中は心が荒むこともしばしばだ。

しかしそんな荒んだ心を癒してくれるのが、作中で描かれるアメリカ大陸の大自然。PS4のパワーを最大限に利用して広大かつ超美麗な風景が描かれており、涙が出るほど美しい世界に没頭することができる。

ちなみに弾薬や武器、回復アイテムなどの探索は本シリーズにおける基本行動のひとつだが、今回はガラスを割って建物に侵入したりと頭を使うことで入手できるアイテムもあるため、単調になりがちな探索すら十分に楽しめる設計になっている。

さらにキャラクター描写もとことん突き詰められて作られている。感情を表現する “人間の表情” はもちろんのこと、ナイフで切りつけたときの鮮血や、銃で撃った際にできた弾創、矢が刺さった時の描写など良くも悪くもグロテスクに表現することで、自分も含めて登場するキャラクターたちが本当に生きた人間であることを改めて知らされる。

筆者はあまりゴア表現は得意ではないのだが、この作品ばかりはゴア表現抜きでプレイすることはできないなと感じた。過激な暴力的シーンでさえ、この世界の背景を考えると正当性があるように感じられてしまう。息が詰まるほどの緊迫感と過酷さ、それが『The Last of Us』の世界なのだ。

ゲームシステムは前作を基本踏襲。でもアクションは多様に

『The Last of Us Part II』のゲームシステムは、基本的には前作を踏襲しつつも、新しい要素を入れて多様なゲームプレイができるようになっている。

戦闘面においては、前作と同じく銃や弓矢、ナイフ、火炎瓶などの様々な武器を駆使しながら、感染者や他の生存者たちと戦っていくのだが、特に大きく変わったのが近接戦闘のバリエーションが豊富になったことだ。

具体的には、敵に空き瓶などを投げつけて怯んだところで決定的な攻撃を叩き込んだり、相手の攻撃を間一髪ですばやく避けて反撃を繰り出したり。前作では相手と1対1で対峙した状態での戦いは基本的には殴り合いになることが多かったが、本作はうまく立ち回ることができれば、同じ状況でもノーダメージで切り抜けることができるようになった。ただし敵の動きも毎回同じではないため、プレイヤースキルが求められる部分ではありそうだ。

また、障害物などにうまく身を隠しながら気づかれないように敵を倒す 「ステルスアクション」 の活用は前作同様に重要なテクニックなのだが、本作はさらに 「戦闘を回避する」 ことの重要性が上がっている。新たに追加された 「ほふく」 アクションをうまく活用して車の下や草むらに隠れ、敵をやり過ごすことができれば弾や体力を温存して進むことができるだろう。

サバイバル要素となる 「クラフト」 システムも健在だ。フィールド上で拾ったパーツや素材を駆使して銃をカスタマイズしたり、治療キットや火炎瓶などのアイテムを作っていく。すでに文明が崩壊してから長い月日が経っていて物資が豊富にあるわけではないためアイテムは相変わらず慎重に使うべきではあるが、前作からすればアイテムは比較的豊富(難易度ノーマルでプレイ)だったため、アイテムのやりくりという点では難易度は下がったと言えるかもしれない。

ちなみにゲーム全体の難易度は前作同様に難しめだ。アクションゲームを多くプレイしている人にとってはおそらくちょうどいいくらいの難易度だとは思うが、普段あまりそういったゲームをしない人にとっては最初は戸惑うこともあるかもしれない。ただしプレイ中にゲーム難易度は調節できるようになっているためプレイ中に詰むということは避けられるはずだ。

『The Last of Us Part II』をプレイしてみて…

前作から7年の時を経て登場した本作『The Last of Us Part II』は、PS4の力を最大限に使い超美麗グラフィック、深いストーリー、そして極度の緊迫感を描くことに成功しており、まさにPS4最高峰作品だったと高く評価できる。

前作『The Last of Us』は本格的なストーリーが大きく話題を呼んだが、今作も一度始めると最後まで一気にプレイしたくなるほどグッと引き込まれる内容。バイオレンスな作品があまり得意ではない筆者だが、それでも『The Last of Us』シリーズはとにかく続きが気になる。プレイしたくないけどプレイしたい、そんなジレンマに(良い意味で)陥ってしまう作品だった。

時として目を瞑りたくなるような残酷なことをしなくてはいけないし、状況によってはその逆もある。その “残虐行為” は相手に “憎しみ” を与え、その “憎しみ” はいずれ自分自身に返ってくる。現実では当然ながらそんな状況に陥りたくないものであるが、しかし人間同士の愛とこの過酷な環境がそうさせるのであれば、それは致し方なしと言えるのではないだろうか。

また、『The Last of Us Part II』の描く世界は昨今の新型コロナウイルスが拡大する現実世界とリンクするところもある。もちろん、現実は『The Last of Us』の世界とは大きく異なるものではあるが、社会システムが崩壊した世界を目撃したあと新型コロナウイルスの感染拡大に関するニュースを聞くと他人事とは思えず不安や恐怖を感じざるを得ない。それほど『The Last of Us Part II』の世界観はリアルなのだろう。こんな世界が現実に起きたら…まさにゲームだけの出来事であってほしいと願うばかりだ。

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