
サムスン電子ジャパンは8月1日、折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold7」を発売した。
「Galaxy Z Fold7」は、初代Foldの登場から6年を経て、折りたたみスマートフォンとして「究極の到達点」に限りなく近づいた一台だ。これまでにない薄さと軽さ、そして洗練されたユーザー体験を実現しており、サムスンの技術の成熟を感じさせる仕上がりとなっている。
筆者はこれまで「Galaxy Z Flip」シリーズを愛用してきたが、今回ばかりは真剣にZ Fold7への買い換えを考えてしまった。最終的には筆者のライフスタイル的にZ Flipを選ぶことになったものの、それほどまでに心を揺さぶられるデバイスだったのは間違いない。
今回はサムスン電子ジャパンから実機を1週間ほど借りて、日常生活の中でじっくりと使用することができた。その実体験をもとに、Z Fold7の進化と魅力をレビューしていく。
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究極に近づいた“第7世代”の折りたたみスマホ
「Galaxy Z Fold7」は、サムスン電子の折りたたみスマホ「Galaxy Z Fold」シリーズの最新モデル。折りたたみ可能なディスプレイを搭載しており開くことでコンパクトタブレットのように使ったり、折りたたんだ状態で操作することで一般的なスマートフォンと同等の使い方ができる、使い方の選択肢を広げるスマートフォンだ。
今回のZ Fold7における注目すべき進化ポイントのひとつは、やはり筐体の薄型化だろう。閉じた状態でわずか8.9mm、開いた状態では4.2mmという驚異的な薄さを誇り、初代Fold (17.1mm) のほぼ半分の厚さしかない。
重量も前モデルから24g軽量化されて215gと、折りたたみ端末であることを忘れるレベル。ポケットに入れて持ち運んだり、片手で長時間持ち続けてもほとんど負担は感じなかった。
この薄型&軽量化を実現したのが、新設計のArmor FlexHingeだ。薄型化した部品に加えて、水滴型のヒンジとマルチレール構造の導入により、ヒンジ全体の厚みを抑えることに成功した。
また、この新構造によりヒンジ内部にスペースが生まれたことで、ディスプレイが中央部分でより緩やかなカーブを描くようになり、折り目の目立ちにくさと耐久性の両立を実現。さらに、ヒンジ部分とフレームにはAdvanced Armor Aluminumを採用したことで、強度が向上している。
タブレット級の大画面は使い勝手も向上、バータイプ感覚で使えるカバーディスプレイが魅力
Z Fold7はディスプレイが大型化したことで、使いやすさが向上している。閉じた状態でのカバーディスプレイは6.2インチ→6.5インチになり、アスペクト比は21:9に。ポケットから取り出して画面を開かずに使い始めれば、もはやバータイプスマホと使い勝手はほぼ変わらない。
従来まではカバーディスプレイが縦に細長いことで、SNSのタイムラインのチェックなど縦の長さを活かした表示は得意だったものの、代わりにWebサイトは縦長になりすぎて少し見づらさがあった。しかし、アスペクト比が21:9になったことでバータイプスマホと同じ感覚でコンテンツを見ることができるようになり、QWERTYキーボードも格段に入力しやすくなった。
Z Foldシリーズは基本的には画面を開いて使うもので、カバーディスプレイは本体を開くのが面倒なタイミングで使う「おまけのディスプレイ」という前提は、今回のZ Fold7で完全に崩れ去ったと言えるだろう。
開いたときのメインディスプレイは8.0インチ。画面比率はより正方形に近づき、表示効率が向上。タブレットのようなUIのおかげで複数のアプリを同時に表示して作業でき、大きな画面ならではの効率で作業ができる。ピーク輝度は最大2,600ニトと明るく、120Hzのリフレッシュレートも健在で、視認性と滑らかさは文句なし。
折りたたみ箇所の凹み具合については、ヒンジ構造の変更によってかなり目立ちにくくなった。以前までは大画面でコンテンツを見たときに、中央部分のわずかな歪みが気になるという声もあったが、Z Fold7はほぼ歪みは感じないくらいまでに改善されている。
唯一残念だったのはSペン非対応となったこと。これは薄型・軽量化を優先した結果であり、ユーザー調査からもSペンのニーズが少ないと判断したからだとサムスン電子は述べている。
薄型・軽量化はユーザーにとって嬉しい要素であるのは間違いないが、それでもZ FoldシリーズにSペン対応を求める声があるのは事実。今後のモデルでまた使えるようになるのを願うばかりだ。
ちなみに、本体が薄くなったことで画面の耐久性について心配する声もあるが、メインディスプレイにはチタンプレートの層が追加されたほか、カバーディスプレイはGorilla Glass Ceramic 2を採用するなど、耐久性にはしっかりとこだわっていることから、相当手荒に扱わない限り、画面が簡単に割れてしまうということはないと思われる。
最新SoCで快適動作、ゲーム性能も◎。気になる発熱は?
SoCは最新の「Snapdragon 8 Elite for Galaxy」を搭載。サムスン電子によると、前モデルに比べてNPUは約41%、CPUは約38%、GPUは約26%向上しているとのこと。
性能チェックのため、AnTuTuベンチマークでスコアを計測してみたところ、総合スコアは2069076、CPUスコアは534487、GPUスコアは754773だった。
一般的なアプリの動作は言わずもがなといったところで、3Dゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』をプレイしてみたところ、最高画質でも快適に動作していた。特に『ゼンレスゾーンゼロ』のようなグラフィック重視のゲームであれば、Z Fold7の大画面かつ綺麗な映像でプレイを楽しめるはずだ。
発熱については、1時間ほど動画撮影をしたところ、やはり本体はかなり熱くなってしまっていた。しかし、動画撮影を終えてSNSなどをチェックしても動作に影響が出ることはなく、エアコンの効いた涼しい室内で数分休ませるとすぐに通常温度に戻ったことから、発熱について過度に心配する必要はなさそうだ。
ストレージ容量は256GB・512GB・1TBの3種類から選択可能で、メモリ容量は256GB・512GBモデルが12GB、1TBモデルのみ16GBだ。
メインカメラは2億画素に進化、もはや「妥協なし」
Z Fold7の進化の中で、本体の薄型・軽量化やディスプレイの大型化に加えて注目してもらいたいのがカメラ性能だ。
アウトカメラは、先代モデルと同じくメイン・超広角・望遠のトリプルカメラ構成ではあるのだが、メインカメラにZ Foldシリーズとしては初となる2億画素センサーを搭載し、従来比で約4倍のディテール向上と44%明るい撮影を実現。これはGalaxy S25 Ultraと同等レベルの性能だ。
超広角カメラと望遠カメラは、1,200万画素と1,000万画素と画素数は先代モデルから変わらなかったものの、超広角カメラはオートフォーカス対応でマクロ撮影も可能になった。
では、その進化したアウトカメラでどのような写真が撮影できるのか。筆者が撮影した写真をいくつか紹介したい。
筆者はGalaxy S25 Ultraのレビューも今年2月に実施していて、その際に「やはり写真撮影はUltraモデルに限る」と思っていたのだが、Z Fold7のメインカメラでも同じような写真が撮影できたことで、「ついに折りたたみスマホでもこんな写真が撮れるようになったのか!」と素直に感動。これまで折りたたみスマホに感じていた「カメラ性能の妥協」という最大の懸念が払拭された瞬間だった。
折りたたみスマホの特徴として、カバーディスプレイにプレビュー画面を表示して高品質なアウトカメラでの自撮りができるのも忘れてはいけないポイントだ。2億画素に進化したメインカメラで撮影すれば、驚くほど綺麗な自撮り写真が撮影できるはず。
ただし、カメラ性能が向上したことにあわせてカメラの出っ張りが以前よりも大きくなっており、カメラ側を下にして机などに置くと、ガタつきが気になる。筆者の場合はノートPCのスリーブなど厚みのあるものの上に置くなどして対策したが、本体がガタガタしないように置ける良い方法を探す必要がありそうだ。
ちなみに、インカメラは従来のアンダーディスプレイ型からパンチホール型に変更されており、画質は400万画素→1,000万画素へと強化され、視野角も広がった。ビデオ通話を多用する人にとっては綺麗な画質で通話できるようになったことで、嬉しいアップデートになったのではないだろうか。
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Galaxy AIが日常を変える体験に
NPU性能の向上により、Galaxy AIの実用性も向上している。たとえば写真に写り込んでしまった不要な人物や物を消したいときには、生成AI編集の「消しゴムサジェスト」ボタンをタップするだけで瞬時に範囲を選択して消去できるようになった。
CMなどで話題の「オーディオ消しゴム」も、従来はAIアイコンをタップした後に手動での編集が必要だったが、今回からワンタップで除去できるように。ちなみに、オーディオ消しゴムは従来までのギャラリーアプリ内にある動画に加えて、ボイスレコーダーやSamsung Notes、通話録音の音声などにも利用できるようになった。
また、従来からも使えた音声の文字起こしなどのAI機能の精度も向上しており、日本語でもかなり正確な内容に聞き取れているようだった。ここまで精度が上がってきているなら、会議の議事録作りなども以前よりも便利になりそうだ。
バッテリーとその他の仕様
バッテリー容量は、前モデル同様の4,400mAhながら、Snapdragon 8 Eliteの省電力化により実使用時間は延びており、朝8時から夜20時頃まで1日中使っても1回も充電することなく帰宅まで使い続けることができた。
ちなみに、充電は有線充電のほか、15WのQi2対応ワイヤレス充電とリバース充電にも対応する。
OSはAndroid 16ベースのOne UI 8。7世代のOSアップデートと7年間のセキュリティサポートが保証される点は、長期使用を視野に入れるユーザーにとって大きな魅力だ。
防水・防塵はIP48に準拠。最新のWi-Fi 7やeSIMにも対応し、顔・指紋の両方の生体認証や本体を折りたたんで使用するフレックスモードなど、Z Foldシリーズならではの強みも健在だ。
総評:迷う理由が価格だけになった折りたたみスマホ
Galaxy Z Fold7は、折りたたみスマホが「奇抜なもの」から「洗練されたもの」へと進化したことを象徴するモデルだ。
折りたたみスマホと聞くと、厚くて重いという印象を持っている人もいまだに多いかもしれない。しかし、Z Fold7は閉じた状態でバータイプスマホとほぼ変わらない厚さと重量になっており、画面の比率も一般的な21:9に近づいたことで、「普通のスマホ」としてそのまま使える感覚が強くなった。
特にカバーディスプレイの縦横比が見直されたことで、SNSやメール、地図アプリなどを違和感なく操作できるようになり、結果的に開かずに使う機会が自然と増えた。これまでは「開いてこそ本領発揮」という印象が強かったが、Z Fold7は「必要なときに開く」という使い方がしっくりくるように感じている。
もちろん、本体を開くとタブレットを彷彿とさせる大画面で電子書籍や動画視聴を楽しめるほか、複数のアプリを並べて操作することもできる。これは一般的なバータイプスマホでは実現できない体験だ。
加えて、アウトカメラのメインカメラが2億画素になったことで、カメラ性能に妥協することなく折りたたみスマホの便利さを享受できるように。この点はZ Fold7をメインスマホとして使いたい人には大きなアップデートになったはずだ。
筆者も実際に10日間ほどZ Fold7を使用してみたが、「このままメインスマホにしたい!」と思えるほど快適に使えた。現時点で市場に出ている横折りタイプの折りたたみスマホの中でも、間違いなくトップクラスの完成度を誇っていると感じた。
これほどの性能を見せつけられてしまい、現在Z Flip5ユーザーである筆者は買い替え先をZ Fold7にするか、Z Flip7にするか迷う事態に。最終的には、日頃の使い勝手など筆者のライフサイクルを考慮した結果、やはりZ Flip7という考えには落ち着いたのだが、筆者がそれほど真剣に悩むほどの良い仕上がりだったということはぜひ皆さんにもわかっていただきたい。
もちろん、Sペン非対応やカメラユニットの出っ張りなど、気になる点がないわけではない。ただ、それらの課題も、この製品が持つ圧倒的な完成度の前では些細な問題にすら思えてしまう。性能・完成度については、多くの人が満足できるレベルに仕上がっている。
唯一のネックは、やはり約27万円からという価格だろう。価格を見てためらう人もいるとは思うが、ハイエンドスマホとタブレットを一度に手に入れる感覚に近く、個人的には両方のデバイスを求めるユーザーこそ、この製品の本命ターゲットになると感じている。
Z Fold7は、7世代分のOSアップデートと7年間のセキュリティサポートが保証されている。そのため、今回思い切って購入し、数年間じっくり使うという前提があるなら、今このタイミングでの購入は決して悪くない選択肢だろう。
性能・完成度ともに満足度はとても高いため、既存のバータイプスマホにマンネリを感じている人や、新しい体験を求めている人は、ぜひ一度店頭で手に取ってみてほしい。
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