
iPhoneで長年固定されてきた「サイドボタン長押し=Siri起動」という操作が、日本限定で変更されることが分かった。
Appleは開発者向けドキュメントを更新し、サイドボタンからサードパーティ製の音声アシスタントアプリを直接起動できる新仕様を、日本独自の措置として導入すると正式に発表した。
この変更によって、ユーザーはAlexaやGeminiといったアシスタントアプリをデフォルトの音声アシスタントとして利用できるようになり、iPhoneにもAndroidに近い柔軟性が加わることになる。自社の専有領域をApple自ら開放するのは極めて異例であり、その背景には国内規制への対応があるとみられる。
日本の法規制が「サイドボタン」のあり方を変える
新仕様が有効になるのは、Apple Accountの国・地域が日本で設定され、かつ物理的に日本国内にあるiPhoneのみ。世界でも日本だけの厳格な地域限定措置だ。
この動きの背景には、公正取引委員会や2025年12月に全面施行される「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)」への対応があるとされる。この新法は、OS事業者に対して機能やAPIの開放を求める内容で、Appleにとってはエコシステムの核心部分に踏み込まれる要件が並ぶ。
Appleはこの数カ月、日本向けにアプリストア開放や検索エンジン選択画面の表示など、エコシステム開放策を続けているが、このサイドボタンの解放もその延長線上にある。ただし、Appleが自発的に進めたい施策とは考えにくく、規制への “必要最低限の対応” という空気感は強い。
Siriを置き換える「SystemVoiceAssistant」というシステムアプリも確認されており、まもなくリリース予定の「iOS 26.2」での実装がほぼ確実とみられる。
開発者に求められる要件は「即時に話しかけられること」
サードパーティ製アプリがサイドボタンに割り当てられるには、開発者側で明確な技術要件を満たす必要がある。
- Xcodeの.entitlementsにcom.apple.developer.side-button-access.allow(Side Button Access)を追加
- App Intentsフレームワークを使い、@AppIntent(schema: .assistant.activate)に準拠したIntentを実装
- perform()実行直後にオーディオセッションを即時開始し、音声会話が “その瞬間から使える” 状態にする
Appleは「ユーザーがボタンを押した瞬間に話しかけられること」を最重要要件として強調しており、体感速度やUXに関してはかなり厳密な基準を設定している印象だ。
このIntentを実装すれば、Spotlight検索やApp Shortcutsとの連携も可能になり、アシスタントアプリのOSレベルの入口が広がることになる。今後は、各社アシスタントの最適化競争が日本市場で活発化しそうだ。
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(画像:Apple)
