
NVIDIAは、5月20日から台湾・台北で始まった 「COMPUTEX 2025」 に合わせて、メディア向けにコンシューマーの最新テクノロジーを紹介するデモショーケースを実施した。
このデモショーケースでは、「RTX Remix」 の最新パッチで追加された新機能や、今年後半のリリースを予定している配信者支援のAIエージェント 「Streamlabs Intelligent Streaming Assistant」 、ローカルAIアシスタント 「G-Assist」 を使ったデモが披露されたほか、発売したばかりの 「GeForce RTX 5060」 のパフォーマンスをチェックできるデモも用意されていた。
「RTX Remix」 最新パッチの新機能:フレームレート向上、Transformer AIモデルへのアップグレードなど
まずは 「RTX Remix」 の最新パッチによって追加された新機能について。
RTX Remixは、NVIDIAが開発したクラシックPCゲームを最新のグラフィック技術でリマスター化するためのMod制作プラットフォームで、従来は困難だったレガシーゲームのグラフィックリマスターが、より効率的かつ高品質に制作できるようになるというもの。

こちらはValveの名作ゲーム『Portal』をRTX Remixを使ってリマスターした『Portal with RTX』。5月19日に発売したばかりの 「GeForce RTX 5060」 のチップセットを使って1080p解像度で動作させている。
今回の最新パッチでは、マルチフレーム生成を使ってパフォーマンスを向上できるDLSS 4が利用できるようになった。
NVIDIAが開発した 「DLSS」 は、AIを利用した画質・フレームレート向上技術。最新のDLSS 4では、マルチフレーム生成によってフレームレートが飛躍的に向上するほか、従来のCNN (畳み込みニューラルネットワーク) ではなく、高度なTransformer AIモデルの利用により、より高い画質で映像を生成できる。すでに125以上のゲームおよびアプリケーションが対応。


デモでは、従来のDLSS 3.5で85FPS程度だったのが150FPS程度に向上しているのが確認できた。これで144Hzディスプレイの性能を最大限に活かしてプレイすることができる。


レイトレーシング再構成モデルは、新たにTransformer AIモデルにアップグレード。従来まではレイトレーシング描画時に発生するノイズを除去する際に、床のタイルの傷や汚れといった細部がぼやけて失われてしまっていたが、新モデルにアップグレードしたことで、このようなディティールを損なうことなく描写できるようになった。

レイトレーシングによる間接光の表現をよりリアルにしてくれる 「ニューラルラディアンスキャッシュ」 の追加も見逃せないポイントだ。パフォーマンスに影響を与えることなく、間接光の精度を上げてくれる。
たとえば、プレイヤーがスイッチを押すことでライトの色が青色から黄色になるというシーンで、従来までは間接光のレスポンスが1秒ほど遅れていたため、スイッチの上で短くジャンプすると、ライトは青色から黄色に一瞬変わるものの、床の反射光はずっと青色のままという違和感が発生してしまっていた。
ニューラルラディアンスキャッシュをオンにすることで、間接光の精度が大幅に向上し、同じシーンの床の反射光もライトと同じタイミングで黄色に変化していることが確認できた。
配信者支援のAIエージェント 「Streamlabs Intelligent Streaming Assistant」
次は、NVIDIAとStreamlabs、Inworld AIの協業によって生まれた配信者支援のAIエージェント 「Streamlabs Intelligent Streaming Assistant」 について。
通常、TwitchやYouTubeなどの配信者はゲームをプレイしながら視聴者からのコメントをチェックし、音声や映像にも気を遣わなくてはいけない。大手の配信者であれば数人でチームを組んで対応にあたっているが、個人の配信者がこれらすべてのタスクを1人で担当するのは難しい。
そこでAIエージェントを活用して配信者の負担を減らし、個人でも高品質な配信を行えるようにしてくれるのがStreamlabs Intelligent Streaming Assistantだ。

デモでは、『フォートナイト』のゲーム開始時に降下地点をどこにすべきかAIアシスタントに尋ねたところ、AIエージェントが武器などが豊富な地点を提案してくれたほか、ライブチャットで提案された地点のフィードバックをまとめてくれた。
配信者が無言になってしまった際には、ゲームプレイの状況をAIエージェントが認識し、それに応じた話題を自動的に振ってくれる。たとえば 「ここの工業地帯の雰囲気はなかなか緊迫していますね」 「そのスナイパーライフルはどう使うつもりですか?」 など。


AIエージェントはプロデューサーとしても活躍してくれる。ゲームに負けたことをAIエージェントが感知すると、「GAME OVER」 のようなビジュアル演出&効果音付きで画面にしばらく表示し、その後配信者側の映像に戻す、という作業をすべて行ってくれていた。この際にリプレイ映像も記録しており、配信者が 「リプレイを見せて」 とお願いすると瞬時にリプレイ映像を表示してくれていた。
マイクをミュートにしたまま話し始めてしまった、といううっかりミスにも対応してくれる。マイクをミュートしたまま配信者が話し始めたことをAIエージェントが検知すると、マイクがミュートになっていると指摘。解除するよう音声で頼むとすぐにミュートを解除してくれた。

AIエージェントの外見や性格はカスタマイズが可能。見た目については、顔の動きや表情を音声データに合わせて自然に生成する 「Audio2Face」 モデルの技術を活用している。
性格変更のデモでは、AIエージェントの性格を 「中立」 から 「皮肉屋」 に設定して 「このゲームで私が勝てる見込みはあると思う?」 と質問したところ、「マジで言ってる?そのエイムと判断力じゃ、ストームトルーパーの射撃並みに頼りないね」 と辛辣だがユニークなコメントを返してくれた。
このような配信者とAIエージェントの掛け合いは、配信中に視聴者を楽しませる要素としても十分に成り立ちそうだ。
自然言語でお願いするだけで設定変更や外部APIを呼び出す 「G-Assist」

PCの操作や外部APIの呼び出しを音声もしくはテキスト入力でお願いできるローカルAIアシスタント 「G-Assist」 のデモでは、「『Counter-Strike 2』の設定を最適化して」 とお願いするとゲームを起動して設定を変更したり、「今のライティングは退屈だから変えたい」 「もっと明るくして」 というとPCのRGBライティングを変更したり。

さらに 「GPUやCPUの使用率の30秒間のグラフを表示して」 とお願いするとリアルタイムのベンチマークグラフを表示してくれていた。

G-AssistはDiscord、Spotify、SignalRGB、Google Geminiなどのプラグインに対応しており、「『Counter-Strike 2』の次の大会日程はいつ?」 と聞くとGeminiが日程をインターネット上で検索して教えてくれたり、「Discordで5分後にオンラインになるとチャットで伝えて」 と言うと5分後にオンラインになる旨をDiscordのチャットに投稿するといったデモも披露された。
ChatGPTと協力して、GSS (GeForce Streamline SDK、ゲームやアプリにAI処理や拡張機能を組み込む仕組み) のプラグインを作成するデモも紹介。「プラグインを作りたい」 とAIにお願いすると、どんなプラグインにするのかを対話形式でやりとりするだけで、Pythonのコードを自動で作成してくれる。コーディングの知識や経験がなくても、好きなアプリやAPIを使ってプラグインを作成可能だ。

また、AIアバターとの会話を通じてPCを操作する 「Project R2X」 のデモも披露された。一般的な生成AIと同様に、PDFのような資料を渡して内容を要約してもらったり、グラフの傾向などを解説してもらうことも可能。もちろん多言語に対応するため、中国語の資料を英語で解説するようにお願いすることもできる。
RTX 5060・RTX 5090のパフォーマンスもチェックしてきた

「GeForce RTX 5060」 のパフォーマンスをチェックできるデモでは、DLSSをオフにした状態とオンにした状態のパフォーマンスを実機で見比べることができた。

『Wuchang Fallen Features』では、DLSSをオンにするだけで3倍近くフレームレートが向上。また、オフの状態ではキャラクターの髪の毛や背景の窓の格子などにチラつきがあったが、オンにするとチラつきがかなり軽減されて画面が見やすくなっていた。



同じように『サイバーパンク2077』でもDLSSのオンとオフを比較。フレームレートは34FPS→196FPSと大幅に向上しており、コーヒーマシンやガラスの映り込みの表現がよくなったり、ノイズが改善されるなど、DLSS 4の恩恵が感じられた。
このほか、ゲームに関連した機能だけでなく、RTX 5090搭載PCで生成AIを活用した作業や動画編集時におけるパフォーマンスをチェックできるデモも用意されていた。



(提供:NVIDIA)