
電子書籍リーダーといえば、やはり「白黒画面」というイメージを持っている人が多いのではないだろうか。実際、多くの端末が文字表示に特化したモノクロ仕様で、目に優しく読書に適している一方で、コミックや雑誌、図解といったビジュアル重視のコンテンツでは物足りなさを感じることもある。
そんな中、楽天Koboが昨年春に発売した「Kobo Libra Colour」は、シリーズ初のカラーE Inkディスプレイを搭載したモデルとして注目を集めている。iPadのような高彩度の表示ではないものの、落ち着いた色味で読書に適したカラーを実現。これまで白黒で読んでいたコンテンツが、ほんの少し違って見えてくる。
今回、「Kobo Libra Colour」の実機を使って、マンガや小説、技術書、PDF、雑誌などさまざまなジャンルでその使用感をチェックしてみた。カラー表示が実際の読書体験にどのような変化をもたらすのか。Koboユーザーにとって買い替える価値があるのか。そのあたりを中心に、実際に使って感じたポイントを紹介していく。
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カラー表示対応7インチ画面を搭載した電子書籍リーダー

Kobo Libra Colourは、2024年5月に登場した楽天Koboの最新モデル。最大の特徴は、Koboシリーズとして初めて「カラーE Inkディスプレイ(Kaleido 3)」を搭載した点だ。これまでの電子書籍リーダーといえば白黒表示が当たり前だったが、本機ではついに色のある読書体験が可能になった。

画面サイズは前モデル「Kobo Libra 2」とほぼ同じ7インチ。重量は約200gと軽量で、防水性能(IPX8準拠)やページめくり用の物理ボタンも引き継いでいる。さらに本モデルは別売りのKobo スタイラス2に対応し、カラーでの手書きメモやハイライトが可能になったのも大きな進化点だ。
解像度は、白黒表示時は300ppiでこれまで通り文字がシャープに表示される。カラー表示は150ppiとなるが、マンガの表紙や雑誌の挿絵、技術書の図表、学習参考書のマーカーなど、これまで「白黒で我慢していた」部分がしっかり色づくことで、視覚的な情報が格段に伝わりやすくなる。
以下は、従来モデルとの主な違いをまとめた比較表だ。
Kobo Libra 2 | Kobo Libra Colour | |
---|---|---|
発売時期 | 2021年10月 | 2024年5月 |
価格 | 25,800円 | 36,800円 |
画面サイズ | 7インチ | 7インチ |
解像度 | 300ppi | 【白黒】300ppi 【カラー】150ppi |
ディスプレイ | Carta E Ink HD 1200 | E Ink Kaleido 3 |
容量 | 32GB | 32GB |
バッテリー | 数週間利用可能 | 数週間利用可能 |
ライト | ComfortLight PRO | ComfortLight PRO |
サイズ | 161.6×144.6×9.0mm | 161.0×144.6×6.2~8.3mm |
重さ | 215g | 200g |
防水性能 | IPX8等級 | IPX8等級 |
カラー表示 | 非対応 | 対応 |
スタイラスペン | 非対応 | 対応 |
充電端子 | USB Type-C | USB Type-C |
本体カラー | ブラック/ホワイト | ブラック/ホワイト |
カラーE Inkの表示は、iPadのような高発色ではないものの、柔らかく目に優しいトーンで構成されており、長時間の読書にも適している。「カラー化」によって、これまでモノクロでは伝えきれなかったビジュアル情報が補われ、マンガ、雑誌、図解の多い技術書や学習書など、多様なジャンルでの快適な読書が可能になった。

また、DropboxやGoogleドライブとの連携によるノートのエクスポートや、手書きPDFの保存にも対応しており、ビジネスや学習用途にも使える1台に進化している。
太めグリップで片手でも持ちやすく、軽くて長時間の読書も快適

まずは筐体からチェックしていこう。
箱を開けてまず手に取った瞬間、「あ、これなら長時間読んでも疲れないな」と感じるほどの軽さ。約200gという重量は、タブレットやスマホに比べても圧倒的に軽い。

そして特徴的なのが、Kobo Libraシリーズ特有の非対称デザイン。グリップ部分が太めになっていて、片手持ちでもしっかり安定する。ページめくり用の物理ボタンも親指が自然に届く位置に配置されており、長時間の読書時に手を移動させずに読むことができる。デバイスを左手で持ちたい人は、端末をくるっと回せば左手でも同じように持って読書ができ、利き手を気にせず使えて便利。
カラーバリエーションは「ブラック」と「ホワイト」の2色。どちらもマット仕上げで手汗や指紋がつきにくい。個人的にはホワイトモデルの方が電子ペーパーの色味を邪魔せず、より画面が映える印象を受けた。


背面には凹凸のあるデザインが採用されており、滑り止め効果もある。本体にはUSB Type-Cポートも搭載しているため、充電時にスマートフォンなどとケーブルを共用できるのも地味にありがたいポイントだ。

Kobo初のカラー画面、その見え方は?
Kobo Libra Colourに搭載されているのは、E Ink社の最新カラーディスプレイ「Kaleido 3」。Koboシリーズとしては初のカラーE Ink採用でありながら、これまで通り白黒表示でも300ppiの高解像度を維持しているのがポイントだ。


白黒表示時の文字は非常にクッキリとしており、小説やビジネス書、新書、論文PDFなど、文字中心の読書体験においては従来機と同等、もしくはそれ以上の視認性を確保している。紙のような質感と目の疲れにくさはそのままに、細かい文字までストレスなく読み進めることができる。


カラー表示時は解像度が150ppiに下がるものの、これまで白黒でしか読めなかったマンガの表紙、雑誌の挿絵、学習参考書のカラーマーカー、技術書の図解などに色が加わることで、情報が視覚的に整理しやすくなり、読書の理解度や没入感が格段に向上する。

カラーE Inkの表示は、iPadやスマートフォンのような鮮やかな色彩ではない。むしろ、淡く落ち着いた発色で、読書中に目が疲れにくいというE Inkならではの強みが活かされている。光の反射も抑えられており、直射日光下でもしっかり視認できる点は、屋外読書や通勤時の使用でも大きなメリットとなる。
また、ComfortLight PROによるフロントライトも搭載されており、色温度の調整が可能。昼は白っぽく明るく、夜は暖色系に切り替えることで、時間帯や環境に応じた快適な読書が実現できる。
各ジャンルで試して見えてきた「使い心地」
実際にさまざまなコンテンツを読んでみると、Kobo Libra Colourの特徴がより具体的に見えてくる。
小説や新書など文字主体のコンテンツでは、これまでの白黒Kobo端末とほぼ同様の読み心地。文字はシャープに表示され、背景とのコントラストも十分で、長時間読んでも目の疲れは比較的少ない。

注目していたコミックについては、カラーによる変化が確かに感じられる。表紙だけでなく、作中のエフェクトや背景などにも淡い色がついており、特にカラー原稿の作品ではページをめくるたびに視覚的な印象が変わる。すべてが劇的に変わるわけではないが、情報量が増えることで読み進めるリズムがわずかに変わる感覚があった。
また、PDFの閲覧性も向上している。以前のモデルでは、表示速度や操作レスポンスにやや引っかかりを感じることがあったが、本機では拡大縮小やスクロールの動きが比較的スムーズになっている。技術書や資料PDFを読む際も、大きなストレスなく使える印象だ。


スタイラスによる書き込み機能も試してみた。書き味は紙と比べればデジタルらしさが残るものの、レスポンスは悪くなく、ハイライトやメモ用途としては十分実用的。読みながら補足情報を書き留めるような軽い使い方であれば、違和感なく使えるだろう。ただし、手書きメモの精度やスピードを重視する人にとっては、画面サイズや反応速度に物足りなさを感じる可能性もある。
実際に使って感じた良い点&気になる点

Kobo Libra Colourを使ってみてまず感じたのは、やはり「読書体験の幅が広がる」という点だった。
カラー表示によって、これまで白黒で読んでいたコミックや技術書、雑誌といったジャンルが視覚的にわかりやすくなり、より自然に情報が頭に入ってくる。特にカラーマーカーが活用されている学習参考書や図解の多い資料では、内容の整理もしやすく、実用面での効果も感じられた。
また、スタイラス対応により、PDFやノートへの直接書き込みができるようになったのも大きな変化だ。書き味には多少のデジタル感があるものの、気になったポイントにその場でメモを書き加えられるのは便利で、読みながら考えるスタイルにもしっかり対応している。

さらに、物理ボタンや防水設計、軽量ボディなど、Kobo Libraシリーズならではの使いやすさも健在で、手に取った瞬間から違和感なく読み始められる点も好印象だった。
一方で、いくつか気になる点もあった。カラー表示時の解像度は150ppiと控えめで、細かい文字やイラストではややぼやけた印象を受ける場面もある。また、カラー版のコミックについては、人気作でも配信がモノクロ版より遅れることがある点には留意しておきたい。
さらに、7インチという画面サイズは読書にはちょうどよいが、ノートアプリで本格的に手書きメモを残したい人にとっては少し狭く感じるかもしれない。価格も前モデルに比べて1万円以上高く、どんな使い方をするかによっては割高に感じられるかもしれない。
もう白黒で我慢しない。新しい読書スタイルを実現できる「Kobo Libra Colour」

「Kobo Libra Colour」は、従来の白黒電子ペーパー端末とはまた違った、新感覚の読書体験を実現した一台だ。カラー表示によってコミック、雑誌、技術書、学習書、PDFなど、これまでやや苦手だったジャンルが一気に快適になる。
そのうえ、防水対応、物理ボタン、スタイラス対応と、これまでのKoboユーザーが求めていたスペックもきっちり押さえている。
もしあなたが次のどれかに当てはまるなら、購入を強くおすすめしたい。
- 電子書籍をもっと視覚的に楽しみたい
- ペンで色分けしながら読書メモを残したい
- お風呂やアウトドアなど、シーンを選ばず使いたい
- 長時間読んでも目が疲れない端末が欲しい
価格は税込36,800円と、これまでのモノクロ端末に比べるとやや高めだが、その分読書の幅が確実に広がる。「読書はモノクロで十分」と思っていた人ほど、カラーE Ink時代の新標準を体験してみてほしい。
ちなみに、「もっとコンパクトで安いモデルが欲しい」という人なら、同時発売された6インチサイズの「Kobo Clara Colour」(税込26,800円)という選択肢もある。こちらは物理ボタンや防水には対応しないが、手軽な価格でカラーE Inkの世界を体験できる。