前々回の「週刊イモリ」では、スイス工科大のロボット研究家の方々が両生類のように動くサンショウウオ型ロボットの製作に成功したという記事を紹介したが、お次は「ロボット」ではなく「サイボーグ」なるものが誕生したようだ!
Newsweekによると、今回製作されたサイボーグは、海や川に生息している「エイ」を模したもので、実際にヒレをはためかせて泳ぐことができるとのこと。もしかすると前々回の「サンショウウオ型ロボット」よりもすごいものかもしれないので、早速紹介していく!
機械の体とラットの心筋細胞とが融合した「エイ」
今回、エイのサイボーグの製作を行ったのは、ハーバード大学の研究チームだ。製作されたエイは、「Little skate」と呼ばれるエイの仲間を10分の1スケールで再現したもので、長さは16ミリメートル、重さは10グラムほどとのこと。
このエイは金で作られた骨格にポリマーを張り合わせた「ロボット」なのだが、その中には遺伝子操作された20万個のラットの心筋細胞が配置されており、特定の周波数の光を当てることで細胞を収縮するようになっているようだ。
収縮した細胞からは下向きの動きが発生し、それを骨格に蓄積。細胞が弛む時にその動きが上向きの動きとして解放されるという一連の流れから、筋肉の伸び縮みを再現するとのことだが、こういった動きができる心筋細胞を巧妙につなげて配置したことで、エイのようにヒレを波打たせて動かすことに成功したという。
また、光の明滅パターンを変化させることで、泳ぐスピードや進行方向などを外部からコントロールすることも可能となっているようで、こういった緻密な細胞の制御は、人工臓器などの分野に活かせるのではないかと言われている。
このサイボーグのすごいところは、内部に他の機械が必要ないというところだ。あくまでもエイの動きを生み出しているのは機械ではなくラットの心筋細胞であるため、その細胞が生き続ける限り、機械の人工臓器のように内部の電池が切れる心配はない。
人工臓器といえば、有名なのが心臓の「ペースメーカー」だが、心臓に疾患があってペースメーカーを埋め込んでいる患者は、ペースメーカーの電池の交換やペースメーカー自体の交換で数年に一度は大きな手術が必要になるそうだ。最近では電池の寿命自体は長くなってきてはいるというものの、結局のところ交換は必要になるため、患者の負担は大きい。
この技術がもっと進歩すれば、いずれは機械のペースメーカーではなく、このラットの心筋細胞のように制御された細胞を利用したペースメーカーなるものが出てきて、手術の頻度をより少なくできる可能性はあるのではないだろうか。
前に紹介したサンショウウオ型ロボットといい、今回のエイのサイボーグといい、現代の医療の発展に役立ちそうな技術がどんどん世界各地で生まれているのは喜ばしいことだ。まだまだ実現には程遠いかもしれないが、研究者の方々には頑張ってもらいたい!