
ソフトバンク子会社のSAIMEMORYとインテルは、次世代メモリー技術の実用化に向けた協業を開始する。高容量・広帯域・低消費電力を特徴とする新技術「ZAM(Z-Angle Memory)」の研究開発を共同で進め、2029年度中の実用化を目指す。
この協業は2026年2月2日に締結され、翌2月3日に都内で開催された「Intel Connection Japan 2026」において正式に発表された。会場では、SAIMEMORY代表取締役社長 兼 CEOの山口秀哉氏と、これまで次世代メモリー研究を支えてきたインテルフェローのフライマン博士が登壇し、技術の背景や将来像について説明した。
インテルの研究成果を活用した次世代メモリー「ZAM」
今回の協業の対象となるのは、AI時代のデータセンター需要を見据えた次世代メモリー技術だ。生成AIの普及により、巨大なAIモデルの学習や推論処理を支える計算基盤には、これまで以上に高速かつ大容量のメモリーが求められている一方で、消費電力や発熱、冷却コストが深刻な課題となっている。こうした状況を踏まえ、両社は新しいアーキテクチャーと製造技術を採用したZAMによって、性能向上と電力効率の両立を図る。
SAIMEMORYは、ソフトバンクが次世代メモリー技術の実用化を目的として2024年12月に設立した100%子会社であり、今回が初の本格的な対外発表の場となった。山口氏は、同社のビジョンを「AIスーパーサイクルを支える新しいメモリーパラダイムの創出」と位置付けた。現在のAIブームは、これまでの産業革命をはるかに上回る規模の変化をもたらすとし、その中でメモリー技術は社会インフラの中核を担う存在になると強調した。
ZAMの開発にあたっては、インテルが米国エネルギー省の支援を受けて推進してきた「Advanced Memory Technology(AMT)プログラム」で確立された基盤技術や、「Next Generation DRAM Bonding(NGDB)イニシアチブ」で蓄積された技術的知見が活用される。従来のDRAM構造とは異なる新しいアーキテクチャーを採用することで、高密度化と広帯域化に加え、消費電力の大幅な低減を同時に実現することを目指す。
山口氏は、従来のメモリー開発が「高容量」「高帯域」を中心に語られてきたのに対し、SAIMEMORYではまず「低消費電力」を最優先に据える点が大きな特徴だと説明した。熱と電力のトレードオフという、これまでのメモリー技術が抱えてきた限界を突破することが重要なテーマであり、それが次世代AI基盤に不可欠になるという考えだ。
同氏はまた、現在のデータセンターを取り巻く環境についても言及した。AI需要の急拡大によって、電力や冷却コストが増大し、メモリー供給も逼迫している。製品によっては価格がこの半年で2倍以上に高騰している例もあり、半導体産業全体の持続性が問われる局面に入っていると危機感を示した。そのうえで、ZAMのような次世代メモリー技術が、性能とエネルギー効率の両面からデータセンターの課題を解決する鍵になると語った。
フライマン博士は、ZAM技術の研究背景について、DARPA(米国防高等研究計画局)との共同研究を起点に10年以上にわたり検討されてきた技術であることを紹介した。従来のHBMやDDRのロードマップでは到達が難しい性能やコスト水準を実現できる可能性があり、AI時代に顕在化しつつある「DRAM危機」への有力な解決策になると強調した。
SAIMEMORYは2027年度中にZAMのプロトタイプを製作し、検証を進めたうえで、2029年度中の実用化を目標としている。今後はインテルに加え、国内外の技術パートナーとも連携しながら研究開発を加速させ、日本発の先進的な半導体技術として世界市場での競争力を高める方針だ。
ソフトバンクは、SAIMEMORYを通じた次世代メモリー技術の開発を「次世代社会インフラを支える重要な取り組み」と位置付けており、今回のインテルとの協業はその中核プロジェクトとなる。山口氏は最後に、「これは大きなチャンスであると同時に、極めて大きなチャレンジでもある。しかし、AI時代に新しいメモリーのパラダイムを築くことが我々の使命だ」と述べ、プロジェクトへの強い意欲を示した。
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