
今月20日〜25日にかけて、独ケルンでは欧州最大のゲーム見本市 「gamescom 2025」 が開催され、多くのゲームファンが世界中から押し寄せた。
今回の 「gamescom 2025」 における最大の注目ポイントのひとつとして挙げられるのが、Xboxの名を冠した噂のハンドヘルド「ROG Xbox Ally」と「ROG Xbox Ally X」だろう。
筆者は初日のプレスデーで先行するかたちで本機に触る機会を得た。従来モデルである「ROG Ally」「ROG Ally X」をいずれも取材してきた経験を踏まえ、今回の新機種が従来のAllyシリーズとどのように異なるのか、実際に触って感じた印象をお届けしたい。
次世代ハンドヘルド「ROG Xbox Ally」をドイツで体験

「ROG Xbox Ally」および「ROG Xbox Ally X」は、ASUSとMicrosoftが共同で開発している新世代のポータブルゲーミングPCだ。
従来の「ASUS ROG Ally」のハードウェア開発ノウハウに、MicrosoftがXboxとWindowsのエコシステムを統合・最適化した新しいソフトウェア体験を組み合わせることで、より「コンソールライク」で直感的な操作性を実現している。

この共同開発は、コードネーム「Kennan」として進められていたプロジェクトであり、ASUSがハードウェアを担当し、MicrosoftがWindowsおよびXboxチームを介してソフトウェアの最適化を行っている。
従来のWindowsベースのハンドヘルド、例えばASUS ROG AllyやLenovo Legion Goは、ハードウェア自体よりもWindows 11の挙動に若干の問題があり、操作性に課題があった。Lenovoは専用のトラックパッドで補おうとしたが、多くのメーカーは不便なタッチ操作に頼っていた。
しかしXbox Allyでは、ジョイスティックやABXYボタンでWindows体験の多くが操作可能になり、格段に直感的な操作性が実現されている。なお、本機の発売は海外・国内ともに2025年10月16日を予定している。
握り心地とエルゴノミクス

最初に手に取った印象は、握り心地の良さだ。写真だけで見ると一風変わった大きめにグリップに思えるかもしれないが、実際に持ってみるとかなり快適。Xboxコントローラーを半分にして画面とシステムを挟み込んだような感覚だ。

握り心地やボタン配置などのエルゴノミクス要素も優れており、ABXYボタンやジョイスティック、インパルストリガーの反応も良好で、長時間プレイでも疲れにくい。重さはあるものの、それもグリップ形状によってあまり気にならなかった。持った瞬間の快適さは、従来モデルをはもちろん、上回ると感じるほどだった。
サイズはやや大きく(290.8mm x 121.5mm x 50.7mm)、携帯性は犠牲になっているが、フルコントローラー感覚で操作できる点は大きな強みだ。



ハードウェア・パフォーマンス

「ROG Xbox Ally X」はトップモデルで、AMD Ryzen AI Z2 Extreme APU、24GB RAM、1TB SSD、80Whバッテリーを搭載。ベースモデルの「ROG Xbox Ally」はRyzen Z2 A、16GB RAM、512GB SSD、60Whバッテリーを備える。
両モデルとも共通して7インチ・1080p・120HzのIPSディスプレイを搭載し、VRRやFreeSyncに対応することで、パフォーマンス変動時の画面ティアリングを抑制している。バッテリー持続時間については現在調整中で、正式情報はまだ公開されていない。
上位モデルの「ROG Xbox Ally X」はCES 2025で発表されたZ2 Extremeを搭載したことで、従来モデルのZ1 Extremeよりも高性能だ。

実際に、筆者が「ROG Xbox Ally X」で「Gears of War: Reloaded」を1080p・高設定・AMD FSR 3.1のQualityモードで15分間ほどプレイしたところ、60fpsを安定して維持できた。
Turboモードを使えばさらに性能を引き上げることができ、高フレームレートを必要とする場面で役に立つ。ただし、その分発熱やバッテリー消費が増すため、すぐに電源に接続できる場面などに限定して使うのが理想だ。
「ROG Xbox Ally / Ally X」は、高性能なRyzen Z2 Extreme / Z2 Aを搭載するだけでなく、Xbox UI中心の最適化により直感的な操作性を実現している点が大きな魅力だ。
一方で、負荷の高いシーンにおいてはファンの音がやや大きくなりがちだ。ファンの通風口に手を当てると風が流れているのがしっかり分かるレベルだったので、静かな環境でプレイするとファンの音は若干気になる人もいるかもしれない。
ソフトウェアとユーザー体験

Xbox Allyは、Windows 11の軽量版を採用し、Xbox UIを中心に最適化。ゲームモードとフルWindowsモードはボタン長押しで切り替え可能。Armoury Crateの統合により、Steam Deck風の直感的操作も可能だ。
さらに、Xboxアプリは他のストア(Steam、Epic Games、GOGなど)のゲームを統合可能で、ライブラリを一元管理できる。
UIはまだ初期段階のため改善余地はあるが、Windowsベースのハンドヘルドで長らく問題だったユーザー体験を大幅に改善している。また、AI Copilotも搭載されているが、現時点ではゲーム内ガイドとしての有用性は限定的だ。
- 高性能なRyzen Z2 Extreme / Z2 A搭載
- Xbox UI中心で直感的な操作性
- 卓越した握り心地とエルゴノミクス
- ファン音がやや大きい
- OLED非搭載
- サイズが大きく携帯性はやや低い
価格は未発表だが、噂ではベースモデルのXbox Allyが549ドル、Ally Xが899ドル程度とされる。
総評

Xbox Ally / Ally Xについては「gamescom 2025」の会期を通じて複数回のハンズオンセッションで確認したが、ハードウェア、操作性、ソフト面のいずれも完成度が高く、Windowsハンドヘルドの弱点を解消した製品だと感じた。
特にAlly Xは高性能モデルとして、現行ROG Ally Xよりも優れたパフォーマンスを持ち、AAAタイトルも手のひらのなかで遊ぶことができるため、PCゲーム好きやXboxユーザーにとって魅力的な選択肢になってくれるはずだ。
また、この設計・UXは今後登場する他社ハンドヘルドにも影響を与える可能性が高い。価格やバッテリー持続時間に関してはまだ不明点が残るが、それらも発売までには明らかになっていくだろう。