
Metaは7月27日、AIグラスを使って社会や仕事の課題を解決しようとしている米国の30団体に、「AI Glasses Impact Grants」として総額約200万ドル(約2億円)を支援すると発表した。
対象となるのは米国18州の団体で、AIグラスを使って仕事を安全にしたり、学習を助けたり、障害や認知機能の低下がある人の生活を支えたりする取り組みを進めている。
この助成プログラムは2026年1月に始まったもので、AIグラスをすでに活用している団体や、AIグラス向けの新しいアプリを開発する企業などにMetaが資金を提供する。今回は約500件の応募の中から、実際に役立つ成果が出ているか、今後さらに広げられるか、AIグラスが特に役立つ分野かどうかなどを基準に30団体を選んだ。
助成金には2つの種類がある。すでにAIグラスを使った活動を進めており、その規模をさらに広げようとしている団体向けの「Accelerator Grants」と、Metaの開発ツール「Device Access Toolkit」を使ってAIグラス向けアプリを作る開発者向けの「Catalyst Grants」だ。
Metaが今回の取り組みで重視しているのは、AIグラスを日常生活だけでなく、仕事の現場でも使える道具として活用すること。たとえば、はしごの上で作業する人や、自動車を修理する整備士は、スマートフォンを手に持って画面を見るのが難しい。車いすで街を移動する人も、両手を使いながら周囲の情報を確認したい場面がある。
こうしたとき、メガネ型のAIデバイスなら、作業を続けながら音声などで情報を受け取れる。Metaは、AIグラスが仕事の安全性を高めたり、作業を効率化したりする可能性があると考えている。
建設や自動車修理、農業などでAIグラスを活用
今回選ばれた団体の中には、AIグラスを仕事の現場で使おうとしているところがある。
ミズーリ州のStrategic Workforce Development(SWD)は、建設業界で働きたい人を支援するため、MetaのAIグラスを「仕事を教えてくれる道具」として使う。
利用者は作業中に、手を止めずに手順や安全に関する説明を受けられる。また、作業の様子を記録して、どのような技能を身につけたかを示す資料として就職活動に利用する。
カリフォルニア州のProformance-AIは、路上で故障した車を修理する整備士向けのAIアプリを開発する。AIグラスを通じて、車の故障原因を調べるための情報をリアルタイムで提供。整備士は作業から目を離さずに必要な情報を確認でき、故障した車をより安全かつ早く直せるようにすることを目指す。
ミシガン州のOnsiteは、現場で働く業者向けにAIグラスとの連携機能を開発。作業員は声だけで作業メモを残したり、見積もりを作ったり、技術的な問題について助言を受けたりできるようになる。
ニューメキシコ州のMycelia Foundationは、地方でインターネット回線を設置する作業員を支援する。高所で作業するときに、AIグラスから安全に作業するための案内を受けられるようにするというもので、スマートフォンを手に持てない場所でも、安全を確認しながら作業できるようにする狙いだ。
ノースカロライナ州のAgerpointは、農家や農業従事者がAIグラスを使って、作物の状態をリアルタイムで確認できる仕組みを提供。農作業を止めずに作物を確認できるようにし、農業の現場でAIグラスを役立てることを目指している。
AIグラスは、障害のある人や認知機能が低下した人を支える用途にも使われる。カリフォルニア州のOurLife Labsは、マサチューセッツ州のReality Hackと協力し、初期段階の認知症や軽度の認知機能障害がある人向けのAIアシスタント「OurLife」を開発している。
AIグラスを通じて、毎日の生活で必要なことをその場で案内したり、やるべきことを一つずつ教えたりする。本人ができることを増やすだけでなく、家族や介護する人にも役立つ仕組みを目指している。
ニューヨーク州のUnited Spinal Associationは、車いすを利用する人がAIグラスを使って、公園や公共施設にある「使いにくい場所」や「移動のじゃまになる場所」を手を使わずに記録できるようにする。記録した情報を公園の管理者や行政に伝え、米国の障害者向け法律であるADAに沿った施設の改善につなげる。
テキサス州のEaster Seals Greater HoustonのBridgingApps Programは、AIグラスがどのような人に役立つのかを調べる実験を行う。
対象は、視力が低い人、知的障害や発達障害がある人、年齢とともに記憶や判断力が変化した人の3つのグループ。実際にAIグラスを使ってもらい、どのような支援ができるのかを調べる。将来的に、こうした技術をより多くの人に使ってもらうための基礎となるデータを集める狙いだ。
語学学習にも活用。5団体はRay-Ban Meta向けアプリを開発
教育分野では、カリフォルニア州のImmerse Inc.がAIグラスを使った語学学習アプリの開発を進める。
同社のサービスは48件の学術研究をもとに開発されており、すでに20万人以上が利用しているという。AIグラスを使うことで、机に向かって勉強するだけでなく、日常生活の中でリアルタイムに英語などの言語を練習できるようにする。
今回選ばれた30団体は、米国18州に広がっている。Metaは資金を提供するだけでなく、専門家による支援や団体同士の交流、取り組みの紹介なども行うとしている。
また、Catalyst Grantsに選ばれたOurLife Labs、Proformance-AI、Immerse Inc.、Onsite、Agerpointの5団体は、Metaの「Device Access Toolkit」を使い、それぞれのアプリを「Ray-Ban Meta」に組み込む予定だ。
Metaによると、5団体のアプリは2026年後半にRay-Ban Metaへの対応を予定している。AIグラスで使える機能が増え、さまざまな仕事や生活の場面で活用できる可能性が広がる。
助成対象となった団体は、7月27日から29日までニューヨークで開かれる「AI Glasses Impact Grant Celebration & Community Summit」に参加する。3日間のイベントには、助成を受けた団体のほか、開発者や地域の関係者も集まり、それぞれの取り組みを紹介する。技術に関する講習会も開かれる予定だ。
Ray-Ban Metaを中心にAIグラスの普及を進めるMetaにとって、今回の助成は、AIグラスを実際の社会で役立てる新しい使い方を増やす取り組みだ。今回の取り組みを通じて、AIグラスを日常的に身につけるデバイスとしてだけでなく、仕事や教育、障害者支援、農業など、さまざまな場面で人を助ける道具として広げようとしている。
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