『Microsoft Flight Simulator 2024』エグゼクティブ・プロデューサーJorg Neumann氏に単独インタビュー。42年の歴史で新たな挑戦となる本作の違いを語る

今月12日、Microsoftは米アリゾナ州にあるグランドキャニオンにおいて『Microsoft Flight Simulator 2024』(以下、『MSFS 2024』) のメディア向けグローバルプレビューイベントを実施。本イベントには世界中からメディアが招待され、日本からも弊媒体を含めた一部メディアが参加した。

本イベントでは『MSFS 2024』の最新情報が明かされたが、あわせてエグゼクティブ・プロデューサーとして本作の統括責任者を務めるJorg Neumann氏へインタビューを行うことができた。

『MSFS 2024』が『MSFS 2020』のアップデート作品ではなく、スタンドアローンのタイトルとしてリリースされることになった経緯や、『MSFS 2020』との違いについて話してくれた。また、日本のコミュニティについて言及さえれる場面もあった。

本稿ではそのインタビューの内容を余すことなくお伝えする。ちなみに本イベントで明かされた『MSFS 2024』の最新情報は別稿でまとめているので、気になる方はぜひそちらも見ていただきたい。

※本記事に掲載されている『Microsoft Flight Simulator 2024』の体験および感想は、Xboxからの招待によるイベント参加を通じて執筆しています。

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『Microsoft Flight Simulator 2024』責任者Jorg Neumann氏にインタビュー。期待を上回った前作から早くもアーキテクチャを変える理由

今回はお招きいただきありがとうございます。本日はよろしくお願いします。『MSFS 2024』は『MSFS 2020』とは異なるスタンドアローンの作品となるということですが、なぜ『MSFS 2024』のアップデート作品としてでなく、スタンドアローンのタイトルとしてリリースすることになったのか。開発思想やビジョンについて、もう少し詳しく解説してもらいたいです。

『MSFS 2020』とは別のスタンドアローン作品になるのはご指摘のとおりです。なぜそうしたのかというと、「必要になったから」 というのが答えになると思います。『MSFS 2020』では大量のアドオンがリリースされ、コンテンツも増えました。その結果クライアントソフトのサイズも大きくなり、必要とするメモリ量も増えた。その上で『MSFS 2020』で『MSFS 2024』を構築しようとするのは技術的に難しく、またクリエイターコミュニティに対してもこうするのが必要だということになりました。

『MSFS 2020』では多くのコンテンツが作られましたが、そのコンテンツ量というのは当初リリースした時点で想定できていたものだったのでしょうか?

私の期待を全く上回るものでした。2007年に出来たクリエイターコミュニティからは最初ほとんどがフリーウェア (無料のコンテンツ) という形で提供されていましたが、その後ペイウェア (有料コンテンツ) を販売する方も出てきて、「売れる」 と分かると会社としてペイウェアを作る方も出てきました。『MSFS 2020』がリリースされた2020年では200社がコンテンツを販売していましたが、現在は500社にまで増えました。そういうこともあり、『MSFS 2024』をスタンドアローンで出す必要があったという背景があります。

ということは、『MSFS 2020』を発売した段階で『MSFS 2024』のような続編タイトルを作るといったロードマップは当初はなかったということなんですね。

そういうことです。『MSFS 2020』のリリース後にはすでにいくつか課題を認識していました。PC版の『MSFS 2020』がリリースされてから約1年後にXbox版がローンチとなり、その後に映画『トップガン マーヴェリック』とのコラボ拡張コンテンツ 「Top Gun: Maverick Expansion」 がリリースされましたが、たぶん2022年5月頃だったと思いますが、「これはもう無理だ」 という結論に至り、新しい『Microsoft Flight Simulator』を作ろうという話になりました。

『MSFS 2020』はリリース当初10年間のサポート期間が謳われていただけに、今回の『MSFS 2024』の登場にはビックリした方も多かったと思います。そう考えると、今後『MSFS 2028』『MSFS 2032』といったタイトルがリリースされる未来もあり得ると考えても良いのでしょうか。

アッハハハッ!(笑) その質問はどう答えるのが一番良いかなと少し悩みますが、ひとつ答えるとしたら、まず『MSFS 2020』には当然ファンもいると思いますし、当初の計画通りアップデート (コンテンツ追加も含めて) の配信は今後も続いていきます。そして『MSFS 2024』をどこまで続けるのかについては、「これ以上は無理」 という限界が来たときに考えると思うんです。技術はどんどん新しいものが生まれており、我々も取り残されないように追いついていかなければならない。そういう意味では、もしかしたら確かに『MSFS 2028』などが出てくる可能性はあります。現時点で将来を見通せているか、プランを持っているか、と言われたら、答えは 「NO」 ということになります。コミュニティの人たちにオプション (選択肢) があると考えていて、その人たちに 「MSFSは大好きか」 と聞いてみるなどコミュニティに耳を傾けて彼らの願いを叶える、そういうスタンスでいます。

ちなみに、あなたは 「Forza」 をプレイしたことがありますか?

はい!プレイしたことはありますよ!

そうですか!「Forza」 シリーズも当初はシンプルなレースゲームでしたが、2012年にPlayground Gamesがオープンワールドでレースが楽しめる『Forza Horizon』が展開されるようになったりと (フランチャイズが) どういう風に伸びていくか分からないですし、もしかしたら 「Flight Simulator」 もまったく違うものになったり、「Flight Simulator」 のまま発展していくのか、いろんな可能性があると思います。

(※筆者補足:「Forza」 シリーズは、Xboxで展開されているカーレースタイトル。2005年に初作の『Forza Motorsport』が発売してから「1〜7」 までナンバリング作品が展開されたのちに、2023年にまったく新しい『Forza Motorsport 2023』が発売している。そして、同じ 「Forza」 シリーズでありながらもオープンワールドでレースが楽しめる 「Forza Horizon」 シリーズも展開されている。

ちなみに『MSFS 2020』はサポート期間が発売から10年と言われていましたが、『MSFS 2024』も10年間のサポート期間が用意されていると考えても良いのでしょうか。

現状ではサポート期間に対して具体的な計画はなくて、利用者の方々がずっと幸せでいられる限り継続してサポートをしていく予定です。ですので、10年後でサービスが終了するとか、サーバーが突然シャットダウンする、というような期限を設けることは現時点ではないと思います。

『MSFS 2024』が発売したあとも『MSFS 2020』にコンテンツを追加をしていくと発表されていましたが、その追加するコンテンツにはどういった差があるのでしょうか。

はい。両タイトルに向けてコンテンツは配信していく予定で、空港や航空機など一部は共通するコンテンツになる予定です。一方で、エンジンが違うわけなので追加するコンテンツには違いが生まれることもあると思います。具体的にワールドマップ、都市のアップデートについては共通するものが多いと思いますが、シムの部分については同じものにはならないはずです。

ちなみに、2020年から2024年までの間に配信されたアップデートは50個ありました。そして2024年から2028年までは50個のアップデートを予定しています。また、『MSFS 2020』のアップデートは今後38個を予定していて、それをすべてリリースするとなると2028年までかかる計算となります。

『MSFS2020』がリリースされてからこれまで4年間でたくさんのワールドアップデートが配信され、ジオグラフィーのクオリティアップが行われてきました。一方で、特に都市ですが4年間のうちに従来の街の形から変わった場所もあると思います。アップデートで「コンテンツを追加する」だけじゃなく「作り直している」部分もあるのでしょうか。

いくつかありますよ!最近の例で言うと、フランクフルトやオーストリアのウィーン、ロンドンにも変更を加えました。また、ニューヨークについてはいま絶賛作業中ですし、今後ロサンゼルスや東京にも変更を加える予定です。

そうすると、街や空港のアップデートを適宜していることになると思うのですが、それら “街の変貌” に関する情報はどうやって得ているのですか。

例えば、東京などはBing上にある2013年のデータをもとに作成しているんです。そして、Bingはたしか2023年に新しいデータを作成したはずなんですよね。まだ私たちも受け取ってはいませんけれども、それを受け取り次第、再び街のアップデートをしていく予定です。

北米・ヨーロッパ・日本・オーストラリアは基本的にBingのデータに頼っています。それ以外の例えばブラジルなどのラテンアメリカとかアフリカ、アジアのあちこちの国については私たち『Flight Simulator』のチームが担当しています。

ちなみに、ご存知ないかもしれませんが日本にはガンダムのスタチューがあるんですけれども、実は『MSFS』でもちゃんと存在していて、コミュニティのなかでは少し話題になったりしたんです(笑) 現実の世界がしっかりとゲーム内で再現されているんだなあと少し感動した記憶があります。

それはクールだね!(笑) 世界のどこかの都市をアップデートしようか考えたとき、まずツーリストの組織やMicrosoftの現地支社の人たちに 「そろそろアップデートは必要?」 などと聞くなど現地のローカルの人たちの意見を聞いてアップデートしていっています。もちろん日本のコミュニティもあるので、「アップデートが必要」 といった声が多く出ているようであればそこからアップデートをするといったこともあるんです。

日本のコミュニティも少しずつですが大きくなっている印象があります!

『MSFS 2020』をローンチした1ヶ月後、すぐにワールドアップデートとして日本の高精細化を行いました。いま調べてみたら2020年9月ですね。あのアップデートのリリース後、日本のコミュニティは2倍に拡大していて、いまもその規模は継続しているんです。それはとても凄いことだと思っています。

ちなみに今回の『MSFS 2024』では、実在の航空会社や航空機メーカーのデータが収録されていると思うんですけれど、どれくらいの会社からライセンスを取得できているんですか。

100、200ぐらいかな?ボンバルディアはライセンスが取れていないけれど、航空機メーカーで言えばほとんどのライセンスは取れているね。リアジェットともライセンスを締結しています。

日本の航空会社のライセンスは取得できていませんが、航空会社に関しては世界の航空会社のうち25%ほど。実はパンナム (パンアメリカン航空/1991年で操業終了) もライセンスが取れているんですよ。

たぶん難しいと思うんですけれど、個人的には三菱からライセンスを取得してMRJをゲーム内で作りたいと思っているんです。まだ “実現できていない夢” と呼んでいるのですけれども(笑)。あとは、いつかYS-11も再現したいなと思っています。

ありがとうございました!

関連リンク
Microsoft Flight Simulator 2024 | Xbox

(取材協力画像提供:Microsoft)

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