トクトクと鼓動する未来。iPS細胞から生まれた “ミニ心臓” を大阪・関西万博で見てきた

今月13日にいよいよ開幕する大阪・関西万博。開業を前に報道関係者を対象としたメディアデーが実施され、各パビリオンをひと足先に体験してくることができた。

中でも記憶に残ったのが、iPS細胞で作った 「ミニ心臓」。「いのち輝く未来社会のデザイン」 がテーマの今回の万博のなかでも、命を象徴する展示物として注目されているもののひとつだ。

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大阪・関西万博でiPS細胞で作った 「ミニ心臓」 が展示

大手の人材派遣会社パソナグループのパビリオン 「パソナ ネーチャーバース」 で展示されているこの 「ミニ心臓」 は、大阪大の澤芳樹名誉教授らが人工多能性幹細胞 (iPS細胞) を使って制作したもの。iPS細胞由来の心筋シートをヒトの心臓に似た形に立体化させた。

大きさは約3cm〜5cmほどと小さく、また血流が流れているわけではないものの、本物の心臓のようにトクトクと拍動を打っている。

このミニ心臓に使われている技術は、将来の心臓病の治療に役立つことが期待されている。具体的には、心臓の病気のひとつである 「虚血性心筋症」 を患う方の心臓に、心筋シートを貼り付けることで、心臓の拍動を助けることができるとされる。

すでに臨床試験もはじめられており、2023年までに複数人の患者の心臓にシートを貼り付け、その後の経過も良好だという。

このシートを手がけたのは、大阪大学の澤芳樹名誉教授が最高技術責任者を務めるベンチャー企業「クオリプス」。前述の臨床試験の結果等を受けて、厚生労働省に製造販売承認を申請した。iPS細胞由来の再生医療製品の承認申請は初めてだという。

この「ミニ心臓」は、単なる未来技術の展示にとどまらず、私たちの命に直結する医療の最前線を象徴する存在だ。iPS細胞による再生医療が現実の治療として浸透する日も、もはや遠くないのかもしれない。

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