先週号の「週刊イモリ」では、上陸を迎えたサンショウウオの子どもたちに、イモリが今入っている60cm水槽を譲るべく、イモリたちには30cm水槽に引越してもらった旨をお伝えした。
だが、その引越しの裏で、実は大きなハプニングが発生していた!イモリを飼育している人にとっては最大の脅威「脱走」だ。
結論から言うと、今回は幸いにも完全な乾燥イモリになる前に発見することができたが、かなりヒヤッとさせられたので、本日はイモリの脱走について詳しく書かせていただこうと思う。
水槽に蓋をしているからといって安心してはいけない
今回脱走をしたイモリは、我が家のイモリたちの中でも一番の壁登り上手、アマミシリケンイモリの「ギョロ」だ。
今までイモリたちが生活していた60cm水槽では、水槽にかぶせるように載せるタイプの蓋である「ハープネット」を使用していた。この金属でできたガッチリとした蓋で脱走されたことは一度もなく、僕としては絶対の信頼を置いている蓋だ。
イモリたちに引越してもらった30cm水槽にはこれと同じような蓋がなかったので、暫定的に30cm水槽に付属してきたガラス蓋を水槽に乗せ、隙間部分にラップをかけて「時間に余裕ができたら蓋を買いに行こう」と軽い気持ちでいたのだが、この安易な考えがまずかった。
サンショウウオ引越し当日の朝、ふとイモリ水槽を見てみるとなぜかギョロの姿がない。蓋はちゃんとされているようだし、まさか脱走なんて…と最初は思ったが、水槽の中にはどう見てもいない。
焦ってしばらく部屋の中を探し回っていると、なんと台所のゴミ箱の裏にホコリまみれになってじっとしているギョロが!
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!ギョロおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」←(発見した時の僕)
寝る前に見たときには水槽にいたのを確認していたので、もし僕が寝たすぐ後に脱走したとすれば水から出て8時間近くは経っているはずだ。
これはちょっとヤバイかも…と思ったのだが、持ち上げた瞬間にすごい勢いでジタバタしだすギョロ。急いで水に入れてやると、少しグッタリした様子。2時間ほどで体は潤ったのだが、一度乾燥したせいで手足の指がくっついてしまい、自由に動かせなくなってしまったようだ。
救出後はしばらくイモリ水槽には戻さず、彼女だけ隔離。別水槽で少しでも体力を回復させるために、人の通らない落ち着いた場所に置いてあげることに。なるべく安静にしつつ、こまめに餌をあげたりしていた。
そして、2週間近く経った現在のギョロの様子はこちら。足の指は何とか治ったようだが、手の指はまだしっかり治っていないようで、時折手をバタつかせる様子が見られる。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
だが、毎日様子を見ていると日に日に元気になってきていて、最近ではエサを見るとがっついてくるほど元気な姿を見せるようになった。しばらくイモリを飼っているので分かるのだが、イモリの生命力は本当にすごい。もし僕たちがこれほどまでの窮地に立たされたとしたら、ここまで耐えることはできないだろう。
前にもキメラ(シリケン×アカハラのハイブリッド個体)を僕の不注意で15分ほど脱走させてしまったことがあり、あの時は蓋を忘れていたことが原因だったので、それ以降は何があっても絶対に蓋を忘れないように注意していたはずだったが、今回は蓋をしたにも関わらずギョロを危ない目に遭わせてしまった。
ガラス蓋とラップの簡易的な蓋だったこともあると思うが、一応隙間はきちんと覆っていたつもりだ。どうやって脱走したのかは未だに謎だが、もしかするとアクアショップでイモリの水槽に重しを置いているところが多いのは、イモリが蓋を開けて出る可能性があるということなのだろうか。
僕も一応、蓋の上にクリップライトを載せていたのでちょっとは重しになるかと思っていたのだが、もしかするとそれでは不十分だったかもしれない。
原因を突き止めるには実際にカメラを仕掛けて脱走する瞬間を撮影しないと無理かもしれないが、とりあえず現段階で言えることは「イモリは見た目に反して意外に力持ちかもしれない」ということだ。
今後は僕もただ蓋をするだけではなく、全面に荷重がかかるような重しを置いて、脱走しないようにしようと思った。イモリの飼い主の皆さんも自分のイモリ水槽の蓋について、改めて考えてみてほしい。