楽天とサントリーから学ぶ、Metaプラットフォームを活用したAI・クッキーレス時代の新たなマーケティング戦略とは

Meta日本法人のFacebook Japanは、広告主・クリエイターを対象としたイベント 「House of Instagram Japan 2024」 を6月12日〜13日に開催した。

本イベントでは、「AI・クッキーレスへの対応」 などをテーマに、Metaが提供するプラットフォームを活用したマーケティング戦略の事例紹介が行われた。

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楽天の取り組み

事例紹介のひとつとして、楽天市場マーケティング部ディスカバリーマーケティング課シニアマネージャーの近谷康氏が 「AI、クッキーレス時代のマーケティング」 と題したセッションに登壇した。

マーケティングのデジタル化が進む昨今、5年前と比べて大きく変化したことについて問われた近谷氏は、「個人情報の保護」 や、プラットフォーム規制のひとつである 「シグナルロス」 、「AIの民主化」 の3点を挙げた。

シグナルロスについては、「Cookieが使えなくなる」 ことはEコマース業界においては大きなインパクトがあるところなので、対応はとても重要だとする。直接的なシグナルロスを何かで置き換えていくことは当然していくものの、リターゲティングやCookieを使った手法に依存しないことについても、真剣に考えているとした。 

そのひとつの手法が、Meta社のAIプロダクトを活用するというものだ。2021年には80%もリターゲティングに依存していた。しかし、2024年はその比率は20%以下に低下させたという。一方で、増えたのがプロスペクティングだ。

これまでは、ユーザー毎にパーソナライズされた商品がリコメンドされるダイナミック広告を活用するリターゲティング手法がメインだったものの、昨今のプラットフォーマーの規制のタイミングでMetaと連携し、ファーストパーティデータをフルで活用することによって、プロスペクティングの比率を高めることができたという。

さらに、AIを最適化したMetaのコンバージョンエンジン 「ASC (Advantage+ Shopping Campaign)」 を活用したことで、ASCを活用した広告配信が2023年第4四半期から2024年第1四半期の間に31% → 50%まで伸び、WEB・アプリ両方のシグナルに関して最適化がかけられるようになったとのこと。ASCは商品販売を目的とする広告配信に特化した自動化キャンペーンで、もともとWEBサイトコンバージョン向けに作られたプロダクトだったが、2023年第4四半期からアプリのコンバージョンも最適化をかけられるようになっている。

また、クリエイティブを利用した取り組みも行なっている。Instagram、Reelへの最適化はもちろんのこと、コンテンツクリエイターを活用したマーケティング戦略も積極的に展開している。たとえば、四半期に一度実施している 「楽天スーパーSALE」 の認知度を上げるため、コンテンツクリエイターとのタイアップを複数回実施しており、クリエイター自らの言葉で 「楽天スーパーSALE」 を語ってもらうようにしているとのことだ。

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サントリーの取り組み

イベントでは、サントリーの取り組みについても紹介があった。Facebook Japanの営業部長を務める丸山祐子氏と、サントリーホールディングス宣伝部課長を務める前田真太郎氏が登壇し、「サントリーに学ぶ縦長動画、Instagramでの取り組みについて」 というセッションが実施された。

サントリーでは、プレミアムモルツや角ハイボールといったロングセラーブランドも多数あるなかで、「サントリー生ビール」 を昨年発売していたり、炭酸水で割って飲む新しいビール 「ビアボール」 など、直近でもいくつかの新製品を投入している。そしてこれらの新製品には20代〜30代といった若年層をターゲットした商品も多く展開している。

一般的なイメージとして、サントリーといえばテレビ広告を積極的に活用するといった広告戦略をとっているかのように感じられるかもしれないが、テレビのHUT (総世帯視聴率) の低下にともなって、テレビのみでは若年層のリーチを取り切ることができず、デジタル広告の活用は必須と捉えており、総広告費用におけるインターネット広告費の割合を高めている。

ただし、テレビからデジタルへ出稿をアロケーションしたとしても意味は薄いため、ターゲットや広告目的に応じてクリエイティブやメディアをうまく使っていくことが大事だと説明する。

そのひとつとして展開しているのが、Metaのプラットフォーム 「Instagram」 だ。サントリーは同プラットフォームへの投資を2023年比で54%増やしている。

その理由として、前田氏は 「幅広い利用者がいること」 「強い説得力をもつクリエイターが存在すること」 「Feed、Stories、Reelなどさまざまなフォーマットが存在すること」 を挙げている。特に3つ目については、いろんな活用の仕方がありさまざまなファネルへのアプローチができると、Instagramへの魅力について語った。

サントリーがいま最も注力しているのは、縦型動画だ。もともとCMとして展開していたものを縦型化した動画に加えて、縦型動画用に制作したオリジナルの広告動画も展開し、それぞれのファネルに適切にアプローチできるようにしている。どちらも広告として効果は発揮しているものの、やはり縦型用に制作した動画のほうがより高い効果を発揮していることを実感しているという。

昨年に実施したキャンペーン事例として、スペインのCAVA (スパークリングワイン) のブランド 「フレシネ」 において、年末のパーティシーズンに20〜30代の女性をターゲットにした展開したキャンペーンを挙げた。

そのなかで、こうした若い女性層の場合は 「テレビCMを流せばいい」 あるいは 「特定の大きな媒体から情報が出ていればいい」 といった戦略よりも、さまざまな接点を設けて、さまざまな切り口で展開するのがより効果的で、サントリー自身の媒体から広告を打ったり、コンテンツクリエイターとのコラボ企画を出したりすることで、流行を感じとり製品の購入に繋がることがあると感じているという。

展開する広告動画は、海外のようなパリピ志向のものではなく、実際に自分が楽しめることを想像させる 「自分ゴト化」 を日本の消費者に合う広告を制作することに力を入れた。具体的には、日本の消費者の等身大のパーティのシーンをストーリー仕立てで描いた縦型動画を8本制作した。

そして、これに加えて著名人から身近なコンテンツクリエイターなどとのタイアップを手がけ、さらに雑誌のタイアップも行ったりとあらゆる角度からチャンネルを利用した広告戦略を展開したという。

上記のキャンペーンを展開以降に、どれくらいの消費者に認知されているのか調査したところ、メインターゲットとした20〜30代の女性の約4割に認知さえていたことが明らかに。これはテレビでの広告展開をしていない中での結果であったことから、今回のInstagramをコアとしたコミュニケーションはうまくできていたのではないか、と振り返った。

また、作成したコンテンツ別にもユーザーによって認知されていたものが異なり、アッパーファネル (認知・興味を持ってもらう段階) には静止画素材が、そしてミドルファネル (購買に繋がる段階) には動画素材がより効いていたことも分かったという。ただし、ひとつ反省点としてあったのが、海外でよくあるパリピ志向の動画についてもInstagramというプラットフォームの性質も相まってか、当初の予想よりも多く効果を発揮していたことから、それらもうまく組み込むことも大事なのでは、と話していた。

現代のマーケティングにおいては、単なる広告の配信ではなく、データの活用やAIの導入、そしてクリエイティブの最適化が求められている。クッキーレス時代においてもデータを最大限に活用し、ユーザーに寄り添う広告を実現するためには、テクノロジーと人間味のあるアプローチの両立が鍵となると思われる。楽天やサントリーの取り組みは、他の企業にとっても大きなヒントとなるはずだ。マーケティング戦略が急速に変化する今、いかにして消費者との繋がりを再定義し、最適化していくかが、企業の成長を左右する重要な要素となっていくのではないだろうか。

(画像提供:Facebook Japan)

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