Apple Pay、不正利用を10億ドル削減。加盟店には1,000億ドル超の追加売上、Money 20/20 USAで最新統計を公表

Appleは米ラスベガスで開催された「Money 20/20 USA」において、Apple PayおよびApple Wallet担当バイスプレジデントのジェニファー・ベイリー氏が基調講演を行い、両サービスの最新統計と今後のビジョンを発表した。

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不正利用率を最大90%低減、加盟店に経済効果1,000億ドル超

Appleの内部データおよびパートナー企業の分析によると、Apple Payは過去1年間で世界中のクレジットカード・デビットカード取引における不正利用を10億ドル以上削減した。

従来のカード取引と比較して不正率を60%以上低減しており、ケースによっては85〜90%に達する事例もあるという。さらに、承認率の向上と利用促進効果により、Apple Payは加盟店に1,000億ドル超の追加売上をもたらした。

現在、Apple Payは世界89市場で展開され、11,000以上の銀行やネットワークがサポートしている。米国内では小売店の90%以上で利用可能で、11年前のサービス開始当初(3%)から大きく成長している。

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Apple Walletは「決済手段」から「デジタルID基盤」へと進化

また、ベイリー氏は講演内で、Apple Walletについて「物理的な財布をより安全で、プライバシーを重視したデジタルウォレットに置き換えるというビジョンで構築された」と説明した。そして、このビジョンは発行会社や加盟店、交通事業者、政府機関などとの緊密なパートナーシップによって、徐々に現実のものになろうとしている。

Apple Walletは現在、Apple Payによる決済機能に加え、搭乗券、交通カード、ホテルキー、車のキー、デジタル身分証明書などを統合。ユーザーは世界250以上の地域・800都市で公共交通機関へのタップ乗車が可能だ。

非接触決済を受け付ける「Tap to Pay on iPhone」も世界48市場に拡大し、1,500万以上の加盟店が導入しているように、Apple Walletの方向性はやはり「決済・移動・本人確認」の一体化、「デジタルIDプラットフォーム」として役割を担うことだ。

今回、Appleが「Money 20/20」で強調したのは、「セキュリティ・プライバシー・信頼性」を軸にしたエコシステムの拡張。ここでひとつ注目すべきは、同社は自ら金融業者化するのではなく、既存の金融・交通・行政インフラとの共存路線を選んでいる点である。

Google PayやSamsung Walletが比較的オープンAPI中心に拡張を進めているのに対し、Appleはハードウェアとセキュリティ設計(Secure Enclave、Face IDなど)を中核として、ID・決済・アクセス管理を統合する戦略を取る。

特に、Secure Enclaveで保護された環境にデジタル身分証明書やキー情報などの機密データを格納し、デバイス外への流出を防ぐ設計は、他社にはない高い信頼性の基盤となっている。これが、政府機関や交通事業者といった最高レベルのセキュリティを求めるパートナーとの提携を可能にしている主要因である。

また、iPhoneの普及率が高い市場ほど、Apple Walletが “生活インフラ化” しやすいという構造的優位もある。すでに交通カード・ホテルキー・デジタルIDが同一アプリ上で完結する仕組みは、ユーザー体験の面でも他社を一歩リードしている。

今後Appleは、米国や日本など一部地域で先行展開するデジタルID(運転免許証・学生証など)やTap to Pay事業を軸に、ウォレットを「決済ツール」から「社会的証明のプラットフォーム」へと発展させていくことが予想される。

(画像提供:Apple)

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