Mac mini レビュー|M2世代に到達しエントリーからプロユーザーまで網羅できる高コスパモデルに

Appleは、次世代プロセッサ 「M2」 「M2 Pro」 を搭載した新型Mac miniを発売した。

新型Mac miniは、筐体デザイン・サイズはほぼ変わらず、内蔵するプロセッサを最新のものに置き換えたことで、従来モデルからの性能向上を実現したマイナーアップデートモデル。プロセッサは 「M2」 と 「M2 Pro」 の2種類から選択可能だ。

M1からM2に世代が移行したことで、果たしてどれほど性能が上がったのか。筆者は、今回家族が新型Mac miniを購入するとのことだったため、実機に触る機会に恵まれた。

実際に筆者が使用する環境で構築させてもらって、いくつか検証を行うことができたため、その詳細をお届けしたい。Mac miniの購入を検討中の方の参考になれば幸いだ。

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Mac mini (M2, 2023)とは

今回レビューするMac mini (M2, 2023)は、2023年2月に発売したMac miniの新型モデル。

先代モデルは2020年11月に発売したMac mini (M1, 2020)で、M1チップを搭載していたのに対して、今回の新型モデルはそのひとつ上となるM2チップを搭載し、性能が向上している。同時に発表された14/16インチMacBook Proがラップトップデバイスだったのに対して、Mac miniはデスクトップ型だ。

Mac miniはAppleが販売するデスクトップMacの中でもっともコンパクトな筐体を持っているのが大きな特徴で、Appleが独自開発した 「M2」 チップの搭載により、コンパクトさと性能の高さを兼ね揃えた万能モデル。

(画像:Apple)

M2チップは、5nmプロセスで製造された次世代Apple Silicon。コア構成は4つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した計8コア。

GPUは10コアになっていて、先代モデルと比較したパフォーマンスはCPUで18%程度、GPUで35%程度向上している。すでに13インチMacBookやMacBook Air、iPad Proに搭載されているSoCだが、新たにMac miniにも搭載された形となる。

排熱設計も先代モデルで進化しており本体が熱くなりにくく、常に高いパフォーマンスを維持することが可能。Wi-Fiの最新規格 「Wi-Fi 6E」 に対応し、ワイヤレス通信のパフォーマンスもより高速になっている。

これほどの性能であるにも関わらず、しかも円安で軒並みApple製品の価格が上昇しているのに、Mac mini (M2, 2023) は先代モデルよりも安い84,800円(税込)から購入可能となっている点も見逃せない。コストパフォーマンスに優れたモデルが欲しい方にオススメのデバイスだ。

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今回レビューしたMac miniのスペック

今回筆者がレビューするMac miniのスペック・仕様は以下のとおり。Mac miniのラインナップのなかで最もベーシックなもの、いわゆる吊るしモデルにあたる。

具体的なスペックは以下。

レビュー機の仕様
製品名 Mac mini (M2, 2023)
チップ Apple M2
・8コアCPU (高性能コア×4/高効率コア×4)
・10コアGPU
・16コアNeural Engine
・100GB/sのメモリ帯域幅
メモリ 8GB
ストレージ 256GB
外部ポート ・Thunderbolt 4ポート ×2
・USB-Aポート ×2
・HDMIポート
・ギガビットEthernetポート
・3.5mmヘッドホンジャック
価格(税込) 84,800円

デザイン・サイズ・重量

Mac mini (M2, 2023)は、1枚のアルミ板から作りあげたユニボディデザインを採用したデスクトップ型Mac。そのデスクトップPCとは思えないお弁当箱のようなコンパクトな筐体は、前モデルから変わっていない。

本体カラーはシルバー。Mac miniはもともとシルバーカラーが採用されていたが、2018年に登場したモデルで一時的にスペースグレイカラーが採用されるようになっていた。シルバーに戻ったのは2020年に発売したM1チップ搭載モデルからとなっている。

本体サイズは、幅19.70cm×奥行き19.70cm×高さ3.58cmで、従来モデルからほぼ変わらず。重量は1.18kg (M2 Pro搭載モデルは1.28kg) と、MacBookよりも軽量だ。

これほどコンパクトで軽量であれば、配置場所に困ることはほとんどないはず。設置場所が限られていたり、すこし狭めのデスクを使っている方にもオススメできる。

本体背面には、電源ボタンやインターフェイスが配置されている。インターフェイスの一覧は以下のとおり。

▼ M2チップ搭載モデル

  • Thunderbolt 4/USB4 (最大40Gb/s) ×2
  • USB-A (最大5Gb/s) ×2
  • HDMI 2.0 ×1
  • ギガビットEthernetポート ※
  • 3.5mmヘッドフォンジャック

▼ 参考資料:M2 Pro搭載モデル

  • Thunderbolt 4/USB4 (最大40Gb/s) ×4
  • USB-A (最大5Gb/s) ×2
  • HDMI 2.1 ×1
  • ギガビットEthernetポート ※
  • 3.5mmヘッドフォンジャック

※ 追加料金で10ギガビットEthernetに変更可能

今回の新型モデルは、内蔵するSoCによって搭載されるインターフェイスが若干異なるため購入前はぜひ注意いただきたい。

具体的に異なるのは、Thunderbolt 4/USB4の数とHDMIの規格。前者については単純に接続できるデバイス/ディスプレイの数に関係するし、HDMIについては出力できる映像の最大解像度が異なるため、これらが必要な場合はM2 Proチップを搭載したモデルを購入するように。

ちなみに、接続できる外部ディスプレイの数はM2モデルが基本2台まで、M2 Proモデルが最大3台までとなっている。

Mac miniの背面

インターフェイスがすべて背面にあるため、各種コネクタを接続する際に少々難儀することがある。接続するデバイスを固定して使う場合には問題ないが、頻繁に入れ替える場合にはUSB-Cハブ等を増設し、Mac miniの手前側にポートが来るようにすると便利かもしれない。

Mac miniにはスピーカーが搭載されていて、Mac mini本体から直接音を出力することができる。音質はあまり良くはなく、システム音を出力する程度なら問題ないが、もし音楽などを本格的に楽しみたい場合は別途スピーカーを用意するか、ヘッドホン・イヤホンを活用したいところ。

音楽を手軽に楽しみたいのであれば一般的なPCスピーカー等で十分だが、もしAppleのエコシステムを使ってApple Musicなどを楽しみたいのであれば、HomePod miniなどがオススメだ。

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なお、Mac miniに搭載されている3.5ヘッドホンジャックはハイインピーダンス仕様のものに変更さされた。また、内蔵するDACについても最大96kHz/24bitをサポートし、ハイレゾ音源の再生が可能。Apple Musicなどハイレゾ級の音楽をCD品質以上で楽しむことができる。

付属品は電源ケーブルのみ

ちなみに、Mac miniを初めて購入するユーザーに気を付けていただきたいのが、Mac miniには電源ケーブル以外に付属品が付いてこないこと。キーボードやマウスは別売りとなっているので、一切持っていないなら購入しておこう。

Apple純正品で揃えるなら、Magic KeyboardやMagic Mouse 2、Magic Trackpad 2をApple公式サイトで購入すると良いだろう。

Mac miniはBluetooth接続に対応しているため、ロジクールなどサードパーティが販売するワイヤレスマウスを接続することも可能だ。

底面には円盤型のシリコンパッドが設けられており、意図せず机からズレ落ちるのを防止する。

このシリコンパッドの外周部分には排熱用のスリットが開けられていて、本体内で発生した熱を内蔵ファンによって排出する。M2モデルもM2 Proモデルもどちらもファンレスかと錯覚するくらいに動作音が静かで快適だが、多少負荷の高いタスクをさせてもしっかりと空気が流れていることが確認できることから、安心して使用できるだろう。

搭載チップ(SoC)

(画像:Apple)

新型Mac miniに搭載された 「M2」 は、5nmプロセスで製造された次世代Apple Silicon。MacBook Airや13インチMacBook Proにも搭載されている最新チップだ。

コア構成はCPUが8コア、GPUが10コアで、最大24GBの高速ユニファイドメモリが搭載可能。また、ProResアクセラレーションが加わったことで、ビデオ編集作業などが高速化されている。

以下、具体的なチップ性能についてチェックしていこう。

チップ性能(CPU)

新型Mac miniのM2には、4つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した8コアCPUが採用されている。

従来モデルと構成自体は変わらないが、性能はどの程度向上したのか。ベンチマークソフト 「Geekbench 5」 を用いてスコアを計測してみた。

製品名 プロセッサ コア構成 シングルコア マルチコア
MacBook Air
(M1, 2022)
M1 合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
1705 7220
MacBook Air
(M2, 2022)
M2 合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
1902 8723
MacBook Pro
(13-inch, M2, 2022)
M2 合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
1938 8905
Mac mini
(Intel, 2018)
Intel Core i5-8500B 999 4662
Intel Core i7-8700B 1100 5465
Mac mini
(M1, 2020)
M1 合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
1718 7573
Mac mini
(M2, 2023)
M2 合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
1926 8705
iMac
(M1, 2021)
M1 合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
1714 7255
MacBook Pro
(14-inch, 2023)
M2 Pro 合計10コア
・高性能x6
・高効率x4
1957 12229
M2 Pro 合計12コア
・高性能x8
・高効率x4
1934 15021
Mac Studio
(2022)
M1 Max 合計10コア
・高性能x8
・高効率x2
1744 12138
M1 Ultra 合計20コア
・高性能x16
・高効率x4
1782 22726

結果はシングルコアスコアが1926、マルチコアスコアが8705。先代のM1搭載Mac miniと比較すると、シングルコアスコアは約12%、マルチコアスコアは約15%向上していることが確認できた。

大幅な性能向上とまではならなかったが、CPUのコア数やコア構成が従来と変わらないにも関わらずスコアが向上しているのは、M1→M2への進化の恩恵と言えるだろう。

ちなみに、今回の新型Mac miniはM2 Pro搭載モデルも用意されており、CPUは6つ or 8つの高性能コアと4つの高効率コアによる合計10コア or 12コア構成にすることが可能。

製品名 プロセッサ コア構成 シングルコア マルチコア
Mac mini
(M2, 2023)
M2 合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
1926 8705
MacBook Pro
(14-inch, 2023)
M2 Pro 合計10コア
・高性能x6
・高効率x4
1957 12229
M2 Pro 合計12コア
・高性能x8
・高効率x4
1934 15021

上記はM2 Proを搭載した14インチMacBook Proのスコアで、M2搭載Mac miniのスコアと比べて、10コアCPUは約40%、12コアCPUは約73%スコアが高くなっていることが確認できる。

Mac miniのM2 Proも同じコア構成であり、ほぼ同じスコアになることが予想されるため、もしマルチコア性能を重視したいなら予算を上乗せしてM2 Proを搭載するのがオススメだ。

チップ性能(GPU)

CPU性能よりも注目したいのがGPU性能。なぜなら、M1→M2に進化したことでGPUコア数が2コア増加しており、その分のスコア向上が見込めるからだ。

どれほどのスコアの向上が見られたのか、Geekbench 5のベンチマークスコア結果を見てみよう。

製品名 プロセッサ GPUコア数 OpenCL Metal
MacBook Air
(M1, 2020)
M1 7コア 16026 18897
M1 8コア 16925 19755
MacBook Air
(M2, 2022)
M2 8コア 26263 23491
MacBook Pro
(13-inch, M2, 2022)
M2 10コア 27107 30863
Mac mini
(Intel, 2018)
Intel Intel UHD Graphics 630 4823 4632
Mac mini
(M1, 2020)
M1 8コア 19619 21832
Mac mini
(M2, 2023)
M2 10コア 27203 31194
iMac
(M1, 2021)
M1 8コア 19024 21332
MacBook Pro
(14-inch, 2023)
M2 Pro 16コア 39285 46413
M2 Pro 19コア 45322 50228
M2 Max 30コア 64293 73291
M2 Max 38コア 72614 86322
Mac Studio
(2022)
M1 Max 24コア 50094 61078
M1 Max 32コア 58995 67429
M1 Ultra 48コア 78421 98023
M1 Ultra 64コア 82445 100035
Mac Pro
(Intel, 2019)
AMD Radeon Pro 580X 41961 42289

結果はOpenCLが27203、Metalが31194。先代のM1と比較すると、OpenCLが約39%、Metalが約43%と大幅に向上していることが分かる。

ちなみに今回、筆者の大好きな『Cities: Skylines』等を中程度の画質でシミュレーションしてみたところ、小規模の街において25〜35fps付近で動作することが確認できた。

本タイトルはGPU性能だけでなくCPUやメモリ容量によって動作具合は異なるが、ゲームを進めていくにつれて着実に動作が重くなっていくため、常に快適な環境でプレイしたいならもう少しだけ高性能なチップを搭載したモデルを選んだ方が良さそうだ。

ベンチマークスコアで見てみても、Intelプロセッサを搭載した現行のMac Proのベースモデルや、M1 Maxを搭載したMac Studio、先日発売したばかりのM2 ProやM2 Maxを搭載した14/16インチMacBook Proよりもスコアは低い。あくまでエントリー向けの性能であることは認識しておこう。

製品名 プロセッサ GPUコア数 OpenCL Metal
Mac mini
(M2, 2023)
M2 10コア 27203 31194
MacBook Pro
(14-inch, 2023)
M2 Pro 16コア 39285 46413

もしより高いGPU性能を求めるなら、16コアGPUのM2 Proを搭載することで、GPU性能を引き上げることができる。上記は同じ16コアGPU構成のM2 Proを搭載した14インチMacBook Proのベンチマークスコアで、M2に比べてOpenCLが約44%、Metalが約49%高くなっている。

さらに19コアGPUのM2 Proを選択すれば、さらに高いグラフィック処理能力を手に入れることができる。Mac miniで行う作業内容と予算を考慮して、どのチップを搭載するか検討していただきたい。

SSD転送速度

Mac miniのストレージはSSDが採用されていて、容量は最小256GBから最大2TBまで選択できる。今回のレビュー機は256GBが搭載されている。

新型Mac miniのSSDについては、日本よりも先に発売した米国のユーザーから、256GBモデルの転送速度が低下していると報告が上がっていた。その点の検証も含め、Blackmagic Disk Speed Testで転送速度をチェックしてみた。

端末名 書込速度(Write) 読込速度(Read)
Mac mini (M2, 2023) 1390MB/s 1562MB/s
Mac mini (M1, 2020) 2894MB/s 2848MB/s

検証の結果、WRITE (書き込み速度) もREAD (読み込み速度) も半分ほどの転送速度に低下しており、米国ユーザーの報告のとおり、性能が低下していることが確認できた。ちなみに、同現象はM2搭載MacBook Airや14インチMacBook Proでも確認されている。

転送速度が低下した理由は、256GB SSDのNANDフラッシュメモリの数にある。従来のM1 Mac miniの256GBモデルにはNANDフラッシュメモリが2つ搭載されていたが、YouTubeチャンネル 「Brandon Geekabit」 がM2 Mac miniの256GBモデルを分解したところ、NANDフラッシュチップが1つしか搭載されていなかったとのこと。

複数のNANDフラッシュメモリがあることで処理を分散して転送速度が向上できるため、M1 Mac miniの方が転送速度が速かったというわけだ。

ちなみに、SSDの転送速度低下は512GB以上の容量にすることで回避することが可能だ。

転送速度の低下は、写真や動画といった大容量のデータの読み込み/書き出しに影響がある可能性がある。またスワップが発生した際に動作がもたつく可能性も出てくるが、体感として処理速度に遅さを感じることはほぼなかったことからあまり深く考える必要はないのかもしれない。気になるようなら、費用はかかってしまうが512GB以上の容量を選ぶことをオススメする。

RAM転送速度

Apple Siliconを搭載したMacには、ユニファイドメモリアーキテクチャ(UMA)が備わっている。

ユニファイドメモリは、高帯域幅を持つ低レイテンシメモリをApple Siliconと統合したもの。チップ内にあるCPUやGPU、Neural Engineなどがやり取りするデータを複数のアプリが効率良く共有できるようになるため、メモリパフォーマンスが向上するというメリットがある。

今回のレビュー機のメモリ容量は8GB。Apple公式サイトの技術仕様ページによると、M2搭載Mac miniのメモリ帯域幅は100GB/sであるという。実際のパフォーマンスがどうなっているのか、AmorphousMemoryMarkで検証してみた。

M2モデル

M1モデル

検証の結果、M1搭載モデルに比べて、全体的にデータ転送速度が向上していることが確認できた。特に WRITE (書き込み速度) の速度が向上しているようだ。

ちなみに、M2 Mac miniは最大24GBまでメモリを増量できる。8GBでも通常使用時の動作に支障が出ることはほとんどなかったが、高解像度の写真や動画を編集するなど、メモリを多く消費する作業を快適にするには容量を大きくする必要がある。

メモリの消費量や現在の作業に対してメモリが足りているかどうかは、アクティビティモニタ内にあるメモリプレッシャーのグラフの色によって確認できる。

上記は8GBのメモリを搭載したMacBook Airで計測したものなのだが、メールなどの軽い作業をしているときはメモリプレッシャーが緑色なのに対し、高負荷な作業をしている際にはメモリプレッシャーが黄色くなり、スワップ使用領域を使って動作している状況であることがわかる。

IllustratorやPhotoshopなどの画像編集ソフトや、ゲームなどメモリを大量に消費するアプリを動作させることが多いなら、費用は高くなるが16GBもしくは24GBを選んでおいた方が無難だ。

ディスプレイ出力

新型Mac miniは、Thunderbolt 4/USB4ポートとHDMIを使って、最大2台のディスプレイに映像を出力しデュアルディスプレイ環境を構築できる。

サポートする解像度は、Thunderbolt経由で最大6K/60Hz、HDMI経由で最大4K/60Hz。Thunderbolt経由で2台のディスプレイに同時出力する場合には、片方だけ解像度が5K/60Hzに制限される。この仕様は、先代モデル (M1 Mac mini) の頃から変わっていない。

M2モデルでは3台の画面出力は不可

ディスプレイ出力について一度考えていただきたいのが、Mac miniでのトリプルディスプレイ環境や8K以上の高解像度出力、120Hzでの滑らかな映像出力を諦めていた人。

今回のMac miniはM2 Proを搭載することで、最大3台までディスプレイに映像を出力することができるようになった。しかも、M2搭載モデルはHDMI規格が2.0なのに対し、M2 Pro搭載モデルはHDMI 2.1となり、HDMIポート経由で最大8K/60Hz or 4K/120Hzでの映像出力が利用できる。これらの点に魅力を感じるなら、M2モデルではなくM2 Proモデルを購入するべきだ。

搭載SoCをM2→M2 Proに変更すると84,800円→184,800円と10万円の追加費用がかかってしまうため、自分のお財布とじっくり相談していただきたい。

Wi-Fi 6E対応でどうなる?

新型Mac miniの変更点のひとつとして、「Wi-Fi 6Eへの対応」 が挙げられる。

Wi-Fi 6Eとは、Wi-Fi 6 (802.11ax)の拡張版であり、従来までWi-Fi通信で利用してきた2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、新たに6GHz帯を使うことができるというもの。国内でも昨年9月に認可されたばかりの最新規格だ。

基本的な仕組みはWi-Fi 6と同じであるものの、電波の干渉が少ない6GHz帯を使用できるため、より快適な環境でインターネットに接続できる。Appleの製品ではすでにiPad ProがWi-Fi 6Eをサポートしていたが、今回のMac miniと同時に発表されたMacBook Proはそれを追う形でサポートされることになった。

筆者の自宅はすでにWi-Fi 6Eに対応したルーターを導入しているため、実際に通信速度を計測してみた。結果は以下のとおり。

  ダウンロード速度 アップロード速度
Wi-Fi 6E 821.4Mbps 422.1Mbps
WI-Fi 6 752.8Mbps 411.7Mbps

結果は 「それなりの改善」 という感じ。Wi-Fi 6からWi-Fi 6Eへのアップグレード検証なので、大きな違いは得られなかったが、もしWi-Fi 6よりも前の規格のルーターやデバイスを使用していたなら、通信速度はかなり向上する可能性はある。

ただし、Wi-Fi 6Eの真価が発揮できるのは、多数のデバイスが自宅にあり、それらが同時に通信している時となるほか、6GHz帯の通信はルーターから離れたり、壁などの遮蔽物があると通信速度が低下することもあるため、各ユーザーごとの環境ではさほど恩恵が得られない可能性もある点に注意が必要。上記はあくまで筆者の環境における話として認識していただければ幸いだ。

M2とM2 Proのどちらを選ぶべき?

新型Mac miniは、M2とM2 Proのどちらを搭載するかが選べるようになったことで、「デスクトップMacのエントリーモデル」 と 「デスクトップでMac Studioほどの性能はいらないけど、エントリーモデルよりも高性能なミッドシップモデル」 の両方のニーズに対応できるようになった。

ただ、M2とM2 ProではCPU・GPU性能だけでなく、インターフェイス(外部ポート)やディスプレイ出力数など他の項目にも影響があり、どちらを選べば良いか悩んでいる人もいるのではないだろうか。

M2 Proモデルを選べば、これまで時間がかかっていた作業をスムーズにこなしたり、スペック不足でできなかった重めの作業もできるようになる。トリプルディスプレイ環境を構築できることで、マルチタスクの効率アップにも繋がるはずだ。

その一方で、M2モデルはM1→M2で性能が向上している上に、従来のM1 Mac miniよりも安く購入できるようになったことでお得感が増している (M1 Mac mini:92,800円〜 → M2 Mac mini:84,800円〜)。

もしどちらを搭載すれば良いのか迷ったなら、まずはM2モデルで自分の希望するメモリ・SSDの容量にカスタマイズしてみて、その金額とM2 Proモデルの最安構成と比較してみよう。

メモリ容量を8GB→16GBに増量したり、SSD容量を256GB→512GBに増量した場合のアップグレード費用はどちらも2.8万円で、片方だけアップグレードした場合は112,800円、両方ともアップグレードすると合計140,800円となる (いずれも税込)。

M2 Proモデルはもっとも安い構成でメモリ容量が16GB、SSD容量が512GBになり、金額は184,800円(税込)。M2モデルでメモリ・SSDの両方をアップグレードした場合と比べると、その差額は4.4万円だ。この差額を(自身が求める性能に対して)小さいと感じるようであればM2 Proモデルを購入するのが良いだろう。

逆に、カスタマイズなしでの購入を検討している場合は、約8.5万円とM1モデルよりもお得にM2モデルを購入できてしまう。以前販売されていたIntelプロセッサ搭載Mac mini (約15万円) や、現在まだ販売中のM1 MacBook Air (約13.5万円) よりもずっと安いとなると、M2 Mac miniのお得感がおわかりいただけるだろう。

この終わりの見えない物価高の中、お得なM2モデルを購入するのはもちろんアリだし、ちょっとの差額しかないのなら先行投資してM2 Proモデルを購入するのもアリ。

検討しているカスタマイズの内容やMac miniを使おうと思っている想定期間、作業内容などを吟味すれば、おのずとM2とM2 Proのどちらが自分に適しているかが分かるはずだ。

まとめ

今回、M2 Mac miniの実機を触ってみて、まず純粋に良いと思った点が、M2の性能をMac miniのコンパクトな筐体で実現できていることと、約8.5万円で最新のM2搭載モデルが手に入るコストパフォーマンスの高さだ。

実際にMac miniで作業していて、一般的な作業での処理のもたつきはほとんどない上に、GPU性能が向上しているため、従来まではできなかった作業もできるようになった。まだIntelプロセッサ搭載モデルを使っている人には特に大きな恩恵があるはずだ。ぜひこの機会に買い替えることを強くオススメしたい。

その一方で、ディスプレイ出力数が2画面までに制限されていること、Thunderbolt/USB 4ポートが2つしかないことなど、M1モデルで不満があがっていた点が改善されていないことを踏まえると、わずかな性能向上を理由にM1モデルからM2モデルに買い替える必要はほとんどないと筆者は感じている。

ただし、M2 Proモデルを検討するのであれば話は別。ディスプレイ出力数は最大3台に増え、Thunderbolt/USB 4ポートは4つに増える上に、性能も大幅に向上する。M2 Proモデルであれば、M1モデルからの買い替えにも大きな意味があると言えるだろう。

Mac miniはAppleが展開するMacのラインナップの中で最も安く手に入るモデルだ。しかも、CTOのアップグレードを利用すれば、プロユーザーでさえ満足に使える性能にもできるカスタマイズの幅も大きい。デスクトップ型Macが欲しいなら、まずはMac miniの購入を検討しても良いのではないだろうか。

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