
ワイヤレスヘッドホンは価格も性能も幅広く、選ぶのに迷う人も少なくない。そんな中、手頃な価格で音質を重視した製品を多数展開する中国発のブランドが「OneOdio」だ。
今回は、有線・無線の両方に対応し、Hi-Res Audio認証も取得した「OneOdio A6」のサンプルをメーカーから提供いただき、実際に試してみた。
本製品は1万円以下ながら、スペック面では上位機にも引けを取らず、普段使いのヘッドホンとして注目されている。本稿では、装着感・音質・使い勝手の3点を中心に、その実力をレビューする。
(提供:OneOdio)
デザイン
OneOdio A6の外観はシンプルで、派手な装飾はなく、どんなファッションにも合わせやすい。手に取ると価格帯相応の軽量プラスチック感があり、質感に華やかさはないが、これが逆に長時間の装着でも負担が少ないという利点にもつながっている。重量を計測してみたところ、242gだった。
本製品はオーバーイヤー型で、イヤーパッドや頭の上のクッションはもちもちと柔らかく、側圧も強すぎない。実際に装着して3時間ほど作業をしてみたが、耳たぶや頭頂部などに痛みや違和感を感じることなく作業することができた。
電源ボタンなどの各種ボタンはいずれも右側のハウジングに搭載されている。一番奥から順に、ANC切り替えボタン・電源ボタン・音量ボタンとなっている。
充電ポートはUSB Type-C。3.5mmヘッドホンジャックは非搭載で、Type-Cでの有線接続のみ利用できる。昨今のスマートフォンやノートPCなどとの相性は良いが、飛行機のエンタメシステムで使いたい場合には変換アダプタを持っていくなど工夫したい。
ハウジングは左右ともに90度回転・折りたたみが可能で、コンパクトに収納できる。持ち運び用のポーチは付属しないため、カバンの中などで他の物と擦れるのが嫌であれば、自前で用意していただきたい。
音質
OneOdio A6はハイレゾ認証を取得しており、LDACコーデックにも対応しているため、ワイヤレスでも高解像度の音楽を楽しめるのが大きな特徴だ。
実際に聞いてみると、低音はしっかりと存在感があり、ドラムやベースラインの響きが豊かで音楽の厚みを感じられる。中音域はボーカルや楽器の定位がはっきりしていて、高音域も伸びがありながら、シャリつきが少ないため、聴き疲れしにくいバランスだ。
ただし、やはり1万円以上の著名ブランドのハイエンドヘッドホンと比べると、音の解像感や細かな表現力ではやや劣る。特に高音域の微細なニュアンスや極端に複雑な楽曲の表現では差が感じられる。
とはいえ、価格帯を考えると、音の分離感やレンジ感は十分で、日常の音楽鑑賞やポッドキャスト、動画視聴において満足できるクオリティといえる。特にワイヤレスでここまで高解像度な音を手軽に楽しめる点は、1万円以下のモデルとしては魅力的だ。
ちなみに、本製品は「OneOdio」アプリ (iOS版/Android版) でイコライザー機能が利用できる。イコライザは、デフォルトで「ポップ・モード」「ベース・モード」「スーパー・ベース・モード」の3種類が用意。さらにカスタム設定も3つ用意されていて、自分の好みの設定にすることもできる。筆者はデフォルトで「ポップ・モード」を使っているが、聴く音楽のジャンルや自分の好みに合わせて音のバランスは自由に調整可能だ。
ANC性能
ANC (アクティブノイズキャンセリング) をオンにすると、低周波の環境音やエンジン音などが抑えられ、音楽により集中できる。ANC性能は高級ヘッドホンに比べるとさすがに劣るが、それでも室内のエアコンの稼働音などの継続的なノイズはかなり消せているようだった。
本製品は外音取り込みモードも搭載しており、車が接近するような音は聞こえるものの、そこまではっきりと外の音を取り込めているわけではなく、ANCオフの状態よりも少し外の音が聞こえるくらい。自分の声もこもったような音で聞こえる。
「まるでヘッドホンをつけていないかのように周囲の音が取り込める」とまではいかなかったので、本製品においてはおまけ程度の機能として考えるのが良さそうだ。
ちなみに、ANCと外音取り込みを切り替えるとき、イコライザの設定によっては低音が大きく増減するのが気になった(ANC時には低音が大きくなり、外音取り込み時には小さくなる)。
低音が大きくなっても雑に聞こえるというようなマイナスの効果はなく、むしろ中音域が落ち着く感じがして、「ソファなどにどっしりと腰を据えて楽曲を聴きたいならANCをオンにするべき」という言い方にはなると思うのだが、この点については本製品の個性として捉えておく必要がありそうだ。
通話・マイク性能
本製品にはマイクが搭載されていて、スマートフォンやノートPCで通話に対応することができる。
実際に外出時にOneOdio A6で音楽を聴いていたところ、ちょうど友人から通話(FaceTimeオーディオ)が来たのでそのままヘッドホンで出てみた。
マイク音質は圧倒的に良いというほどではなかったようだが、音はそれほどこもっておらず、車の音などの周囲のノイズもある程度除去できていたことから、通話する分には問題ないとのことだった。
接続性
本製品は電源オン時に電源ボタンを長押しすることでペアリングモードにできる。
アプリで「デュアル・デバイス接続」のトグルをオンにしておけば、iPhoneとMacのように2台のデバイスとペアリングして使うことができる。デバイスの切り替えは3秒ほどかかるが、再ペアリングする必要なく接続できて便利だ。
デバイスとの接続は、満員電車などでは一瞬不安定になって途切れることはあるが、それ以外の環境で途切れが気になることはほとんどなかった。日常的に使う分には問題にはならないだろう。
総評:1万円以下のヘッドホンとしては完成度が高く、コスパに優れた一台
OneOdio A6を実際に使ってみてまず感じたのは、価格以上の完成度だ。ハイレゾ対応やLDACコーデックへの対応、さらにANC機能やアプリによるイコライザ調整といった機能は、この価格帯ではなかなか揃わない。普段使いを想定しながらも、上位モデルのような多機能性を備えている点が魅力といえる。
音質は長時間のリスニングでも聴き疲れしにくい上に、イコライザで調整もできる点が優れる。ANCをオンにすれば室内ノイズも抑えられるため、作業中や移動時の集中にも役立つ。
ANCのオンオフで低音に変化が出るのは若干気になるところだったが、音が悪くなるなどの悪影響はないことから、本製品の個性として捉えておけば問題なさそうだ。
全体として、OneOdio A6は1万円以下という価格を考えるとコストパフォーマンスに優れたヘッドホンだ。高級機のような繊細さや静寂性には及ばないものの、音質・機能・快適性のバランスが取れており、高音質志向の入門機としておすすめできる。初めてワイヤレスヘッドホンを購入する人にもおすすめできる一台だ。
