Mac mini。小型であること、そして安価であることで、これまで多くの根強いファンを惹きつけてきた同端末に待望の新型モデルが登場した。
今回の新型モデルは従来までの特徴はそのままに基本性能のアップグレードはもちろん、さらにカスタマイズの幅が広くなった。CTOオプションでは、6コアの上位プロセッサを選択できるようになり、RAM容量は最大64GB、ストレージ容量は最大2TBまで用意されるなど、価格は高価になってしまうが 「Mac mini」 とは思えない、プロユーザーでも満足に使える高性能マシーンにすることが可能だ。
しかし、プロユーザー向けとは言っても、いったいどれくらい性能が上げられるのか、イマイチ想像がついていない方もいらっしゃると思う。そこで、今回の記事ではモンスター級の性能を持つ超高額Mac 「iMac Pro」 とカスタマイズした 「Mac mini」 を比較する形で、「Mac mini」 の実力が一体どのレベルまで到達したのか、紹介したいと思う。
「Mac mini」 と 「iMac Pro」 の標準構成の性能を比較
まずは、「Mac mini」 と 「iMac Pro」 の標準構成について知っておきたい。以下がそれぞれの標準構成と価格を記した比較表となっている。
iMac Pro (2017) | Mac mini (2018) | |
---|---|---|
プロセッサ | 3.2GHz 8コア Intel Xeon W Turbo Boost使用時最大4.2GHz 19MBキャッシュ |
3.6GHz 4コア Intel Core i3 6MB共有L3キャッシュ |
ストレージ(SSD) | 1TB | 128GB |
メモリ | 32GB 2,666MHz DDR4 ECCメモリ クアッドチャンネルメモリコントローラ |
8GB 2,666MHz DDR4 SO-DIMMメモリ |
グラフィック | Radeon Pro Vega 56 (8GB HBM2メモリ搭載) |
Intel UHD Graphics 630 |
合計 | 558,800円 | 89,800円 |
この表を見ると、両端末には比べ物にならないほどの差があることがお分かりいただけるだろう。iMac Proのプロセッサは 「3.2GHz 8コア Intel Xeon W」 であるのに対して、「Mac mini」 は「3.6GHz 4コア Intel Core i3」。参考までにベンチマークスコアでは以下の表ほどの差がある。
シングルコアスコア | マルチコアスコア | |
---|---|---|
Mac mini 標準構成 (3.6GHz 4コアIntel Core i3) |
4750 | 14200 |
iMac Pro 標準構成 (3.2GHz Intel Xeon W) |
4750 | 27500 |
グラフィック性能は雲泥の差。実際に触ってみないことにはわからないが、「Mac mini」 の内蔵グラフィックの性能も前モデルからは向上しているものの、高解像度の動画編集はややカクつき、PUBGなどの3Dゲームでは最大解像度で快適に動かすことができないなど、高負荷のかかるグラフィック動作はやや不得意。
またメモリ容量も26GB、ストレージ容量に関しては10倍近い差がある。当然ながら価格も558,800円と89,000円でアリかゾウかというくらい大きな違いがある。「Mac mini」 の最小構成は、どちらかというとプロユーザー向けというより、エントリーユーザー向けであることが理解できると思う。
「Mac mini」 のプロセッサやメモリ容量などをカスタマイズすると 「iMac Pro」 に近い性能に
両モデルの標準構成だけを比較すると、「Mac mini」 は 「iMac Pro」 の足元にも及ばないように感じてしまうかもしれない。当然、この性能差であれば高い金額を払っても 「iMac Pro」 を購入した方がいいと考える人もいるだろう。
しかし、ここからが本題だ。先述したように 「Mac mini」 は各種カスタマイズを行うことで、性能を格段に引き上げることができる。
「Mac mini 2018」 でカスタマイズできる項目はメインプロセッサ、メモリ容量、ストレージ容量、イーサネットポートの全4種類。今回はiMac Proの性能になるべく安く近づけるため、メインプロセッサとメモリ容量、ストレージ容量を引き上げてみた。
そうすると以下のようなスペックになる。さらにグラフィック性能でも追いつけるように、同じRadeon RX Vega 56を搭載した 「Blackmagic eGPU Pro」 を加えると、425,800円でiMac Proにやや近い性能に変えることが可能だ。
iMac Pro (2017) | Mac mini (2018) | |
---|---|---|
プロセッサ | 3.2GHz 8コア Intel Xeon W Turbo Boost使用時最大4.2GHz 19MBキャッシュ |
3.2GHz 6コア Intel Core i7 Turbo Boost使用時最大4.6GHz 12MB共有L3キャッシュ |
ストレージ(SSD) | 1TB | 1TB |
メモリ | 32GB 2,666MHz DDR4 ECCメモリ クアッドチャンネルメモリコントローラ |
32GB 2,666MHz DDR4 SO-DIMMメモリ |
グラフィック | Radeon Pro Vega 56 (8GB HBM2メモリ搭載) |
Intel UHD Graphics 630 |
外部グラフィック | – | Radeon RX Vega 56 (Blackmagic eGPU Pro) |
価格(税別) | 558,800円 | Mac mini:276,800円 Blackmagic eGPU Pro:149,000円 |
小計 | 558,800円 | 425,800円 |
アクセサリ | – | LG UltraFine 4K Display:77,800円 LG UltraFine 5K Display:144,800円 Magic Mouse 2:9,800円 Magic Keyboard(テンキー付き):14,800円 |
合計 | 558,800円 | 4K選択時:528,200円 5K選択時:595,200円 |
Mac miniにはiMac Proのような高画質ディスプレイが搭載されていないので、高色域(P3)ディスプレイを持っていない場合を別途購入した場合のことも考慮してみた。また、マウスやキーボードなども同様。これら一式を揃えるには、4Kディスプレイを選択した場合に528,200円。5Kディスプレイを購入した場合は595,200円で購入できる。
もちろん、高色域(P3)に対応したディスプレイでなくともいいという場合は、もう少し安いディスプレイを購入して費用を浮かせるのもあり。USB-Cの他にもHDMI 2.0ポートが搭載されているため、USB-C非搭載ディスプレイであっても4K/60Hz出力は可能だ。ちなみに、Mac miniにはHDMIポートのほかにUSB-Cポートが4つ搭載されており、これらを駆使することで最大で3台のディスプレイに画面を出力することができる。
こうなると違いはもはやプロセッサだけ。「iMac Pro」 と 「Mac mini」 のベンチマークスコア (暫定) は以下の通りとなっており、性能には大きく違いがあるため、性能の高さを重要視するならどうあがいてもiMac Proを選ぶほかない。ただ、もしiMac Proほどの性能が必要ないのであれば 「Mac mini」 を選択するのも手なのかもしれない。
シングルコアスコア | マルチコアスコア | |
---|---|---|
Mac mini 最大構成 (3.2GHz 6コアIntel Core i7) |
5510 | 23500 |
iMac Pro 標準構成 (3.2GHz Intel Xeon W) |
4750 | 27500 |
そもそもなぜこの記事を作ったのか。プロユーザー向け端末が欲しいなら、素直にiMac Proを買えばいいじゃないかと思う方もいるだろう。筆者も最初はそう思っていた。
もちろん、先述したように性能としては 「iMac Pro」 の方が上。さらにiMac Proの場合はさらにカスタマイズすることでモンスタースペックにすることもできる。とにかく高性能であることを求めるなら素直に 「iMac Pro」 を選択するのが一番だ。
しかし、Mac miniには利点もある。一番のメリットは持ち出しが可能であるということ。また、eGPUを買い換えることで将来的にグラフィック性能を引き上げられる可能性があるということ。
「iMac Pro」 は全一体型PCであるため、持ち運びには適さない。サイズが大きいだけでなく重量9.7kgと非常に重い。それに比べて、20cmで収まるコンパクトな性能になっており、重量もわずか1.3kgと持ち運ぶことが可能だ。そういう意味では 「Mac mini」 はiMac Proの性能には負けるものの、iMac Proにはできない使い方ができるだろう。
eGPUに関しては現時点では 「Radeon RX Vega 56」 を搭載した 「Blackmagic eGPU Pro」 が最大性能だが、今後さらに高い性能のeGPUが登場することがあるだろう。その時に、グラフィック性能に不満を感じていたなら、新しいeGPUに交換することができる。
また、eGPUはMac miniだけでなく、MacBook ProやMacBook Airなどのラップトップに使用して、グラフィック性能を引き上げることもできる。そのため、普段は 「Mac mini」 に装備しておいてMacBook Airで画像処理をしたくなった時にeGPUの接続先を変える、なんてことも可能だ。
つまり、Mac miniをiMac Proの性能に近くすることで、iMac Proにはない 「拡張性」 を得ることができる。差額はほとんどないため、普通にiMac Proを購入した方が手っ取り早い可能性もあるが、すでに外部ディスプレイやキーボード・マウスを持っている方に関しては、iMac Proを購入せずMac miniと 「Blackmagic eGPU Pro」 を購入した方が安上がりになる可能性も十分にあるだろう。
まとめ:新型 「Mac mini」 はプロユーザー向け高性能Macの候補の一つに
筆者としては、今回の比較を通してどちらを購入するのが正しいのかを結論付けるというよりは、新型 「Mac mini」 をカスタマイズすることで 「iMac Pro」 並みの性能のMacを 「iMac Pro」 以下の価格で購入することができること、さらに 「Mac mini」 の小型であるという利点を活かして持ち運んで使用するといった 「iMac Pro」 とは違った使い方ができることなど、プロユーザー向けの高性能Macの新たな可能性を提示したかった。
あとはどちらを選ぶかはユーザー次第。Mac miniは今月7日に発売する。興味がある方はiMac Proなど各種Macとの比較も可能なので、ぜひApple公式サイトでスペックの確認を。
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