
Diver-Xは、汎用インターフェースブランド 「Melt Interface」 の第1弾製品として、クリエイター向け高機能マウス「Melt Mouse」を正式発表した。
本製品は、デザイナーならではの視点で発信するガジェット系インフルエンサーのParaph氏とのコラボレーションにより誕生したもので、日本時間10月28日(火)19時よりクラウドファンディングプラットフォーム「Kickstarter」でプロジェクトページが公開され、支援の受付が始まっている。
今回、筆者は「Melt Mouse」を開発するDiver-Xの本社を訪問し、同社CTOを務める浅野啓氏から開発背景や製品設計に込めたこだわりについて直接話を聞いてきたほか、実際に試作段階のサンプルを触り、同社がこれまで培ってきた技術力や開発環境を間近でチェックしてくることができた。
素材と設計にこだわり、Magic Mouseと並べても遜色ないデザインを実現

Melt Mouseは、マウス、トラックパッド、そしてカスタマイズできるデジタルボタン(テンキーやマクロキー)の3つがひとつになった3-in-1のワイヤレスマウス。
見た目からも分かるとおり、Apple製品を利用するユーザーに人気の「Magic Mouse」と遜色ないデザイン性や機能性を実現しつつ、さらに便利な機能を追加することで、「これひとつで何でもできる」ことを目指した製品だ。スクロールもMagic Mouseのように表面をなぞる方式を採用している。
今回製品について説明してくれたDiver-XのCTO・浅野啓氏によると、Melt MouseはMagic Mouseと並べて置いても負けないデザインを目指して作っているという。
本体外装は単一のアルミニウムブロックから切り出して作られており、トップには緩やかな曲面を持つ強化ガラスパネルを採用。指の動きに追従しやすく、指紋や皮脂が付きにくいマイクロテクスチャ仕上げとなっている。

底面には「MagSole」と呼ばれる着脱式の磁気ベースを搭載し、用途に応じて交換することで、摩擦の強さなどを調整できる。カラーも複数用意されていて、自分のデスク環境に合わせたカラーを選ぶことができる。好きなカラーを選ぶことで、作業のモチベーションアップにも繋がりそうだ。
現段階で準備されているMagSoleは、カラーの変更と滑りやすさの調整が可能だが、将来的には左右の高さの違うMagSoleを用意してエルゴノミクスマウスのように使えるようにするという想定もあるようだ。
本体サイズは約120×65×35mm、重量は約125g。Bluetooth LEおよびUSB-C接続に対応し、最大3台までのデバイスとマルチペアリング可能だ。
ハプティクスによってボタンを押したりスクロールする感覚を表現

大きな特徴のひとつが、カチッと音を出す機械部品をほとんど使わず、独自の振動(ハプティクス)技術によってクリックやスクロールの感覚を指に直接伝えることで、直感的で多用途な操作方法を提供している点だ。
クリック構造には、Diver-XがVRグローブ「ContactGlove」開発で培ってきたハプティクス技術を応用。内部のリニア共振アクチュエータ(LRA)によってクリック感やスクロール感を再現している。
クリックの重さやスクロールのノッチ感は専用ソフトウェア「Melt Studio」で調整可能で、操作ごとに反応強度を細かく設定できる。実際にサンプルを触ってみたところ、入力が確実に認識されたことを示す手応えがあり、物理ボタンと同じような感覚で操作することができた。
左右クリックとスクロールの他に、ミドルボタンも設定でき、たとえばアプリ画面を上下左右に自由にスクロールするといった機能を当てがうことができる。LightroomやPhotoshopなどで画像を拡大して編集するときなどに便利そうだ。
また、マウスのメインボタンである左右クリックに機械部品を使わないことで、部品の摩耗による故障を防ぎ、長期間使い続けられるというメリットもある。

マウス側面にあるサイドボタンは唯一機械部品を使っており、ここだけカチカチと物理的に押し込む仕組み。ボタンは1つだが、前後の判別ができるようになっていて、前側を押すと「戻る」、後ろ側を押すと「進む」といった操作を当てがうことができる。
また、サイドボタンを押しながらフリックすることで、ウィンドウを切り替える操作なども可能だが、現在はさらに3本指でのジェスチャーの実装に向けてソフトウェアの調整を行なっているとのことだ。

Melt Mouseは、マウス表面をタップすることでトラックパッドモード、長押しでテンキーモードへと切り替え可能。テンキーモードではトップ面にLEDインターフェースが浮かび上がる仕組みだ。
トラックパッドモードでは二本指スクロールやピンチズームなどのジェスチャー操作に対応し、デザインソフトやブラウザ操作をスムーズに行える。テンキーモードでは、数値入力のほか各キーにショートカットを割り当てられ、Adobe製品などでのツール切り替えやコマンド実行にも活用できる。
消費電力はハプティクスやLEDインターフェースを実装している関係で一般的なワイヤレスマウスよりも高く、バッテリー持続時間は1回の充電で2週間から1か月程度になるとみられる。


このため、ケーブルを繋いで有線利用する機会が多くなることを想定し、有線接続状態でも快適に使えるよう、マウス正面からケーブル接続部にアクセスできる構造を採用。さらに有線利用時にケーブルに振り回される感覚を減らすため、ケーブルはマウスの中心部に近い部分に接続する仕組みになっている。
専用ソフト「Melt Studio」では、クリックやスクロールの感覚、LED発光パターン、ショートカットやマクロ設定を自由に構成できる。カスタマイズ内容は、アプリケーションごとにプロファイルを保存しておけるため、Photoshop用・Blender用など用途ごとに操作性を切り替えられる。
また、トラックパッドモードではジェスチャー入力のカスタマイズができるなど、ユーザーのワークフローに合わせて柔軟に調整できるのも大きな魅力だ。
Kickstarter限定の割引も実施中

Melt Mouseは、3-in-1構造とハプティクス技術によって、入力デバイスとしてのマウスを再定義する試みといえる。Kickstarter上ではすでに多くの関心を集めており、今後の量産化と一般販売にも注目が集まりそうだ。
Melt Mouseの一般販売予定価格は280ドル(約4万3000円)だが、早期支援者向けには230ドル〜240ドル(約3万4500円〜3万6000円)のアーリーバード価格が設定されている。数量限定のため、一定数に達し次第終了する。
出荷は2026年第3四半期(7〜9月)を予定しており、リワードには交換用MagSoleセットや限定カラー版なども含まれる。
価格だけを見ると少し高めに感じる人が多いかもしれないが、使用する素材や機能にこだわっているため、妥当な価格設定と言える。複数のデバイスをひとつにまとめてデスクをスッキリさせたい人や、高機能なマウスが欲しい人はぜひ支援を検討してみてはどうだろうか。

