15周年を迎えたInstagramの過去と未来。リールとDM、AIが牽引する今後の戦略とは

Meta 日本法人・Facebook Japan 代表取締役 味澤将宏氏

2025年10月6日、Instagramは15周年を迎えた。2010年にiOSアプリとして登場した同サービスは、当日中にApp Storeのランキング1位を獲得。わずか数時間で世界中に広がった。今や月間アクティブアカウント数は30億に達し、Metaの中核プロダクトとしてソーシャルの形を変え続けている。

日本メディア向けのラウンドテーブルに登壇したMeta日本法人の味澤将宏氏は、15年の歩みと今後の戦略を振り返った。

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iPhone 3GSの時代に始まったInstagramが15周年。近年はリールやDMが成長を牽引

Instagramは、スマートフォンで撮った写真をその場で共有するという新しい文化を生み出した。それまで「写真を撮ること」と「人に見せること」は別の行為だったが、Instagramはそれをひとつに結びつけた。

サービスがはじまった2010年は、「iPhone 3GS」あるいは「iPhone 4」の時代。カメラ性能はいまに比べたら高くなかったが、誰でも “映える” 写真が撮れるフィルター体験により、画素数が低くても美しく仕上がる写真表現を可能にした。また、多くの写真共有サービスが一度Web経由でアップロードする必要があったのに対し、Instagramはアプリ内ですべてが完結できたことに加えて、他のSNSへのシームレスな共有機能も備えていた。

これらの機能で、一般ユーザーにクリエイティブな表現の楽しさを広げたことで、Instagramはただの写真共有アプリではなく「日常をビジュアルで語る」ためのプラットフォームへと進化していった。

また、他社サービスにあったものを後追い的に導入してきた経緯もあるが、それらは現在Instagramの柱となるサービスとして多くのユーザーに親しまれている。

たとえば、2016年に登場した「ストーリーズ」では、24時間で消える投稿という新たな概念を導入。「完璧な写真を投稿しなければ」というプレッシャーから利用者を解放し、日常を気軽に共有できる場を作り出した。2020年には「リール」を導入。ショート動画の文化を取り込み、今やInstagramの利用時間のうち約半分をリールが占めているという。

味澤氏は「リールのシェアはフォロワー向けではなく、DMで友人やグループに共有する動きが広がっている」と話す。グローバルでは、1日に45億回以上のコンテンツがDM経由でシェアされているという。

この動きを受けて、InstagramはDMとリールを軸にプロダクトを進化させている。先月にはiPad専用アプリをローンチ。アプリを開くとリールが最初に表示されるデザインで、大画面に最適化されたレイアウトとなっている。モバイル版でも、左からホーム、リール、DMと並ぶ形に配置を見直すUIテストを数週間以内に開始予定だという。

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次の成長エンジンはAI。レコメンド精度・検索体験・広告最適化を強化

Instagramの次の成長の柱はAIだ。味澤氏は「AIによるレコメンデーションの精度が向上し、利用時間が前年比6%増加した」と説明する。ユーザーが見ているコンテンツやフィードバックをAIが学習し、リールタブでより最適なコンテンツを提示する仕組みを開発中だ。

さらに、検索にもMeta AIを統合。自然言語で質問しながら情報を探せるようになる。検索体験の刷新は今後、日本でも導入を検討しているという。

広告面でもAI活用が進む。自動最適化されたキャンペーン「Advantage Plus」を利用することで、広告の費用対効果 (ROAS) が3倍以上に改善。獲得単価も9%改善するなど、広告主へのリターンが高まっている。

AIはクリエイティブ領域にも浸透している。動画編集機能「リスタイル」は、ワンタッチで雰囲気を変えたり、音声を他言語に自動翻訳したりできる。Metaのアダム・モッセーリ氏がデモで披露した自動音声翻訳では、英語からスペイン語への変換でも声のトーンや口の動きが自然に保たれていた。日本語対応はまだだが、翻訳済みの動画は日本国内からも視聴できる。

Instagramにとって日本は重要な市場だ。味澤氏は「日本の利用者はエンゲージメントが高く、新しい使い方や表現方法を積極的に生み出してくれる」と語る。2019年に日本で導入されたQRコード機能や、地図検索なども日本発でグローバル展開された例だ。

2023年にはクリエイター向けの「一斉配信チャンネル」をローンチ。サブスクリプションなど、クリエイターが収益化できる仕組みも強化している。さらに安全面では、コメントフィルター機能や、今年1月に日本でも導入された「ティーンアカウント」など、安心して利用できる環境づくりも進めている。

ティーン文化と高い親和性を持つInstagram。フリューとコラボでプリントシール機に15周年記念デザインが登場

フリュー株式会社 代表取締役社長 榎本雅仁氏

15周年を記念して、Instagramはフリューとコラボレーションを実施。全国のアミューズメント施設に設置されているプリントシール機「EVERFILM (エバーフィルム)」にInstagram15周年を記念した限定デザインを期間限定で追加した。デザインはイラストレーターのREDFISH氏による描き下ろしだ。

トークセッションに登壇したフリューの榎本氏によると、プリントシール機の体験価値は大きく分けて3つあるという。1つ目が自己肯定感を高める存在として、自分の理想の姿が映る“魔法の鏡”的な「理想の自分を映すツール」、2つ目が撮影や落書きなど、自分らしい表現を全身で楽しむことができる「自己表現ツール」、そして3つ目が仲の良い友達と一緒に楽しむことで、人とのつながりを感じられる「友達との共通体験」だ。

プリントシール機「EVERFILM」

Instagramの文化とともに、プリントシールも進化を続けてきており、白縁写真、透けるシール、9:16コラージュなど、SNSと連動したデザインを次々と取り入れ、ユーザーの投稿体験を支えてきた。

榎本氏は海外から「日本のプリントシール機の体験価値を生かしたIPを使ったアプリを作ってほしい」という要望が多く寄せられていることに触れ、「これからは中国など海外展開を進めつつ、InstagramなどのSNSにアップして共有する体験までを含めた、一連の体験として提供していきたい」と意気込みを語った。

Instagram取材
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